Inside2018.06.07

女性の関心は世代で移り変わる?――30代は保育、40代はPTA、分析で見えた傾向

写真/アフロ

毎日4000本を超える記事の中から、「公共性」と「社会的関心」を2大柱に厳選したニュースを配信しているYahoo!ニュース トピックス。より価値ある情報をユーザーに届けるため、Yahoo!ニュース トピックス編集部ではログインユーザーを対象に「年代・性別ごとにどの記事がどれだけ読まれているか」のデータを収集・分析し、サービス改善に役立てています。
連載「Yahoo!ニュースの作り方」では前回、男性読者のアクセスデータを「スポーツ」カテゴリーに絞って分析し、他の世代に比べて、20代は野球、30代はサッカー、そして40代はF1やプロレスに高い関心を示すという興味深い事実が明らかになりました。
そこで今度は女性読者に対象を絞り、アクセスデータを分析。すると、男性とは明確に異なるアクセス傾向が見えてきたのです。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

連載「Yahoo!ニュースの作り方」
・連載第1回
 1日4000本の記事と向き合う「Yahoo!ニュース トピックス編集部」のすべて
・連載第2回
 Yahoo!ニュース トピックス「13文字見出し」の極意 難関「コートジボワール」はどう表現?
・連載第3回
 「人×テクノロジー」を日々実践 進化を続けるYahoo!ニュースアプリ
・連載第4回
 衆院選、そのときYahoo!ニュースは――投開票日までの舞台裏
・連載第5回
 500人の専門家の発見と言論が社会を動かす――「Yahoo!ニュース 個人」5年間の軌跡
・連載第6回
 「改善はいつまでも尽きない」  Yahoo!ニュースアプリを育てる人たちの思いとは
・連載第7回
 
20代は野球、30代はサッカー? Yahoo!ニュース トピックスの分析で見えてきた傾向

30〜40代女性の関心は「子育て」に集中し、子どもとともに関心も成長していく

今回は2018年3月1日から31日までの1カ月間のデータから、独自の「特徴スコア」を元にランキングを作成。これは純粋なPV数ではなく、世代ごとのユーザー数の違いを考慮のうえ、他の世代と比較したアクセス数の偏り具合から算出した指標です。

まず20〜40代女性でそれぞれスコアが高かった上位10本をピックアップ。すると「女性の世代ごとの生活の違いをそのまま表す、興味深い結果が出ました」とYahoo!ニュース トピックス編集部でデータ分析を担当する中上芳子さんは話します。

20代から30代の女性のランキング。20代の1位はBerryz工房の菅谷 第1子出産。2位は、NMB太田 体調不良から復帰。3位は耳が聞こえない被災者の7年。4位は、駅で25歳女性の髪切る 男逮捕。5位はオウム 父の死因今も知りたい。6位は、ももクロ百田 赤い食べ物苦手。7位は、SNS発の若者言葉 文章影響は。8位は、親知らず 抜いて小顔になる?。9位は、パラ村岡が銅 2日連続メダル。10位は、佐藤健28歳 高校生役に自虐。 30代女性のランキング1位は、認可外保育 無償対象絞る方針。2位は、乳幼児突然死 遺伝子と関連?。3位は、乳児揺さぶり 分かれる見解。4位は、第2子育休で第1子退園 悩む親。5位は、育休で 入園意思ない利用申請。6位は、乳児の股関節脱臼 見逃し注意。7位は、酸化の恐れ 粉ミルク自主回収。8位は、育児にIT スマート製品で楽に。9位は、妊娠で廃止 生活保護冊子誤り。10位は、ハンドスピナー部品 乳児誤飲。 40代女性のランキング1位は、名簿勝手に使えず 揺れるPTA。2位は、沖縄小4自殺「いじめが主因」。3位は、岡村靖幸 異彩を放った才能。4位は、福山 米進出へ英語猛勉強か。5位は、対応割れるインフル治癒証明。6位は、スキー合宿の小4死亡 事故か。7位は、小6女児自殺 いじめと認定。8位は、児童に暴行 元教諭を書類送検。9位は、福山雅治 米進出の予定ない。10位は、小1担任が児童たたく 1人けが。

