棚橋弘至は選手と社長の「二刀流」 また新日本プロレスを救えるのか?「V字回復させる自信がある」
【問われる自己プロデュースの力】 ――棚橋さんの場合、どんな経験が役立ちましたか? 「僕は、推理小説とか本を読むのが好きなので、物語がどう動いたら面白くなるかを試合のなかで考えています。単純に強くて勝つだけでは面白くない。ピンチがあって、チャンスがあって、ハラハラさせたうえで最後に勝つからこそ、お客さんも喜ぶんだろうなと。プロレスラーでありながら舞台監督でもある。俯瞰してリングを見ることも大切だと思いますね」 ――自己プロデュースの力が問われる、ということでしょうか。 「そうですね。プロレスファンの間では知られている選手でも、そこを離れたら知名度が低いと思うんです。だから、うちの選手たちもこれからなんです。プロレスというジャンルを越えて、世間に届く選手が生まれるといいなと思っています。たとえば、スイーツ好きな真壁(刀義)さんや、遡れば長州(力)さんや猪木さんといったような。あんな風に、日本中の誰もが知ってる選手が新たに生まれてほしいですね」 ――SNSを活用することで個人が発信できる時代ですが、その活用についてどうお考えですか? 「SNSは、選手が自分の魅力を発信できるツールですが、使い方を間違えると逆効果になるので注意が必要です。ツールによって発信する情報を使い分けることが大切で、たとえば、X(旧Twitter)では主に告知だけに留めて、感情的な投稿は避ける。インスタグラムは写真を中心に発信。よりマニアックな情報は、選手のブログや新日本プロレス公式サイトの日記で発信する、といった具合に、どの層に対して何を発するかが大事だと思いますね」 ――ファンの"濃さ"に合わせた情報発信ということですか? 「はい。公式サイトで有料会員だけが見られる情報や、アクセスした人だけが見られるブログは、熱心なファンに向けたもの。それに対してXやインスタグラムは、タイムラインに流れて多くの人の目に触れるので、より注意が必要だと思います。僕自身も、最初から使い分けができたわけではありません。新日本の公式サイトから始めて、その後にブログ、2012、13年頃からX、インスタグラムを使い始めました。徐々に学びながらやってきたので、この経験を今の選手に伝えていきたいですね」 (中編:1・4からの引退ロードも超ハード 「やめないで」と言われたら「来年もやりますと言ってしまうかも(笑)」>>) 【プロフィール】■棚橋 弘至(たなはし・ひろし) 1976年11月13日、岐阜県大垣市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1999年に新日本プロレスへ入門しデビュー。新日本プロレスのエースとして、IWGPヘビー級王座をはじめ数々のタイトルを獲得。積極的にリング外の活動にも取り組む、名実ともに新日本プロレスを代表する選手であり、2023年12月からは新日本プロレスリング株式会社の代表取締役社長に就任した。
篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro