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「退職するか悩む」「もはや壁ではなく山脈」――共働き家庭に立ちはだかる「小1の壁」のなぜ

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1月から2月は、各地で小学校の入学説明会が行われる時期だ。いわゆる「小1の壁」問題は、この入学のタイミングで訪れる。

小学校+学童保育の時間と保護者の勤務時間+通勤時間のミスマッチをはじめとして、共働きやひとり親家庭はさまざまな障壁にぶつかることになる。先輩パパママたちはどう向き合ったのか。対処法はあるのか。Yahoo!ニュースに寄せられたコメントも踏まえ、「壁」との対峙(たいじ)の仕方を探る。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/監修:普光院亜紀)

この記事、ざっくりいうと?
  • 子どもの登下校の時間や長期休みがまずは不安の種に
  • つらさを乗り越えた人がいる一方で、転職や退職のケースも
  • 助けてくれる人やサービスを探すなど、早めの準備を少しずつ

コメントから垣間みられる、みんなの不安

図解

【みんなで考えよう】「小1の壁」でつらかったことや不安はありますか? 何をきっかけに乗り越えましたか?」のコメント欄(2022年12月23~26日、計696件)には、上の図のような、これから小1の壁を迎える親のさまざまな不安が寄せられた。

「出社のため朝子どもより早く家を出ないといけない問題と、夏休みをどう過ごさせるか問題が今から悩みの種」といった声や、「学童保育によって仕事が左右されると考えると、不安しかない」という意見も。また、「1〜2時間でも家で一人で待たせることがつらかった。事故や事件もとても心配」と、子どもを思う親心が垣間みられた。

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保育園は、親が働いていることが前提なので登降園の時間もフレキシブルだったが、小学校に入ると、時間はもちろん、さまざまな事情が大きく変化する。就労家庭の多くが、学童保育を利用するなどして、子どもの放課後の時間を埋めているが、延長保育もあった保育園時代のようにはいかない。学童保育は18時半以降も開所するところが過半数になるなど時間は延びているものの、17時台に終わってしまうところもある。学校が長期休暇に入ると、子どもたちは朝から学童保育に通うが、開所が遅いために親が家を出る時間のほうが早くなってしまうことも。さらに長期休暇中は学校の給食がないので、朝の弁当づくりが必要になる。

つらさを乗り越えた人がいる一方で、転職や退職も 経験者の声は?

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記事のコメント欄には、小1の壁のつらさや乗り越えた方法も寄せられた。
特に長期休暇中が大変だったという声は多く、「学童は8時にしか開かず、時間まで待ってたら仕事には間に合わない......。結局時間休を取りました」「夏休みの弁当や早起きがつらくて泣いてました。息子は中1になり、簡単な料理は作れるように。私も仕事を続けてます」と時間が解決してくれた、という意見もあった。

公的な学童保育で時間をカバーできなかったケースでは、「医療従事者。子ども難病あり。学童は2カ所と契約した。お金はかかるがこれしかなかった」といった声も聞かれ、民間学童(公的な学童保育とは別に民間企業などが行っている預かりサービス)なども活用して乗り切っている様子がうかがえた。

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キャリアとのジレンマを抱える声や転職・退職に言及するコメントが多かった。
「新卒からの会社でしたが負担の軽い仕事に転職。日本はまだ新卒至上主義が多く、キャリアコースに戻ろうとしても難しいのが残念」「教職でしたが子どもに病気がわかり退職。制度はあるけど使えない、使わせないところが多すぎます」などの嘆きも。また、「フルタイムから14時あがりのパートに。収入はだいぶ減りましたが、やむを得ない決断だった」といった切実な声も聞かれた。

親がいない時間を埋める存在が必要

では、実際の「壁」の高さはどの程度のものになるのか。以下のチェックリストを参照してみよう。

チェックリスト

共働き世帯の場合、まずは夫婦間でのやりくりによる分担での対応が基本となるだろう。勤務先の制度を使う、どちらかが子どものスケジュールに合わせて動く、リモートワークを活用する......といった具合だ。それが難しい場合、上にも紹介したように親がいない時間を埋める存在が必要となる。留守番ができるようになるなど、子どもの成長によって解決する部分もあるが、子どもの安全・安心を確保できるように、周囲のサービスや助けも借りて、子どもとも相談しながら、それぞれに解決方法がさぐっていく必要がある。

専門家に聞く、「小1の壁」のリアル

「小1の壁」について、保護者はどのように備えればよいのか。保育ジャーナリストの普光院亜紀さんに聞いた。

普光院亜紀さん

Q.いつぐらいから小1の壁を意識するケースが多いですか?

普光院亜紀さん
普光院亜紀さん
「小1の壁」という言葉の認知も進んできているためか、早い段階で準備を始める方もいらっしゃいますね。年長組の保護者の間で徐々に小学校や学童保育の話がふえてくる感じでしょうか。上の子が小学生の保護者からの情報は貴重なので、会える機会などにいろいろ聞いてみるとよいと思います。あまり早くから心配しすぎるのはよくないと思いますが、助けてくれる人やサービスを探してみるなど、早めに準備できることを少しずつやっておくとよいと思います。

Q.学童保育は希望すれば全員入れるのでしょうか?

普光院亜紀さん
普光院亜紀さん
学童保育には定員が設けられています。もし、学童保育の「待機児童」となった場合、「どうにか乗り越えた編」に出てくるような方法を考えなくてはなりません。ただし、民間学童は地域によってないところもあります。ファミリー・サポート・センターやシルバー人材センターなどに頼った人もいます。上の子がいる場合には、きょうだいで安全に留守番してもうことも選択肢になります。管理が大変にはなりますが、これらを組み合わせて子どもの居場所をつなぐこともできます。

Q.学童保育に入れても時間が合わないという話を聞きますが?

普光院亜紀さん
普光院亜紀さん
学童保育は保育園の延長保育ほどは遅くまで開いておらず、18時〜18時半くらいで終わるケースが多いです。家庭からの希望があれば、お迎えを待たずに子どもが自分で帰宅し、家で留守番することが認められる場合もありますが、それができるかどうかは地域の状況や子どもの個性にもよるでしょう。また、子どもが学童保育になじめない、指導員と合わないといったケースもあり、そんな場合もほかの方法を探すことが必要になります。

Q.他に選択肢がなく、ひとりでお留守番してもらいたいのですが......。

普光院亜紀さん
普光院亜紀さん
いきなり本番というのは無理がありますから、子どもと話し合いながら少しずつ練習したり、留守番中のルールを決めるなど段階を踏みつつ、子どもの成長や性格に合わせた対策をしていきましょう。もちろん、想定していない事態が起こることもあります。隣近所や親同士の関係に助けられることも少なくありませんので、「地域のつながり」を普段から意識しておくことも大切です。

Q.学童保育の待機児童解消に向けた動きはないのでしょうか?

普光院亜紀さん
普光院亜紀さん
2018年に掲げた「新・放課後子ども総合プラン」で、国は2023年度末までに放課後の学童の受け皿を30万人拡充し、152万人にするとしています。岸田首相も学童保育の拡充を積極的に進めることを明言していますから、さらなる対策の具現化を期待したいところです。

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