22年目の元W杯戦士。コンサ札幌、小野伸二のプロ矜持「1日1日を大事に」
美しい弧が描かれたピンポイントパスに、明確なメッセージが込められていた。一気に加速して相手のマークを外せ。ワンタッチでボールを前に出して、相手ゴール前へ抜け出せ――。プロ22年目を迎えた稀代の司令塔、北海道コンサドーレ札幌の小野伸二が健在ぶりを示した。 6日にいっせいに開幕したYBCルヴァンカップ。横浜F・マリノスとの予選リーグ初戦に臨んだコンサドーレは、リーグ戦で2戦続けて出場機会なしに終わっていた小野をボランチで先発起用。キャプテンマークを託し、敵地ニッパツ三ツ沢球技場のピッチへ送り出した。 3度のワールドカップに出場している、39歳のベテランが眩い輝きを放ったのは、両チームともに無得点で迎えた前半38分。自陣中央のやや左サイドへ素早くポジションを移し、左タッチライン際にいたMF白井康介から横パスを呼び込んだ直後だった。 左足を軽く合わせた、ワンタッチの縦パスをポンと放つ。ターゲットはすでに縦へ走り出し、マリノスのMF扇原貴宏の背後を取ろうとしていたルーキーのMF檀崎竜孔(青森山田高卒)。山なりのパスは約30m先、檀崎が一直線に駆け抜けた先にピタリと落ちてきた。 スタンドを唸らせた場面はしかし、檀崎が右足の外側にダイレクトで当てたボールが前方ではなく横に流れ、最後は扇原のファウルで止められた。青写真こそ具現化されなかったが、それでも存在感を示したパスを含めた自身のパフォーマンスを、小野は意外な言葉で総括した。 「正直、まだまだかな、と。こう言うとおかしいけど、トップチームで出られる状況じゃない、という感じがしたというか。今日の試合は特に、攻撃面でチームをいい状態にもっていけなかった。そこは自分でも残念なところだと思っています」 両足首の痛みに悩まされ続けた昨シーズンはリーグ戦での先発はなく、すべて途中出場で7試合、合計でわずか104分のプレー時間に終わった。ひるがえって今シーズンは、コンディション的には問題なく開幕を迎えられた。ならば、何が足りないのか。答えは小野だけが抱く感覚的な部分にあった。 「攻撃をどのように組み立てるのか、という部分で相手がそこまで迫ってきていないのに、思ったよりもプレッシャーを感じたプレーが自分のなかで多かった。次からはもうちょっと前を向いて、縦へボールをつなぐ作業をしていかないといけない」