「このランキングを見ると、エンタメ関連の話題に興味がある20代に比べ、30代になると育児や保育の話題に関心が変化することが分かります。また、40代も30代と同様に子育てへの関心が高いのですが、話題の対象が乳幼児から小学生に“成長”しているのが特徴です」

また30代と比べ、40代ではエンタメ関連の話題がいくつかランクインしていることから、子育ての負担が少し軽減している様子もうかがえます。

「つまり女性ユーザーの関心の対象は、ライフステージに合わせて変わっているわけです。これは年代が上がっても好むスポーツのトレンドが維持されていた男性ユーザーの傾向に比べると、対照的な結果といえるでしょう」(中上さん)

ほかにも、保育園の認可を巡る行政の方針を伝える記事や、特定の地域を対象とした内容の記事であっても、子育て関連の内容であれば、30代女性ユーザーは広く高い関心を示す傾向が明らかになったのだそう。

「30代の女性ユーザーは、男性のようにスポーツジャンルへの興味が強いというより、『子育て』にまつわる話題はオールジャンルで何でも関心が高いということが分かりました。例えば、特定の地域でインフルエンザが大流行しているという話題にしても、地域を問わずに読まれています。30代女性は婦人科系のがんなど自分に関係しそうな病気より、子どもがかかりそうな病気、といったように、世のお母さんたちにとって、今まさに子どもの周囲で起きている事象全般に非常に高いニーズがあるということですね」(中上さん)

20代から30代の男性のランキング。20代男性の1位は、教員7割過労死ライン 神奈川。2位は、就活 面接3月解禁を検討。3位は、きょう就活解禁 今年は異変?。4位は、就活生どこへ 説明会出足鈍く。5位は、採用大改革 リクルートの狙い。6位は、ジョブズ氏履歴書 1850万円に。7位は、Switch 年内にスマブラ発売。8位は、コミュ力高い奨成 コーチ心配。9位は、ブタ体内で人臓器 研究解禁へ。10位は、雇い止め 大学vs.教員先鋭化。 30代男性のランキング1位は、BRAHMAN 被災地で見えた道。2位は、武田薬 欧州製薬大手の買収案。3位は、悔いない 平山氏味スタで別れ。4位は、矢部語る 岡村との照れる関係。5位は、元Jリーガー社長マザーズ上場。6位は、モノからコトへ 素材業界でも。7位は、速報ウクライナ戦 1-1で後半。8位は、仮想通貨 16社で新団体設立へ。9位は、ハリルJ 中島翔哉を初招集へ。10位は、待望ゴール 久保建英の責任感。 40代男性のランキング1位は、たけし 軍団には残ってくれと。2位は、曹操の遺骨 発見報道に困惑も。3位は、古代のミイラにタトゥー 最古。4位は、たけし独立 軍団は全員残留。5位は、F1復帰 アルファロメオの縁。6位は、19時間立ち往生 フェリー帰港。7位は、店が貸出機破損 悩むメーカー。8位は、NHKアニメ デーモン閣下怒り。9位は、ミゼットプロレス 未来あるか。10位は、たけし新事務所に軍団2人移籍。

なお同じ子育て世代の30~40代のデータでも、男性ユーザーのランキングに育児関連トピックは見当たりません。中上さんによれば、「男性の育休などを扱ったトピックスですら、女性ユーザーを中心に読まれている」とのこと。これは子育てがまだまだ女性に委ねられがちな事実を示しているのかもしれません。

