結局、ステーブルコイン・暗号資産はどう変わった? 金融庁と日本銀行が語る胸のうち
2023年に金融庁は、ステーブルコインと暗号資産に関する法改正により、金融イノベーションの促進を図った。新制度により、銀行や資金移動業者、信託会社などがステーブルコインの発行を可能とし、利用者保護やマネーローンダリング防止対策を強化したのだ。この法制が決まった背景やその際の考えなどについて前金融庁総合政策局参事官(信用制度担当)大来 志郎氏と日本銀行 決済機構局FinTech副センター長でデジタル通貨検証グループ長の鳩貝 淳一郎氏が対談した。 【詳細な図や写真】法定通貨建てステーブルコインの分類(出典:出典:金融庁「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案 説明資料」より)
金融庁の取組み「ステーブルコイン法制」
鳩貝氏:いわゆるWeb3.0の関係では、政府において推進に向けた施策が講じられています。なかでも、ステーブルコイン・暗号資産関係では、2023年に金融庁による大きな制度改正がありました。今回のインタビューは、こうした動きの中心で指揮を執られてきた大来信用制度参事官に、「Web3.0の推進に向けた金融庁の取組み」というテーマでお話を伺うものです。 今回は、金融庁のWeb3.0推進に関するさまざまな取り組みのうち、特に関心が高い、ステーブルコイン法制や暗号資産税制に関する取組みを中心にお聞きします。 まず、あらためて、ステーブルコインの法制に関して、簡単にご説明いただけますでしょうか。2023年の資金決済法の改正で、発行・流通スキームが新たに実現しました。 大来氏:2023年の制度改正によって、広く送金・決済の手段として利用されるステーブルコインに関して、電子決済手段等として資金決済法・銀行法に位置付け、取引の仲介者への登録制等を導入しました。 2023年の6月1日に施行された本制度では、ステーブルコイン(電子決済手段等)の発行体として、銀行、資金移動業者の他に信託会社も認められるようになりました。銀行発行スキーム、資金移動業者発行スキーム、信託会社・信託銀行発行スキームと、ビジネスモデルに応じた柔軟な展開が可能になっています。 なお、ステーブルコインといっても、現時点で銀行が発行する場合には資金決済法上の「電子決済手段」ではなく、トークン化預金の形式を取っていただく必要があるなど、その法律上の位置付けは発行体によって異なることにはご留意いただく必要があります。 また、ステーブルコインの特徴でもある発行者と仲介者の分離にも対応して、仲介業に関してはそれぞれのスキームに応じた登録(電子決済手段等取引業、電子決済等取扱業)を取得いただくことで、国内でビジネスが可能となっています。 これらの結果、利用者保護とマネーローンダリング防止を図りつつ、ブロックチェーン技術を活用した金融イノベーションの社会実装が可能になると考えています。