【オニール八菜連載vol.2】ふたりのアルブレヒトと! 夢を叶えて初役で踊ったジゼル。
パリ・オペラ座バレエ団の最高位エトワールとして活躍するオニール八菜の"いま"をお届けする新連載がスタート。ダンサーとして、ひとりの女性としての彼女にインタビュー。(取材・文/大村真理子)
今年2月の来日ツアーで『白鳥の湖』を踊り、カンパニーの公演でエトワールとして日本での初舞台を成功させたオニール八菜。7月31日から始まる世界バレエフェスティバルでの再来日が待たれている。オペラ座のシーズン2023~24を『白鳥の湖』で終える前、彼女は初役で『ジゼル』を踊った。『ジゼル』では過去に何度もミルタ役を踊り、彼女はその高い技術とウィリスたちを率いる威厳が印象的で当たり役だと好評を得ていた。その主役のジゼルは彼女がいつか踊りたいと望んだ役のひとつである。2022年の6~7月に行われた前回の公演でミルタ役を踊った際に、次はジゼルを!と強く願い、その夢が今回叶えられたのだ。
ミルタからジゼルへ。
「もともとバレエとして踊りたい作品でしたけど、ミルタを踊ることによってジゼル役を踊りたいって心から思うようになっていました。ミルタ役は好きです。今回も実はゲストのマリアネラ・ニュネスがユーゴ・マルシャンと踊る2公演では私がミルタ役、とジョゼ(・マルティネス芸術監督)から言われてましたが、その前の『ドン・キホーテ』の公演数も結構あったので今回はジゼル役に集中して、ということになったんです。おかげでミルタのあのイメージはそのまま残し、新たにジゼルを作り上げるということができたので良かったと思っています。でもリハーサルが始まった時は、自分にできるのだろうか、どうやればいいのかなと少し不安になりました。というのも、どうしてもジゼルを踊りたい!という思う気持ちから、私には夢のような作品だったので。また、あまりにもミルタが私に似合ってると言われてたこともあって、観客は私のジゼルをどう見るだろうかとも思って......。役としてミルタはとても楽しかった。でも私のキャラクターや自分が持っているものを思うと、ジゼルのほうが私に近いのでやりやすかったですね。公演に向けてジゼル役に集中力120パーセント! 頭の中がおかしくなってしまうくらいでした(笑)。マリアネラとユーゴ・マルシャンの公演もあえて見ませんでした(リハーサルは、ちょっとだけ覗いたけれど!)。ほかのダンサーのジゼルを見ることで、自分が築くジゼル像を壊したくなかったんです」