気が重い「督促業務」をデジタル化、未回収率50%→1%に 「血を流しながらやってきた」スタートアップの挑戦
SMBCコンシューマファイナンスとも提携、さまざまな業界に広がる
こうした中、Lectoは2024年、プロミスブランドで知られるSMBCコンシューマファイナンスと提携した。提携は2つの側面を持つ。一つはSMBCコンシューマファイナンス自身の督促業務の効率化の実証実験だ。もう一つは、同社の取引先である地方銀行へのシステム導入支援である。既に約30の地銀への導入を予定しているという。 地方銀行の督促業務は、自前で行うケースと外部委託するケースが混在する。「基本的に銀行も内製でやれるなら、やった方がコスト的に安い」と小山氏は説明する。たとえ外部への回収委託では、単純な督促でも手数料として30%程度を支払う必要があるためだ。 「本来は内製すべきと考えているが、人がいなかったり回収のノウハウがなかったり、仕方なく外注しているというのが実態」(小山氏)という。ここにSaaSを導入して督促業務を効率化できれば、内製化への移行が進む可能性がある。 SMBCコンシューマファイナンスは、地銀向けなどに保証事業も展開している。延滞が一定期間を超えた債権を買い取る事業だ。保証業務提携先は現在188に上り、全国各地の金融機関などとの幅広いネットワークを持つ。地銀にLectoのソリューションを導入してもらうことで「地銀のROI(投資収益率)を上げられる。自分たちで回収ができ、かつ人手をかけずに回収ができ、きちんと回収率も担保される」(小山氏)ことで、地銀にとってはコスト削減になる。 今後は公共料金分野への展開にも力を入れる。電力やガス会社では、検針員が訪問時に督促を行うなど、本来業務に支障が出ている例もある。すでに三愛オブリガス九州が実証実験を開始しており、成果が出つつある。通信料金の督促でも、多くが人手による対応を続けている。大手キャリアは系列の金融会社に委託するケースが多いが、ここでも人海戦術が一般的だ。 「最大の本丸は、大量の債権を抱えていて人手が必要な企業。そういった企業のDXを通じて楽にしていくことが、われわれが一番やらなければいけないこと」だと小山氏は言う。 金利上昇を背景に延滞率の上昇が続く中、効率的な債権管理の重要性は増している。フラット35を提供する住宅金融支援機構によると、住宅ローンの4カ月以上延滞率は2024年3月時点で0.32%と、1年前の0.25%から上昇。返済優先順位の高い債権で延滞が増える異変が起きている。金融機関で培った督促のノウハウを、幅広い業界で活用する動きは今後も広がりそうだ。 筆者:斎藤健二
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