【実践】生成AIリテラシーを爆増させる「大学の宿題」が面白い、社員教育にも絶大効果
課題の設問は4つ
このような経緯から伊藤氏は、生成AIツールを用いた課題提出に伴うリスクについて、体験的に学ぶ機会を用意。2023年12月に「生成AIが作成した不完全な回答を自ら修正し、適切な内容にする」という課題を、情報科学科2年生の必修科目「マルチメディア」において課した。 「生成AIに頼って課題を仕上げるのではなく、生成AIが出力する内容の妥当性を自ら検証して修正するプロセスを、学生たちに体験してもらうことが最大の目的です」(伊藤氏) 具体的には、以下の図にある4つの設問を設定した。 なお選択する単語は、「マルチメディア」で習う、情報伝達・情報発信に関する技術の単語から選択してもらった。 この結果、生成AIの利用方法は学生によって多様であったが、生成AIの出力をどう書き換えるかについては大きく2つのタイプに分かれたという。
2つのタイプに分かれた「書き換え方法」
生成AIの回答の書き換え方法について分かれた大きく2つのタイプは以下の通りだ。 1つ目のタイプは、生成AIが出力する「箇条書き形式」をそのまま維持しながら、内容の不足を補足したり、不正確な部分を修正していくスタイルである。 2つ目のタイプは、生成AIが出力した箇条書きの文章を一度完全に崩して、自分自身の言葉でまったく新しい文章に書き直すアプローチである。 このような文章のつくり方の違いとともに、もう1つ伊藤氏が指摘するのが、学生が生成AIを利用することで学力を高める可能性を有する点だ。
「疑問を持つ力」「判断力」が身に付く
「生成AIの出力に対して、何が不十分であるか、どの情報が古いかなどを見極めるのに加え、必要な情報を補完するといった判断も求められます。課題の結果からはそうした力について、学生間の差が大きいことがわかりました。それは逆に言えば、生成AIの利用を通じて、学生自身が積極的に情報の妥当性や正確さに関心を持つようになるということを意味するのではないでしょうか」(伊藤氏) つまり、生成AIには学生が「疑問を持つ力」や「判断力」といった情報収集力を養うための補助ツールになり得ると言える。 「生成AIに限らず、検索エンジンの出力結果やSNSでの情報発信等も含めて、合理的な情報収集手段として活用しながらも、その知見を自分で再編集していくことが重要です。生成AIを使えば効率的に情報を得られる一方で、その内容を検証することも求められるので、自分の視点を加えた上で利用することはとても大切なスキルです」(伊藤氏) 実際、課題を受けた学生の一部からは、「知らないことを知る手がかりになった」「検索エンジンよりも手軽に使える」など、生成AIの価値を実感している声も寄せられているという。