22年目の元W杯戦士。コンサ札幌、小野伸二のプロ矜持「1日1日を大事に」
異次元の上手さを毎日のように見せつけるからこそ生まれた、他のチームでは見られない相乗効果。そして、共有した時間こそまだ短いものの、母校を全国高校サッカー選手権制覇へ導いた檀崎もまた、小野から何かを学び取ろうとしている。 「もうちょっと時間がかかると思いますけど、少しずつ近くへ寄っていって、盗めるものはないかなと考える意識は、練習の段階からもつようにしています」 もちろん、小野も最高のお手本だけに甘んじるつもりはない。昨シーズン限りでひとつ年上の河合竜二が引退。誕生日が8日早い同じ1979年生まれの稲本潤一も退団したいま、9月27日に40歳になる小野はサッカー人生で初体験となる「チーム内の最年長選手」となった。 他チームを見わたせば、ワールドカップをともに戦った川口能活や楢崎正剛、中澤佑二、そして小笠原満男ら、レジェンドと呼ばれた名選手たちがこのオフの間に続々とスパイクを脱いだ。 「非常に残念なことですけど、プロとはそういうことがあると自覚しているので。自分も40歳ですから、そういう日が来る可能性がありますから。だからこそ、一日一日を大事にしていきたい」 今シーズン初の公式戦となったマリノスとのルヴァンカップは、20歳のMF濱大耀との交代を告げられ、キャプテンマークをFWジェイに託した後半20分でお役御免になった。1-1の引き分けに終わった結果や、リーグ戦におけるこれまでの軌跡も含めて、もちろん小野自身が満足していない。 「出られるように準備してきているので、(リーグ戦で)毎試合出られないことはもちろん悔しい。それでも、今日のようにルヴァンカップでチャンスがある分だけ、まだまだ幸せなほうだと思っている。とにかく、こういうチャンスをものにできるように、大事にしてきたい」 稲本はJ3のSC相模原へ新天地を求めた。 1979年度に生まれた、いわゆる「黄金世代」のなかでは遠藤保仁(ガンバ大阪)が第一線でプレーし、曽ヶ端準は鹿島アントラーズの最古参選手となって。本山雅志は生まれ故郷のギラヴァンツ北九州でプレーし、高原直泰は沖縄SVで代表、監督、選手と三足の草鞋を履いている。無所属になった播戸竜二も、現役続行を表明している。 「みんなで刺激し合って、支えながらやっていきたいですね」 スタジアムを去り際に残した短い言葉に、小野は闘志と決意を凝縮させていた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)