「乳がんの経験も笑いに変えられたら自分は前を向ける」小川恵理子がユーモアを交えてつらい経験をつづる本当の理由
余談ですが、私たちは福井の出身なんです。姉が地元の方言で話すので自然と肩の力が抜けていって心がなごむんですよ。つらい状況のなかでもそうした時間は私にとってありがたいものでした。 ── お姉さまの存在は大きな支えになっていたんですね。 小川さん:ええ。実は乳がんの可能性が判明した時点から、ネットで情報を調べるのは控えようと決めたんです 。いろんな情報を拾っていくと、なかにはネガティブな情報も多くて、どんどん不安になっていき「このままでは沼にハマってしまいそうだ」と感じたからです。その代わりに、同じ経験をした姉や義理の妹など身近で経験した人たちから話を聞くようにしました。実際に経験した人の生の声を聞けるというのは本当に大きな支えになります。「note」などでメッセージを送ってくださった方も含め、前向きな気持ちでいられる話を聞けたのはよかったなと思っています。
■受け入れられない自分がいてもいい ── 闘病を経験されて、何か心境の変化などはありましたか。 小川さん:はい。最近、髪を短くしたり、身の回りの整理をしたりするなかで偶然にも気づいたことがあるんです。それは、何かを手放すときって最初はすごくつらいんですよね。一つひとつに思い出があるから。でも、実際に手放してみると、思っていたほどたいしたことなかったんだな、ということ。 これ、乳がんの手術を受ける前と同じだなと気づいたんです。最初は自分の乳房がなくなるなんて想像できなかったし、悪いことばかり考えていました。正直、イヤイヤながら、でも逃げられないからと、そう思って手術を受けたんです。そしていまになって思うことは、そんなにびっくりするほどたいそうなことでもなかったと。
それよりも、それを受け入れることが一番難しくて、頭ではわかっていても心が追いつくまでに時間がかかりました。 ── 受け入れることが大事だとわかっていても、いままでの自分を否定することになりかねませんから、そこで悩まれている方は多いかもしれません。 小川さん:そうですね。簡単なことではないですよね。だから、矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、もしいま、受け入れずに悩んでいる方は「受け入れられなくてもいい」と私は思うんです。そういう自分もあなた自身なのだから。「なんで私だけがこんなにつらいの」って思うこともあるでしょう。でも、そういう思いも大切にしていいのではないかなと。