22年目の元W杯戦士。コンサ札幌、小野伸二のプロ矜持「1日1日を大事に」
ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC(オーストラリア)から加入して6シーズン目。コンサドーレがJ1の舞台へ復帰した2017シーズンを含めてもリーグ戦の先発はなく、ゴールも同シーズンの大宮アルディージャとのルヴァンカップ予選リーグであげた1点だけにとどまっている。 それでも、18歳にしてワールドカップ・フランス大会のピッチに立った天才は、群を抜く存在感を放ってきた。誰よりも早くクラブハウスに到着しては体のメンテナンスを施し、ランニングでは常に先頭で声を出して引っ張る。ボールを使わせれば、笑顔を弾けさせながらテクニックを披露する。 サッカー小僧の面影を色濃く残したまま、年齢を重ねてきた姿に驚かされたのか。21歳も離れた小野へ「すごく楽しそうにサッカーをしているんです」と、檀崎は畏敬の念を込めた視線を送る。ただ、小野がコンサドーレに与えている効果は、眩しい背中を見せているだけにとどまらない。 2013年3月に代表取締役社長に就任したクラブOBで、小野の一挙手一投足を見守ってきた野々村芳和氏は「止めて、蹴るを含めて、いま現在でも(小野)伸二の技術とセンスは一番です」と太鼓判を押す。そして、間近で小野に接してきた若手に、いい意味で期待を裏切る変化が生じたと笑う。 「伸二みたいになりたいと思い、みんなサッカーをしている。ところが、本当の意味での伸二の上手さやすごさを知った若手の何人かは、伸二がもっていないモノで勝負しようと考えるようになったんです」 たとえばリーグ戦で開幕からボランチを組む、25歳の荒野拓馬と23歳の深井一希。野々村社長によれば「以前は1試合で10kmほどしか走れなかった」という下部組織出身のホープは、2日の浦和レッズ戦で荒野が13.002kmを、深井が11.288kmをそれぞれ走破。2-0の快勝を縁の下で支えた。 「伸二みたいになりたい、と憧れることとはまた別に、伸二にはなれないから『僕はこの道で勝負するんだ』という選択肢を、20歳をすぎた段階の彼らに与えてくれたことが何よりもよかった」 野々村社長が思わず目を細める。