ウクライナ、155mm砲弾と榴弾砲を国産化 支援依存の軽減急ぐ
大砲や砲弾の不足は戦争の敗北を決定づける可能性がある
ウクライナが進める大砲や砲弾の国産化はNATO規格への適合を図る動きであると同時に、西側の軍事援助への依存を軽減しようとする取り組みでもある。 NATO諸国は2014年以降、ウクライナにさまざまな大砲や155mm砲弾を供与してきた。そして砲兵は、ウクライナの戦術や防衛戦略にとって不可欠な存在である。そのため今年、米国の軍事援助が停滞してウクライナ軍で155mm砲弾が不足すると、東部の都市アウジーウカの占領をはじめ、ロシア軍に大きな戦果を許すことになった。戦争が長引くにつれて、ウクライナは砲弾などの兵器面で西側への依存度を減らし、自給率を高めていくほうが望ましくなってくる。 全面戦争の開始から2年以上もたってようやく、ウクライナで155mm砲弾の生産が立ち上がったり、榴弾砲の生産が本格化してきたりしたというのは遅いように思えるかもしれないが、榴弾砲や砲弾の製造に絡む複雑な問題を理解しておく必要がある。ウクライナが155mm砲弾の生産のために活用できる商業部門はなかったし、152mm砲弾の生産インフラはあっても時代遅れになっている。 また、砲身の製造は高度に専門化された工程であり、きわめて高い圧力や熱に耐えられる先端素材や、過酷な使用条件下での耐久性や精度、寿命を確保するための精密な工作技術を要する。こうした課題を踏まえると、ウクライナが榴弾砲や砲弾の生産設備をこれほど急ピッチで開発したのは、ほかの防衛技術分野で収めてきた成果と同様に、むしろ驚異的なことだと言うべきだろう。 大砲や砲弾の国内生産能力はウクライナの勝利を保証しないかもしれないが、大砲や砲弾の不足はこの戦争での敗北を決定づけるものになる可能性がある。その意味で、ウクライナによる155mmの榴弾砲や砲弾の国内生産を拡大する努力は、ウクライナの戦争戦略において不可欠な要素である。
Vikram Mittal