いったい誰得?国民民主党の「103万円の壁」引き上げでもパートの働く意欲は高まらない
衆議院選挙で自民・公明両党は過半数の議席を獲得できず、躍進した国民民主党の協力を得て政権維持を図ろうとしている。これに対し、国民民主の玉木雄一郎代表は同党が衆院選で掲げた看板政策「年収103万円の壁」引き上げの実現が協力の条件だとしている。SNSでも議論が沸騰する「年収103万円の壁」とはどういうもので、引き上げが実現したら誰に、どんな影響があるのか? 【図】実は単純、「年収103万円の壁」のイメージ (森田 聡子:フリーライター・編集者) ■ 国民民主党は「ゾンビ税制」と強く非難 「年収103万円の壁」と聞くと、会社員や自営業者の人は「自分には関係ない」と考えてしまうかもしれない。しかし、この政策、実は大半の納税者に実質的な「減税」をもたらす公算が大きい。 「年収103万円の壁」の引き上げがどうして「減税」につながるのか。まずは、「年収103万円の壁」の背景から説明していこう。 日本の税制には「基礎控除」という制度があり、収入のある人はそこから一律48万円が控除される。ただし、一部の高額所得者は基礎控除の対象とならない。合計所得金額が2400万円超2450万円以下は控除額が32万円、2450万円超2500万円以下は同16万円と段階的に縮小され、2500万円を超えるとゼロになる。 一方、パートやアルバイト先から受け取る給料は「給与所得」に分類される。自営業者は必要経費を申告するが、給与所得を得ている人にはその代わりに収入額に応じた“みなし経費”を控除する制度がある。これが「給与所得控除」だ。給与収入が年162万5000円以下の人の給与所得控除は55万円と定められている。 先の基礎控除48万円にこの55万円を加えると103万円になる。パート収入が年103万円であれば、そこから基礎控除と給与所得控除を引いた課税所得がゼロとなり、所得税を払う必要がない。 これが「年収103万円の壁」だ。 年収103万円という控除額は1995年から変わっていない。国民民主党はこれが「ゾンビ税制」だと強く非難し、1995年以降の最低賃金の上昇分に合わせて178万円まで引き上げることを主張している。 しかし、パート収入を年103万円以下に抑えるメリットは「所得税がかからない」ことだけではない。