渋谷慶一郎「アンドロイド・オペラ」6年ぶり凱旋 協働の「ハトラ」長見佳祐とアーティスト岸裕真が語る魅力と背景
岸裕真(以下、岸):僕が渋谷さんとアンドロイド・オペラを初めて知ったのは、4、5年前、大学院の修士過程の頃です。当時「テクノロジーとアート」について話せる人が周りにおらず、たまたまツイッター(編注:現X)経由で長見さんと知り合い、やり取りが始まりました。そしてある時、長見さんが渋谷さんの「アンドロイド・オペラ」と「スケアリー・ビューティ」について教えてくれたんです。
――どのような流れで「スケアリー・ビューティ」の話題になったのでしょうか?
岸:AIとアートの関係性について話していた流れでした。その前にAI・機械学習分野の国際会議「ニュール・アイ・ピー・エス(NeurIPS)」に参加したんです。同会議は、その年にほぼ初めてAIアートに関するセッションが設けられ、AIを道具として使うべきだとする「AIは道具」派と、人格と見做すべきだと主張する「AIはコラボレーター」派の論争が起こるなど、小規模ながら盛り上がりを見せました。参加後に会議の話を長見さんに伝えた時に、長見さんは「スケアリー・ビューティ」について熱く語ってくれて、すぐにユーチューブで記録映像を見ました。
アンドロイド・オペラ 「スケアリー・ビューティ」 渋谷慶一郎 日本科学未来館公演
その後、初個展「ネイバーズ・ルーム(Neighbors' Room)」に向けて作品を制作していったのですが、振り返ると、AIとの向き合い方を考える上で1つのロールモデル、参照点になったのが渋谷さんと「スケアリー・ビューティ」だったと感じます。
――今回の公演に参加されることになったのはどんな経緯でしたか?
岸:昨年3月から6月に開催した僕の個展「フランケンシュタイン・ペーパーズ(The Frankenstein Papers)」を渋谷さんが観に来てくださり、僕は不在だったのですが、SNSでメンションをいただきました。その後雑誌「リアルサウンド」での対談で初めてお会いして意見交換をしたところ「何か一緒にやろう」と誘っていただき、10月に金沢21世紀美術館で上演された渋谷さんと池上高志さん共作のアンドロイド対話劇「イデア(IDEA)」への参加が決まりました。