追加調査で宍道断層の長さ1・8倍に…島根2号機再稼働が長期化、福島第一と同じ沸騰水型も理由
中国電力島根原子力発電所2号機の再稼働まで約13年かかったのは、中国電力が原子力規制委員会の安全審査への対応に時間を要したためだ。東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえて2013年にできた「新規制基準」によって自然災害への対策が大幅に強化された。地震の揺れや津波の高さなどの想定を厳しくするよう電力会社側に求めている。
中国電が規制委に審査を申請したのは13年12月。審査では原発の約2キロ・メートル南の活断層「宍道(しんじ)断層」が焦点となった。中国電は宍道断層の長さを約22キロ・メートルと評価したが、審査中の16年7月、政府の地震調査研究推進本部が新知見を発表し、より長い可能性が出てきた。これを受けて追加調査が必要になり、当初の1・8倍となる約39キロ・メートルに見直した。
島根2号機は爆発事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型(BWR)で、加圧水型(PWR)に比べて、原子炉を覆う格納容器の容積が小さい。事故時の圧力上昇に弱いことから、圧力を逃がす排気設備「フィルター付きベント」の即時導入が義務付けられた。こうした新規制基準に基づく要求事項が多いため、審査の長期化につながった。
これまで27基の原発が審査に臨んだが、合格したのは17基にとどまる。北陸電力志賀2号機(石川県)や北海道電力泊1~3号機(北海道)は、敷地内の断層が活断層か否かを巡る議論が長引き、申請から10年以上が経過した。
一方、AI(人工知能)の普及やデータセンターの増加に伴い、電力需要は大幅に増える見通しだ。政府は化石燃料を使わない安定的な電源として原発の積極活用を掲げる。常葉大の山本隆三名誉教授(エネルギー環境政策)は「現状の審査は時間をかけすぎている。規制委が電力会社に論点を事前に提示するなど、双方が協力して効率性を高める努力をすべきだ」と話す。