賜杯争いに気負いなく 琴桜、祖父に続くか―大相撲九州場所
冷静だった。 「慌てないように集中した」と琴桜。隆の勝との結びは、狙ったもろ差しを果たせず。右を差し、すくって相手を呼び込んだものの逆転し、土俵際でつかんだ左上手で流れるように投げ捨てた。 大関昇進後は終盤での失速が多く、7月の名古屋、9月の秋場所は11日目から3連敗。勝負どころで崩れてきたが、今場所は「集中している」。3日目に土がついた後は10連勝。「勝負するのは自分」と己に言い聞かせ、雑音を封じる。 照ノ富士との決定戦に進みながら、優勝を逃した1月の初場所後に大関昇進。しこ名の継承を生前に認めてくれた祖父は大関5場所目の1968年名古屋場所で初優勝を遂げており、歩みを重ねることができるか。「猛牛」と呼ばれた元横綱は「本当に偉大な存在」と琴桜。その足跡をたどろうとする決意がにじむ。 優勝争いは、千秋楽の結びで直接対決が予想される豊昇龍との一騎打ちとなった。支度部屋では厳しい表情を交えつつ、「変わらず集中してやっていくだけ」と気負いはない。狙うのは「常に目指しているもの」と表現する悲願の初賜杯。今場所こそは、という思いは誰よりも強いはずだ。