結局、ステーブルコイン・暗号資産はどう変わった? 金融庁と日本銀行が語る胸のうち
ステーブルコインとマネーローンダリング対策
鳩貝氏:さまざまなビジネスモデルへの柔軟な展開が可能となり、また、発行者と仲介者のアンバンドリングにも対応しているということですね。 最後におっしゃったマネロン防止は、ステーブルコインが社会に受け入れられ活用されるには大変重要な観点かと思うのですが、この点をもう少し深くお聞きしたいと思います。 大来氏:マネーローンダリング対策・テロ資金供与対策の観点から課される諸規制は、資金面から犯罪組織や犯罪行為を撲滅することを狙いとするものであり、金融行政という枠にとどまらず、警察庁や国際的にはFATF(金融活動作業部会)なども関連してくる分野です。 したがって、国内における関係省庁との連携や、国際的な議論・取組みとの整合性なども重要になってきます。 ただ、やはり経済的取引の利便性・迅速性が向上すると、その向上のために用いられた技術等の隙間をぬって、マネーローンダリング・テロ資金供与は潜在的にはやりやすくなることから、そうした技術の最先端としての金融分野に関してはしっかりと対策を講じないと温床になりやすい性質があると思います。 ブロックチェーン技術を使う金融取引は、伝統的金融に比べると多かれ少なかれ分散化の利点を活用しようとするものですので、なおさらです。 最終的には、ステーブルコインが国内外で広く送金・決済手段に利用される可能性に鑑みて、ステーブルコインを取り扱う事業者に対して、銀行や資金移動業者とパラレルな形でマネーローンダリング対策・テロ資金供与対策を求めることとしました。 ステーブルコイン法制の施行に至る検討過程では、規制の各分野について事業者の声に耳を傾け、イノベーションを阻害しないという観点にも意を用いました。特にマネーローンダリング対策・テロ資金供与対策については、先ほど示したように金融行政のみの要請を超えた広い保護法益が存在することから、規制の趣旨を各方面に理解いただくために特に細心の注意を払いました。 ご指摘のとおり、こうした対策を過不足なく講じることが、ひいては国民の間で広い意味での安心感につながり、経済取引のツールとして受容されていくことにつながるのだろうと思います。 ただ、たとえば、説明義務や資産保全義務のように、その遵守が直接的・個別的に1人ひとりの利用者保護に目に見える形でつながっていない規制です。 マネーローンダリング・テロ資金供与対策全般にいえることですが、その必要性をしっかりと説明する行政サイドの努力、しっかりと理解しようとする関係者サイドの努力、双方が重要になってくる分野です。