気が重い「督促業務」をデジタル化、未回収率50%→1%に 「血を流しながらやってきた」スタートアップの挑戦
人がやりにくい、やりたくないことを行う
Lectoは「督促回収テック」を掲げるフィンテック企業だ。金融サービスやサブスクリプションサービスの裏側にある面倒な実務や、複雑で属人化しやすい業務フローを改善。債権管理から回収、最終的な債権償却まで一気通貫での課題解決を目指す。 従来の督促業務は、コールセンターが一斉に電話をかけ、支払い期限を過ぎた人全員に同じように催促を行うのが一般的だった。しかし小山裕社長は「そこには無駄が多い」と指摘する。 同社のシステムの特徴は、延滞者の状況に応じて督促方法を変える点にある。 「20万円遅れている人もいれば1000円の人もいる。常習者なのか、うっかりなのか、高齢者か若年層か。債務者の個性や状況に応じて、督促のタイミング、内容、手段を全て出し分ける」(小山氏)という。 例えば若年層には電話を控え、SMSでリマインドを送信。支払い用のバーコードを添付し、その場でオンライン決済を促す。一方、高齢者には電話での連絡を優先するなど、きめ細かい対応が可能だ。自動音声による架電では、ボタン操作で支払い約束を取り付けることもできる。
「まさに血を流しながらやってきた」
小山氏は4社目の起業となる同社の設立前、個人向け信用リスクの保証事業を手掛けていた。「初月は50%未回収、翌月も45%くらい未回収。まさに血を流しながらやってきた」と振り返る。試行錯誤の末、未回収率を1%台まで改善した経験が、現在のサービス開発に生きている。 データ分析のスペシャリストを擁し、機械学習の活用も視野に入れている。過去の対応履歴から効果的な督促方法を導き出す。「延滞常習者なら、どこかで人手を介す必要がある。一方、うっかり忘れの場合は自動対応で十分」(小山氏)といった形で使い分けるという。 「実は延滞者の8~9割は単なるうっかり。悪意のある人は1割程度」と小山氏は分析する。SMSでスマートフォンに通知し、簡単に支払える仕組みを用意すれば、大半のケースは解決できるという。「現状の督促される側の体験は相当悪い。これを変えていく必要がある」(小山氏)との考えだ。 債権管理から督促、回収と消し込み、最終的な債権の譲渡や償却まで一気通貫で管理できる点も特徴だ。 特に金融機関にとって、この一気通貫の管理は重要性を増している。昨今の後払いサービスでは、住所情報を取得せずKYC(本人確認)なしで利用できるケースも増えており、従来の郵送による督促が通用しない場面も増えている。 効率的なデジタル督促の仕組みづくりは、金融機関共通の課題となっているのだ。