Inside2017.11.09

衆院選、そのときYahoo!ニュースは――投開票日までの舞台裏

去る10月22日に行われた衆議院議員総選挙。政権を握る自民党のほか、新たに立ち上がった希望の党や立憲民主党などを始めとする8つの政党がしのぎを削り、何かと話題の多い選挙となったのは記憶に新しいところです。投開票当日は候補者の当確速報など、選挙を巡るさまざまな報道があり、テレビやスマホにくぎ付けだった人もいることでしょう。
そんな中、Yahoo!ニュースでは今回もYahoo!ニュース トピックスや特集ページでの公約チェックや相性診断など、さまざまなコンテンツを用意し、有権者にできるだけ適切な判断材料を提供してきました。投開票が進む裏側で、Yahoo!ニュース トピックス編集部では何が行われていたのか。知られざる舞台裏を探ってみました。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

連載「Yahoo!ニュースの作り方」第4回
Yahoo!ニュースについて編集プロダクション「ノオト」の皆さんに取材していただきました。今回のテーマは「衆議院議員総選挙」です。

・連載第1回
 1日4000本の記事と向き合う「Yahoo!ニュース トピックス編集部」のすべて
・連載第2回
 Yahoo!ニュース トピックス「13文字見出し」の極意 難関「コートジボワール」はどう表現?
・連載第3回
 「人×テクノロジー」を日々実践 進化を続けるYahoo!ニュースアプリ

「公約チェック」や「相性診断」で判断材料を提供

「今回は昨年の参院選と違い、いつ選挙が行われるのか不透明だったため、どう準備を進めるべきか、手探りの部分がありました。いわゆる解散風が吹き始めた9月下旬から着手し、『衆議院選挙2017』特集ページの相性診断などのコンテンツが整ったのは、公示日の3日後でした」

そう語るのは、Yahoo!ニュース トピックス編集部の高橋洸佑さん。今回の衆院選に合わせて「Yahoo!みんなの政治」内に設けられた特集ページでは、関連ニュースや開票速報のほか、各政党の公約をわかりやすくまとめた「公約チェック」、さらにはその公約とのマッチ度を測る「相性診断」などを用意しました。


「Yahoo!みんなの政治」内に設けられた「衆議院選挙2017」特集ページ

「いずれも早稲田大学マニフェスト研究所の監修を受けて制作したもの。たとえば『公約チェック』では、各政党の理念、政策の独自性や実現可能性、わかりやすさなどをそれぞれ5点満点で採点し、解説を添えました。また『相性診断』は、さまざまなメディアがボートマッチを公開する中、誰でも答えやすいように配慮し、極力ハードルを下げた10の設問で構成しているのが特徴です」(高橋さん)

膨大な情報が入り乱れる選挙戦において、ユーザーにとって最適な判断材料を提供することは、Yahoo!ニュースの1つの使命。そのための工夫が随所に凝らされています。監修を務めた早稲田大学マニフェスト研究所の青木佑一さんは、コンテンツ制作について次のように語ります。

「相性診断は、いかにユーザーの生活に則した設問を設定できるかに配慮しました。設問ごとにメリットとデメリットを明示することで、政党との相性を測るだけでなく、ユーザーに選挙の争点を知ってもらおうという狙いもあります。インターネットでの選挙運動の解禁や18歳選挙権によって、政治ニュースの役割はさらに大きくなるでしょう」

選挙情報と災害情報の両立を求められた一夜

投開票日の10月22日、編集部メンバーだけでなく、企画職やエンジニアも出社して選挙対応に

さて、投開票当日。Yahoo!ニュース トピックス編集部では通常の倍の人員を配置する臨時シフトで備えていましたが、この日を超大型の台風21号が日本列島を襲ったのはみなさんもご存じの通り。その影響は大きく、船便の欠航により離島の開票が遅れる事態も。その影響で選挙に関連するひととおりの作業が手離れしたのは、翌23日の晩のことだったといいます。

「提携するTBSさんから開票データが届き始めると、順次それを特集ページ内の開票結果に反映。同時に当確情報など各社から配信ニュースをいただき、Yahoo!ニュース トピックスとして掲出していきます。本来、投開票当日はトップページの8つのYahoo!ニュース トピックスが選挙一色に染まるのが通例ですが、この日は深夜12時を回る頃、台風の影響で関西の河川で氾濫が起こるなど、各地から深刻な被害状況が寄せられました。そこで編集部では、選挙の当確情報や各党の状況なども落ち着き出したこともあり、編成を変更しました」(高橋さん)

