バルサ戦でMVPに輝いた久保建英、ラ・マシア出身の日本人にバルサ復帰の可能性はあるのか? 番記者が指摘する「2つの大きなハードル」とは
バルセロナ戦での久保建英の活躍が、スペイン国内でいつもにも増して注目を集めている。加入3年目を迎え、すっかりレアル・ソシエダの中心選手として認識されている久保だが、何かにつけてレアル・マドリーとバルセロナの2強がメインを張るラ・リーガにおいて、それ以外のオトラ勢(アトレティコ・マドリーを含めた3強以外のクラブを指す)の選手が注目を集めるのは簡単ではない。もっとも手っ取り早い方法が、2強との直接対決で目立ったパフォーマンスを見せること。なおかつ今回は久保の活躍で、バルサの公式戦の連勝は7でストップした。ラ・リーガ第13節の主役を演じた1人が久保だった。 【動画】久保建英、勝利に大きく貢献しMVP獲得! バルセロナ戦ハイライト スペイン紙『AS』の前編集長アルフレド・レラーニョ氏も、同紙のコラムで、「ソシエダが首位バルサを内容でも上回り、勝利を収めた。ほぼ最後までインテンシティーを維持し、疲労困憊だった後半アディショナルタイム、身体を張って耐え凌いだ。勝利の立役者となったのがクボで、ボールを持っている時に冴えを見せ、ボールを持っていない時に自己犠牲の精神を示した」とそのプレーに着目した。 一方、一般紙の『エル・パイス』では、ラモン・ベサ記者がマッチレポートの中で、「クボの存在は、ラミネ・ヤマルの不在(負傷欠場)と同じくらいの重みがあった。ソシエダは、面白いことにラ・マシア(バルサの下部組織の呼称)出身であるこの日本人の攻撃的MFが織り成すサッカーを軸に、素晴らしい試合を完成させた」、「オープンな展開で、クボが違いを生み出すファクターとなった」、「クボはトランジションとセットプレーでバルサのバランスを崩した」、「混乱の中で、バルサの快進撃は終わりを告げ、ソシエダの輝きとクボの気品が現われた」と、4度に渡ってその名前を言及。MVPに選ばれた活躍を称えた。 そんななか、試合翌日のバルセロナの様子を『AS』紙のバルサ番記者、フアン・ヒメネス氏に電話で聞いてみると、討論番組などで話題になっているのは、ヤマルの怪我やロベルト・レバンドフスキのオフサイドによって取り消されたゴールについてなど、バルサ目線のニュースがほとんどだという。久保はバルサ・ファンの間でも注目度の高い選手で、今回はこっぴどく痛めつけられたが、バルセロナのメディアではメインでその活躍が報じられることはなかったようだ。そこで私は、ヒメネス氏にひとつの疑問を投げかけた。 「今回のMVP級の活躍を受けて、バルサ内部で久保獲得に向けた動きは出ていないのか?」 久保は先述した通り、ラ・マシアの出身だ。同じく若き日にラ・マシアを飛び出して、今夏に復帰するやすぐさま活躍を見せているダニ・オルモの例もある。久保ならラ・マシア色が増している“フリック・バルサ”にもすんなりフィットできそうだが、ヒメネス氏は、実現には「2つの大きなハードルがある」と説明する。 1つ目がバルサとの関係だ。2019年6月、久保は当時籍を置いていたFC東京からマドリーに移籍した。バルサへの復帰が規定路線と見られていた中、条件面で折り合いがつかず、選んだ新天地が永遠のライバルだった。その時の交渉過程でしこりのようなものが残り、それは政権が変わっても、今も完全にはなくなっていないという。2つ目がヤマルの存在だ。いうまでもなく右サイドに君臨するバルサの新エースで、久保とはポジションが重なる。ヒメネス氏は、「クボが控えに回ることを受け入れれば、話は変わってくるが、それはまずあり得ないだろう。トップ下にも、ペドリ、フェルミン・ロペス、ガビと多士済々のタレントが揃っている」と指摘する。 ヒメネス氏も久保については「ビッグクラブでプレーする器」とその実力を高く評価するが、今後の課題として挙げられるのがプレーの継続性だ。「守備の献身性には目を見張るものがあるし、随分スタミナもついてきた。しかしまだ毎試合、90分間、高いインテンシティーを保って戦い切ることを掲げるイマノル・アルグアシル監督の要求レベルに達するには、向上の余地がある。今シーズン、ベンチスタートが増えているのもそのためだろう。ビッグクラブでプレーするには、毎試合コンスタントに実力を発揮しなければならない。その点、クボはまだパフォーマンスに波がある」 戦術アナリストのファビアン・ピニェロ氏も、その点を強調する。「クボはすでにトップクラスに達している。次のステップはこの状態を維持することを学ぶことだ」 文●下村正幸
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