高桑秀典が乗るちょっと古いクルマ、アルファ・ロメオGT1600ジュニア(1974) 24年落ちのイタ車に26年間乗っていたら、いつの間にかクラシック・カーになっていた(笑)
夏の暑さはクルマよりも先に人間がダメになる(笑)
なぜいま、ちょっと古いクルマがこれほどまでに盛り上がっているのか。モータージャーナリストの高桑秀典さんが所有するのは、1974年型のアルファ・ロメオGT1600ジュニアだ。26年前に18万キロで買ったアルファはいまや32万キロを超えた。高桑さんのちょっとどころかすごく古いクルマ生活の楽しみとは? 【写真9枚】高桑さんのアルファ・ロメオGT1600ジュニアは、決してピカピカではないけれどビシッとしていて素敵に見えます! ◆いいクルマ過ぎてこれ以外は考えられない その外装色から水色号と呼んでいる1974年型のアルファ・ロメオGT1600ジュニアを購入したのは1998年のこと。 そして、我が愛車がアレーゼ工場をラインオフしてから今年で50年……。ちょっと古いクルマではなく、随分前のクルマとして語ったほうがいいんじゃないのかな? と思ったが、筆者の中ではいまでも26年前の入手時に懐いていた気持ちや使い方が持続しているので、今回、浦島太郎状態の自動車ライターとして仲間に入れてもらうことにした。そう、いまでも当人的には、24年落ちのイタリア車に普通に乗っているという感覚なのだ。 ここで少しだけ昔話をさせてもらおう。中学生のときにアルファを買って足グルマにしようと決意した筆者は、当初、生産台数が少ないジュニアZを狙っていた。高校2年生のときに針金でフレームっぽいモノを作り、そこに紙粘土をくっつけてジュニアZのプロポーションを模したクレイモデルを自作するほど好きだった。 しかし、である。初志貫徹で1998年に自宅から最寄りのアルファ専門店にジュニアZを買いに行ったら、ショップの代表から「人生初のアルファを買うのであれば、維持しやすい普通のクーペを買って、それに慣れてからジュニアZにしたほうがいい」という金言をいただいてしまい、その言葉を信じてGT1600ジュニアを購入した。 結果的にこれが大正解で、オンタイムもオフタイムもアルファに乗るというカーライフを27歳から53歳になるまで楽しく続けることができたのだ。 それまで乗っていた日産マーチ・ターボを手放し、ファーストカーとしてGT1600ジュニアを買ったわけだが、いまでも足グルマとして使えているのは全方位的に便利だからである。眺めてよし、走ってよし、というだけでなく、車体が小さいが大人4人が無理なく移動できて、ブロンプトンぐらいのコンパクトさになる折りたたみ自転車であれば容易に積むことすらできるのだ。 まさにオールマイティで、水色号にはエアコンがないので真夏用のクルマとして2011年に4気筒エンジンのフィアット500を増車したが、やはり高速道路での移動はアルファのほうがラクなので、GT1600ジュニアを使っての遠方取材が多い年は年間1万kmほど走っている。 24年落ちのイタリア車に26年間乗っていたら、いつの間にかクラシック・カーになっていたという感じなので、なぜ、いま? という問いに対しては“そこにGT1600ジュニアがあるから”としか返答できないが、あまりにもいいクルマ過ぎて過去に一度も手放したり、買いかえたりする気にならなかったから、と回答することもできるだろう。 頑丈で、パーツがたくさん流通している往年のアルファ・ロメオは現在の交通環境の中でも足グルマになるが、初代イプシロンの増車も考えているので、中古車情報サイトをチェックする日々が続きそうだ。 文=高桑秀典 写真=神村聖 ■アルファ・ロメオ GT1600ジュニア(1974年型) ジウジアーロがデザインし、1963年にデビューしたクーペで、ジュニアはジュリアの廉価版として1965年に登場。当初、段つきと呼ばれるマスクだったが、1970年からフラットな形状になり、寄り目ではなく離れ目の2灯ヘッドライトを採用した。1998年の購入時に赤だったボディ・カラーは、鈑金塗装によって白になるも、直後に発生した本棚(ガレージ内)の崩壊により再塗装され、内外装とも水色になり今日に至っている。3000km毎のオイル交換時に各部を総点検してもらい、リセットする必要があればその都度作業してもらっているので驚くほど調子がいい。古いイタリア車の購入をきっかけに、ここまで人生が充実するとは思わなかった。(高桑秀典) (ENGINE2024年5月号)
ENGINE編集部
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