4年で108人死亡 岡山県「人食い用水路」はなぜ誕生したのか? 危険性は近年緩和も、そもそも存在するワケとは
柵設置対策の進展
最後に、現在の用水路における事故の状況と対策についても触れておきたい。 岡山市における2022年の転落事故件数は48件で、うち3件が死亡事故だった。事故件数は減少傾向にあるとはいえ、ピークだった2017年の86件(死亡事故12件)と比べるとまだ多い状況である。事故件数が減った理由は、 「対策の進展」 である。岡山市では2016年から危険箇所約2500か所をピックアップし、2023年までに必要な箇所への柵設置などを完了した。市の担当者によれば、今後は地域からの要望に応じて対策を行っていくという。 「どうみても危ない箇所の対策は進んでいます。ただ、ご存じのとおりすべてに柵を取り付けることは不可能です。ですので、注意を促すために啓発していくことも重要だと考えています」(市担当者) 担当者は、宅地化の影響もありまだまだ用水路の危険性を十分に知らない住民も多いと指摘する。 「干拓地ですので、排水のために道路に対して用水路は低くなっていて転落の危険がありますよね。新しく引っ越してきた住民には、そうした用水路の危険性が十分に認識されていない印象です」 岡山の用水路問題は、干拓による農地開発と、その後の急速な工業化・都市化によって生み出された 「負の遺産」 ともいえる。もともと農業用水として整備された用水路網が、都市の急拡大の中で危険な存在となったのだ。コンパクトシティ政策が図られるなかで、急激な発展の歪みを、いかに持続可能な形で解きほぐしていくのかが、今後の課題だ。 くれぐれも、興味本位で「人食い用水路」に近づかないよう、お願いします。
昼間たかし(ルポライター)