「投資の力」でより豊かな将来を育む、アセットマネジメントOneが取り組む「資産運用立国」への貢献
もちろん、最終的な目的は魅力的なファンドを作ることですから、企業価値を選別する目利きの力、分析する力を向上することも重要です。エンゲージメントも株価の上昇につながるような継続的な価値向上を働きかける必要があります。新しい組織を作るだけではなく、その期待する機能が発揮されるよう、継続的に見直しを行っていくつもりです。
――投資先企業とのエンゲージメントについて、ここ数年、運用会社各社は取り組みを強化してきています。具体的には、どのようなことをやっているのでしょうか?
当社では年間2000件以上のエンゲージメントの機会を持っていますが、その中で、近年は資本効率の向上をテーマにしたミーティングが増えています。従来は、資本効率の向上というテーマは、地方銀行など金融機関が中心のテーマでしたが、近年は非金融にも広がっています。このテーマが企業価値の向上にダイレクトにつながるため、意識が高まっているのだと思います。
たとえば、ある製造業の社長、専務執行役員、経営企画部長と面談した際に、当社からその企業の先行きに対して抱いている懸念や株価が低迷している要因について、同業他社の事例なども交えて説明し、課題認識の共有化を図りました。また、情報開示の観点から、中長期のあるべき姿の提示や適切なKPI(重要業績評価指標)の設定により、投資家に成長ポテンシャルや資本効率の改善策をわかりやすく伝えることの重要性を強調しました。その会社からは「有益な示唆が得られた。対応を検討したい」との前向きな回答を得られ、その後、その会社は事業の選択と集中に着手し、一部不採算製品からの撤退を決定し、決算説明会において成熟事業の事業構造改革のロードマップが公表されるなど情報開示の姿勢も大きく変わりました。
また、ある不動産会社は政策保有株式を用いた事業戦略を行い、財務面では一定の結果を残し、同社自体、取引業者、株主にとって「三方良し」に見える経営をしていました。ただ、同社の政策保有株式は同社及び持ち合い先の資本効率向上の阻害要因になるだけでなく、議決権行使の空洞化を通じたガバナンスの機能不全を招く可能性が高いことから、政策保有株式を早期に削減する必要があると当社では考えていました。そこで、この不動産会社の社長と当社のESGアナリストを交えた継続的な対話を進め、政策保有株式の削減に方針を固めていただきました。さらに、エンゲージメントの結果として削減目標を設定することを実現しました。