20代女性が知りたい意外なテーマ

一方、上の世代と比べて育児の当事者が少ない20代では、エンタメ関連のトピックが中心となっています。しかし、そこには意外な傾向が……。

「芸能人の動向などの話題に混じって、『耳が聞こえない被災者の7年』といった感情に訴えかける切り口、新聞記事で言うと『人もの』と言われるような記事がランクインしているのも、この世代の特徴です。20代女性は集計期間を問わず、常にこうした話題が上位にあがることが多く、これは集計してみて初めてわかった事実です」(同・桃井晴康さん)

傾向としてファクトベースの記事よりも、当事者の心情や状況を描いた記事がよく読まれているのだとか。

「たとえば今回ランクインしているオウム真理教関連の話題にしても、事件を直接知らない世代にもかかわらず、高い関心を集めています。上位トピックの内容から、20代が知りたがっているのは、やはり被害者の胸の内であることがわかります。この傾向は、東日本大震災や熊本地震など、風化させないために若い世代にどう伝えるか、のヒントになったと思っています」(中上さん)

やや難しい政治・経済のニュースであっても、切り口や表現によっては20代の関心を集められることを、今回のデータは示しています。これはデータを元に可視化しなければ把握できない傾向でした。

女性ユーザーにより価値の高い情報を届けるために

編集部によれば、Yahoo!ニュース トピックス読者の男女比は、およそ男性6.5:女性3.5。今回の女性ユーザーの分析は、「そもそも女性の興味、関心が高い情報をYahoo!ニュース トピックスは届けられているのか?」という疑問から始まった取り組みなのだそう。

では、こうしたデータは今後のYahoo!ニュース トピックス編成に、どのような影響を与えるのでしょうか?

「この結果をもってすぐに、30代女性に向けて育児関連ニュースの掲載本数を増やしたり、40代女性に向けていじめ問題やPTAの話題を積極的に探したりといったことはしませんが、これまで取りこぼした記事がなかったか、検証と反省の材料として活用することになります。その上で強化すべきジャンルは強化し、女性ユーザーにとってもより価値のあるトピックス編成を心掛けていきます」(桃井さん)

取り上げたYahoo!ニュース トピックスが「これは女性ユーザーの反響が大きそう」と予想しても、意外なほど無反応に終わることもあります。だからこそ、確かなデータを元にユーザー傾向を俯瞰(ふかん)する意義は大きく、それが今後のトピックス編成の糧となるのです。

こうしたデータを受けた取り組みの1つが、Yahoo!ニュースのアプリ内に反映されています。それが「話題のニュースの流れを見る」というコーナーの「子育て支援・待機児童問題」というカテゴリ。

「話題のニュースの流れを見る」というコーナーの「子育て支援・待機児童問題」というカテゴリ

これは1つの事件や話題に関する記事を時系列でまとめたコーナー。どうしても“点”で見られがちなネットニュースを、時間軸ごとの“線”で見せることで、次々に情報が更新される時事的な話題や長く続く問題への理解を促そうという取り組みです。

通常は旬の話題に合わせて掲載カテゴリは次々に入れ替わりますが、「子育て支援・待機児童問題」は常設の固定カテゴリに。これも、Yahoo!ニュースにアクセスする女性ユーザーのボリュームゾーン(30代)を意識した施策で、Yahoo!ニュースのさらなる価値向上を意識してのこと。

「ただ、Yahoo!ニュースは、決してアクセス数だけを重視しているわけではありません。PVにつながらなくても重要な話題は世代ごとにたくさんあるはずで、私たちとしてはそこをできるかぎりカバーしていきたいと思っています。そのためには、今どのような記事が読まれているのかを正確につかむ必要があり、そのための試行錯誤は今後も続けていくつもりです」(桃井さん)

この先も、時代や世相に合わせてユーザーの興味や関心、必要とする情報はどんどん移り変わっていくでしょう。そこで編集部がどのような手を講じるのか? それもまた、Yahoo!ニュースを読む興味深いポイントと言えるかもしれません。

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