渋谷慶一郎「アンドロイド・オペラ」6年ぶり凱旋 協働の「ハトラ」長見佳祐とアーティスト岸裕真が語る魅力と背景
――長見さんはかねてから3DモデリングソフトウェアCLO(クロ)やAIを活用されていますが、今回も同様ですか?
長見:はい。ただCLOにせよAIにせよ、僕にとってはもはや「筆と紙」のように当たり前の存在なので、特段強調することでもありません。制作に自然と入り込んでくるものです。
――今回の制作でいつもと異なっていることはありますか?
長見:衣装の安全性には、いつも以上に配慮していますね。なかには視力が弱いお子さんもいますし、先述の通り、舞台では動きもあるので、衣装が危険を誘発しないよう意識しながら制作しています。
――映像演出を担当される岸さんは、どのように制作されていますか?
岸:渋谷さんからは、第1部と第2部のそれぞれに対するイメージを共有していただきました。演奏楽曲の歌詞を読み解き、方向性に沿いながら、来場される方たちに多くを感じてもらえるような空間を演出する映像を制作したいと考えています。
ネタバレはできませんが、中間的な存在としての「天使」が鍵になります。媒介者・メッセンジャーとして神と人間を行き来する天使は、作品を通して「始まり/終わり」や「生/死」「西洋/東洋」などの境界を問い続ける渋谷さんにとって大切なモチーフでしょうし、人工知能という非人間的存在と自己の交友関係から作品を作る僕にとっても、興味深い存在です。この時代に、人工知能とともにどんな天使を降臨させられるか、目下制作を進めています。
2人が考える「アンドロイド・オペラ」の見どころ
――最後に、今回の東京公演の見所について、それぞれのお考えをお聞かせください。 長見:アンドロイドの「オルタ」が、妹島和世さんがデザインされた台座とともに強い存在感を放っているので、まずそこに目が行くかもしれませんが、ぜひ舞台全体を観てほしいです。舞台上の多様なプレイヤーの連関や相互作用に目を向けると、すごいことが起こっていることに気が付くというか、「アンドロイド・オペラ」への印象が大きく変わるのではないでしょうか。