尾野真千子 & 結城貴史監督 インタビュー 長年の友人関係から紡ぎ出された、家族との再構築を描く『DitO』
昔から監督を目指していたのか
―ー昔から監督をしたいと思っていたのですか。 結城:それはないですね。「自分でもの(映画)を作りたい」という思いはありましたが、監督って崇高過ぎるものだったんです。だから自分は、“役者とプロデュースをやろう”と思っていて、“監督は誰にお願いをしよう”といつも考えていました。だから自分で監督をするという発想はありませんでした。でもある時から“この監督はこういう演出をするんだ。でも俺だったらこういうふうに演出したい”という思いがだんだんと芽生えて来て、いつの日か“監督をやろう”と思うようになりました。そして会社を立ち上げて10年目、役者を始めて30年経ったので、いい節目だと思って撮ったのが今作『DitO』です。 ――私はもっと役者さん達に作品を撮って欲しいと思っています。日本では何だか役者さんが監督することをおこがましいと思う風潮があるような気がしています。 結城:そうですね。プロデュースすることさえ「役者諦めたのね」と散々言われてきました。 尾野:実は私も「結城、役者諦めたんだ」と思いました。でも「監督をやる。そこに命をかけたい。俺、これにかけてるんだ」と言うので、かけているなら私は“手伝いたい。出演したい”と思ったんです。 結城:生半可な気持ちで言ってはいけないということは、理解していました。そこは大事だと。 尾野:最初で最後だよ(笑)。 結城:大丈夫、僕には鈍感力があるから(笑)。次回も初めてかのようにお願いするよ。 ――お二人は25年ぐらいの付き合いで、役者という仕事を一緒にやって来られていますが、お互いに役者を続けられている秘訣を教えて下さい。 結城:真千子はあんまり迎合をしない(周りに影響されない。芯がブレない)から。例えば一緒にインタビューを受けていても、媚びない、リップサービスもしない、言いたいことを言っている。 尾野:そんなことない、してるよ? 結城:全然足りない。丁度、最近のインタビューを観たけど「SNSをやらない」もそうだし、「別にやりたくないものはありません」など、そこに理由はなくって、ただそれだけのこと。「日焼けをするな」と言っても釣りに行っちゃったりもする、好きな事をする人。 尾野:プロとして全然ダメじゃん(笑)。SNSをやらないのは、ただめんどくさいだけです。芝居は続けられたけど、SNSなどそういうことは続けられないんです。自分が“やりたい!”と思っていないので続けられないんです。媚びないというのも、自分の中で“かっこ悪い”と思ってしまうからしない。本当に好きな人:福山雅治さんにだったら私は媚びる。大好きだから。だから『そして父になる』(2013)で共演した時、媚びましたよ(笑)。あの時は、私にとって人生で一番優しい顔をしていたと思う。私は素直なんです。 一同:爆笑。