世界の文化財が危ない!元「FBI美術捜査官」が語る、美術犯罪の最前線
美術品の高評価が、美術犯罪も増加させるジレンマ
「これらの組織が地域を侵略し、さらに神殿を破壊するとき、私たちにできることはほとんどありません。私たちは現場へ後から行って、いつか文化財を綺麗にしようとすることはできますが、残念ながら、破壊活動を止めさせることはほぼ不可能です」 最も悪名高いのは、シリア・パルミラ遺跡にある古代ローマ時代の凱旋門やその他の遺跡の破壊だが、略奪や売買、破壊の対象になっている文化遺産の多くはイスラム世界の作品だと、ウィットマン氏は指摘する。シリアの文化大臣・ Issam Khalil氏は、シリア軍が街を奪回したとき、古代ローマ遺跡の中で破壊されていたのは、政治的プロパガンダ目的でカメラに収められた一部分にすぎなかったと述べた。確かにそれら古代ローマ遺跡の被害は甚大ではあったが、シーア派のイスラムの遺跡や文化財、地元美術館での偶像などは、より一層破壊されているのだ。 古美術の最近のトレンドは、2つの相反する出来事について考えることだ。「美術品が高価格で評価されるという動きは、骨董品だけではなく、雑誌、新聞、古新聞、漫画本、野球カードなど、あるとあらゆる収集可能なものに広がりました。そのことによって、2つの結果が生じました。高価格で収集品が評価されることで、窃盗、偽造、詐欺をする者にとって魅力あるものとなったのです。つまり、美術犯罪は、高価格の取引によって増加した側面も少しはあります」 「でも良いこともあります。他方で、高価格取引によって、美術犯罪の取り締まりが『みなの目に止まる』ようになったのです。今やそれらの作品があまりに高価なので、美術品は『保護されるべきもの』となり、人々はこれらの美術品が保護対策に、知恵を絞るようになりました。美術品の価値とともに保護の度合いも上がりました。そういった点では良かったと言えますが、犯罪も生み出して、良い面と悪い面両方がありますね」 一つの挑戦は、人々が、文化財保護を、自分のお金を大切に考えるように、広く高めようとすることだ。