一人暮らし87歳母の賃貸探し、内見しても高齢者を理由にすべて拒否。ようやく出会えた物件は不動産会社の入居支援がカギに 名古屋
これまでは、このような見守り機器を導入しようとすれば、オーナーが設置費用を負担するのが一般的でした。その費用負担がゼロになるので、多くのオーナーに受け入れられたのです。 「万が一、入居者が亡くなり未収賃料が発生しても、家賃保証会社が死亡した月の家賃をカバーする契約です。お身内や緊急連絡先の方がなく残置物がある場合は撤去・明け渡しまで家賃保証会社が行うため、オーナーさんの経済的・心理的・物理的な負担は少なくなります。そもそも、シニアライフサポートを導入しているので万一があった際にも早期発見が可能で、特殊清掃(遺体の発見が遅れ、遺体の腐敗などによりダメージを受けた室内を原状回復するための消臭、汚染除去など、特別な清掃)が必要になることは、まずありません」(ニッショー佐々木さん) 自分が貸す部屋が事故物件になることを望むオーナーなどいませんから、回避できる可能性が高いこのようなシステムは、オーナーにも好評です。多くの不動産会社で高齢者に紹介できる賃貸物件が少ないなか、ニッショーが管理する高齢者入居可の管理物件は、なんと3000棟近く(2024年6月時点)になりました。
シニアライフサポートは、賃貸物件の契約後に都度、見守り機器を設置するため、高齢者でも入居できる物件が限定されません。先に触れた家賃保証会社への加入も必須とすることでオーナーだけでなく入居を検討する人にとっても、多くの選択肢の中から自分の希望に合った部屋を選べるメリットがあるわけです。そして不動産会社にとっても、自治体の支援や補助金などをあてにせず、独自に継続していけるシステムと言えるでしょう。 Iさんにとっては、お守りのようなものだと話します。 「このサポートに加入しているおかげで、今のところ母の暮らしに心配はありません。毎日午後1時に自動音声の電話が母に入って、母はボタンを押して切るだけ。すると私のところに『お母さんは元気です』と連絡が来る仕組みです。お風呂のところにも人感センサーがついているので、母が通るたびに元気に動いていることがわかるので安心できます」(Iさん) また、Iさんのように家族が近所に住んでいなくても、安否確認が取れなかった際には、駆け付けの依頼ができるので遠くに住んでいても安心です。 さらに、このような取り組みを行うことは、ニッショーにも大きなメリットがあったといいます。 「管理する物件は空室が減り、多くのお客様に喜んでもらうことができ、このような取り組みをしている会社だという認知度が上がりました。社員の採用や自社の業績向上にもつながっています」(ニッショー佐々木さん) これからの日本では世帯数人口が減少していくことが確実な中で、いかに空室を減らし、賃料を得ていくかはオーナーにとっても切実な問題です。高齢者を積極的に受け入れていくことは、その一つの解決方法でもあるはず。オーナーに負担をかけず、孤独死などのリスクを減らせることは、高齢者が入居できる賃貸物件の増加に大きく役立つに違いありません。 このような、入居希望者やオーナーに喜んでもらいながら業績アップにつなげていく取り組みが、当然の企業活動として全国的に広まっていくと良いですね。 同時に、これからの課題だな、と思うのは、年金生活をしている高齢者の中には、見守りサポートの費用負担や緊急連絡先確保が難しい人もいるだろうということ。そして、入居者がさらに年齢を重ねたとき、どうなっていくのだろうということも気になりました。 行政と連携した助成金の利用や、単身高齢者が一人で暮らせなくなったときの次のステップについて話し合っておくことなども視野に入れて、社会全体の仕組みをさらに展開・進化させられるよう一人ひとりが考えていきたいものです。 ●取材協力 ・株式会社ニッショー ・ニッショーの高齢者見守りサービス「シニアライフサポート」
和田 文(りんかく)
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