「ロレックスぐらいは買える!!」精神科の訪問看護最大手が社内LINEでハッパをかけた「売り上げ最大化」
精神障害や知的障害がある人たちを対象に、「あやめ」という名称で精神科に特化した訪問看護ステーションを各地で運営する「ファーストナース」という会社がある。精神科の訪問看護事業者としては最大手とされ、ステーションは18都県で約240カ所。利用者は1万人前後いるとみられる。内部資料や現・元社員らの証言によると、この会社では収入を増やすため、患者の症状や必要度に関係なく、可能な限り訪問回数を制度上の上限である週3回にするよう、経営陣が全社的に看護師らに指示。社員らは「過剰な診療報酬の請求に当たる」「患者さんのことはお構いなしで、売り上げをいかに増やすかが最優先になっている」と話す。 「患者よりカネもうけ」ナースが見たあきれた実態 障害者を「食い物」に
取材を進めると、不思議なことに気付く。社員らがみな「社長」と呼ぶのは、実際の社長ではなく、創業者の男性のことだ。複数の社員らが「宗教みたい」と言うこの会社、一体どんな実態なのか。(共同通信=市川亨) ▽「社訓」を社員らが唱和 「ロレックスぐらいは買える!! キャンペーン実施中」 「さあ、あやめ上位陣 ロレックスまたはバーキン目指してこの二年頑張ってみて下さい」 今年3月下旬、ファーストナースの訪問看護ステーション責任者らが入るグループLINE(ライン)にこんなメッセージが送られた。 送り主は同社の創設者、松本智(さとし)氏。今後2年間、社内ベスト10の成績を続けた責任者には、高級腕時計やブランドバッグを贈るという内容だった。 同社の社長は橋本真奈歩(まなぶ)氏だが、社員らは「うちで『社長』と言ったら松本さんのこと。実権は松本さんが握っている」と明かす。橋本氏も松本氏のことを「社長」と呼ぶ。
松本氏が作った「社訓」や「理念」には次のような言葉が並ぶ。 「優しくあれ!優しくなければ働く価値がない」 「お客さまの喜びの数が我々の成功である」 「自殺者をゼロにする」 「仕事は自分を成長させてくれる最高の修行場である」 「ニコニコ、ワクワク、プラス思考」 毎月、東京都内の会議室に各ステーションの責任者らを集めて開く会議では、これらの言葉を参加者が唱和。ある元社員は「宗教や自己啓発セミナーみたいだった」と振り返る。 一方で、社訓には「5000円の売上の重要性、500円のロスの重要性を理解せよ」「結果を判断する際は、数字で判断せよ」といった言葉も見られる。 社員らによると、松本氏は会議で「訪問回数を週3回にする努力をしろ」「1日最低7件は訪問するように」などと指示。売り上げの上位、下位10カ所が発表され、下位の責任者は前列に並べられて「なぜ売り上げが少ないのか」と追及されるという。ある社員は「良いことを言う一方で、実際は売り上げが最優先。やっていることが全然違う」と話した。