尾野真千子 & 結城貴史監督 インタビュー 長年の友人関係から紡ぎ出された、家族との再構築を描く『DitO』
監督としての結城貴史はどうだったのか
――尾野真千子さんは沢山の監督とお仕事を一緒にされていますが、長い付き合いの結城さんと監督としてお仕事を一緒にされていかがでしたか。 尾野:だいたい何も思わないのですが、撮影が終わって繋がった作品を観て「あ!かっこいいんだね」と思いました。今まで生で牛乳をかけられたり、いつもふざけていたりするしかなかった関係なんです。そんな二人が真面目に芝居をしていて、それが繋がった時に「この人、かっこいいんだ」と思ったんですよね。 結城:その言葉、舞台挨拶でも言って。 尾野:言わないよ(笑)。褒めることが一番恥ずかしい。 結城:確かに。俺も「真千子、良いよね」という言葉を言われるとムカつくもん(笑)。 尾野:何で。 結城:俺が褒めたいのに先に言われると褒められないじゃん。誰よりも好きな女優さんなのに「そうかな?」って言っちゃうんだよね(笑)。 尾野:友達、兄弟感覚だよね。褒められたら褒められたでこそばゆいし、貶されたら貶されたで腹が立つ感じ(笑)。 結城:そうだね、身内感覚だよね。 ――ちゃんとした絆がお互いにあるからこその映画だったんですね。 結城&尾野:そうですね。 ――映画には日本人の不動産屋さんが出てきますが、あのエピソードは本当にあった話なんですよね。 結城:本当にあったことです。実際は不動産屋さんではありませんが、本当に騙されて結構な金額を持っていかれました。しかも半年もかけて僕らは信用させられていたんです。空港まで迎えに来てくれて、いつもご飯を御馳走してくれて、そして送ってもくれる。最後に、こちらがずっと熱望していた人物と会う機会を設けるからと金額を提示され、その言葉を信用してお金を振り込んだら次の日からその人は居なくなったんです。本当に“映画って作るの大変!”って思いましたね。 尾野:本当の話だったんだ(驚)。 ――ということは、その出来事があって、脚本を書き直されたのですか。 結城:全部書き直しました。この出来事を全部昇華させましょうよ、と。その時、フィリピンのエロルデボクシングジムの人に「一番信用が出来ないのは日本人なんだから、何で俺に相談しなかったんだ」と言われたんです。日本人である僕に言うということは、“この人は僕のことを家族だと思ってくれている”と思ったんです。ここは描かないといけない、損失した金額分の価値を見出さないといけないと強く思いました。 尾野:本当の話を映画にしたんだね。 結城:でも俺はずっと楽しかった。 尾野:その酷い出来事をちゃんと活かせて良かったと思う。 結城:そうだね、本当に良かった。そこで心が潰れてしまう人も居るわけだから‥‥。 尾野:それで終わりではなく、ちゃんと形にしたわけだから偉い! ――打たれ強いですね。 結城:そうですね。そもそもどこかで鈍感力が働くというか。 尾野:貧乏時代が長いからかもしれないね。 結城:それ、俺自身が言うならわかるけど真千子が言っちゃ駄目でしょ(笑)。 ――(笑)たしかに役者を続けるのは大変ですよね。 尾野:役者を続けるにはあの手この手だよね。 結城:本当にそう。知恵絞って。