「うつ」だけじゃない…厳しいストレスにさらされた「日本の中高年」を待ち受ける「恐ろしい現実」
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】じつはこんなに高い…「うつ」になる「65歳以上の高齢者」の「衝撃の割合」 長生きとはすなわち老いることで、老いれば身体は弱り、能力は低下し、外見も衰えます。社会的にも経済的にも不遇になりがちで、病気の心配、介護の心配、さらには死の恐怖も迫ってきます。 そのため、最近ではうつ状態に陥る高齢者が増えており、せっかく長生きをしているのに、鬱々とした余生を送っている人が少なくありません。 実にもったいないことだと思います。 では、その状態を改善するには、どうすればいいのでしょうか。 医師・作家の久坂部羊さんが人生における「悩み」について解説します。 *本記事は、久坂部羊『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。
アルコール依存・買い物依存・ギャンブル依存
仮にうつを免れたとしても、中高年にはさまざまな危険が潜んでいます。 よくあるのがアルコール依存。これまでの人生に対する悔いや嘆き、理解者のいない孤独、これから老いていく不安や悲しみなどをまぎらせるため、ついついアルコールに頼る人が多いことは、想像にかたくないでしょう。 アルコールは肝臓に負担をかけるだけでなく、すい炎や糖尿病、高脂血症、動脈硬化から心筋梗塞や脳卒中を引き起こし、またコルサコフ症候群というアルコールによる認知症もあります。 アルコール依存になると、二日酔いによる遅刻や欠勤、集中力の低下によるミスや能率の低下が起こり、人間関係が悪化して、信用を失い、解雇、失職の憂き目に遭うこともあります。 家庭でも、飲酒運転や喧嘩、貴重品の紛失などのトラブルで、家族関係が悪化し、収入減、浪費、家事放棄などが問題になります。暴力や暴言、錯乱などで夫婦不和となり、子どもにも悪影響を与えて、家庭崩壊に至ることも少なくありません。 アルコール依存になると、多くは連続飲酒となって、日中から飲みはじめます。飲酒量が少なくても、アルコール依存にはなります。自分では依存に気づかない(あるいは気づいていても否認する)人も多いのですが、見分け方は簡単です。四十八時間、一滴も飲まずにいられるかどうか試せばいいのです。二十四時間だと前日の午後八時に飲み終えて、翌日の午後八時すぎから飲めるので、四十八時間我慢できるかどうかがポイントです。 買い物依存は女性に多いように思われていますが、男性にもあります。買い物をすると気分が高揚するため、必要のないものや同じものを次々と買ってしまいます。買うこと自体が目的なので、手に入れたものは放置されます。当然、経済的に苦しくなり、知人や友人から借金をしたり、街金に手を出して自己破産に至るケースもあります。 ギャンブル依存と薬物依存は、アルコール依存より患者数は少ないですが、これも原因はつらい現実から逃避したいという気持ちが根底にあります。いずれも経済的に破綻したり、違法行為であったりして、せっかくの人生を破綻させてしまう危険性を伴います。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)