次々に送られてくる選挙情報をさばく傍ら、災害情報にも目を配る必要があったこの夜。情報が交錯し、全国の被災状況が思うように得られないジレンマに陥る局面もあったと高橋さんは振り返ります。

そんなイレギュラーはあったものの、これまで選挙報道を手がけてきたことで得たノウハウは、しっかりと生かされていました。たとえば、配信するYahoo!ニュース トピックスの内容に偏りがないよう、その内容を可視化して編集スタッフ間で共有する役割を担っていたのが、Yahoo!ニュース トピックス編集部の桃井晴康さんです。

「9月以降から投開票日まで合計500本以上、選挙関連のYahoo!ニュース トピックスを配信してきましたが、これを大まかに政局関連・政策関連と分類して視覚化することで、バランスのチェックに努めました。話題性を重視すると、どうしても政局についてのニュースが多くなりがちですが、有権者に正しい判断を促すためには、やはり政策関連のYahoo!ニュース トピックスは欠かせませんからね」(桃井さん)

Yahoo!ニュース トピックス作成状況を振り返るために視覚化。こうした情報が常に編集部メンバーに共有されていました

検索データの視覚化でユーザーのニーズを分析

さらにもう1つ、視覚化して編集部内に共有されていたのが、検索データ。これにより、ユーザーが何を知りたがっているのかを浮き彫りにし、Yahoo!ニュース トピックスの構成に反映するのです。

9/28~10/12のYahoo! JAPAN(ウェブ・スマホ)における「政党別検索数」。こうした情報もYahoo!ニュース トピックス作成の参考に

「憲法改正や消費税増税といった話題に関心が集まっているのであれば、関連するYahoo!ニュース トピックスを厚めに配信するなどの対応を行います。今回の選挙でいえば、ベーシックインカムについて情報を求めるユーザーが多かったのが特徴で、その仕組みや社会保障全体に関するニュースを意識的にセレクトするといった方針につながりました」(Yahoo!ニュース トピックス編集部の佐橋史直さん)

逆に、あまり検索されていないテーマやワードをあぶり出すことも、佐橋さんの重要な役割。

「重視されるべき施策について、あまり関心が高まっていないようであれば、そのテーマに即したYahoo!ニュース トピックスを考えるのも、私たちの大切な仕事です。今回でいえば、地方分権や行政改革、農政といった分野に対し、いかに興味を喚起させるかが1つの課題となりました」(佐橋さん)

たとえば、農政関連ニュースなら日本農業新聞というように、専門紙とも提携し、幅広い分野の情報を網羅しているのがYahoo!ニュースの強み。そこには、国内随一のニュースサービスとして、ただアクセスアップに努めるのではなく、国民全体が意識すべき情報の啓発を図ろうという矜持(きょうじ)が見て取れます。

「こうした検索データをリアルタイムで追っていけば、急速に関心が高まる話題、逆に失速する話題が、より鮮明になるはず。あるいは、党首のある発言によって、そうした関心が敏感に推移する現実もあるはず。こうした変化を迅速に反映させ、つい見落とされがちだけど重要な情報にスポットを当てていくことが、今後の課題でしょう」(佐橋さん)

毎週の編集会議でもYahoo!ニュース トピックスの作成状況の確認や情報共有が行われていました

長年の選挙報道によって培われたノウハウ

今回の選挙戦では、「急な解散で準備期間が短く、公示日直前の編集部はかなりバタバタしました」と、前出の高橋さんは反省を込めて語ります。それでも、Yahoo!ニュース トピックス編集部に蓄積された選挙報道のノウハウは、回を重ねるごとに着実にブラッシュアップされています。

ベテランの竹野雅人さんは今回の衆院選を次のように振り返ります。

「台風など予期せぬ事態もありましたが、何があっても伝えるべきことをしっかり伝えようと、あらかじめ編集部内では意思統一されていました。これまでの経験から人員配備も徹底し、終わってみればこの10年で最もスムーズな選挙戦だったと感じています」(竹野さん)

Yahoo!ニュース トピックスや特集ページの更新だけでなく、プッシュ通知で都道府県別に結果情報をユーザーに届けていました

今回の選挙報道にあたり、あたかも合言葉のごとく、常にYahoo!ニュース トピックス編集部が意識してきたのは、「政局より政策を伝えること」だと竹野さんは言います。

「しかし、私たちが伝えたい内容に即した記事が、必ずしも配信いただけるわけではありません。そこでどう対応するかは、今後の課題でしょう。提携する媒体各社に、求める記事をリクエストしたり、毎回手薄になりがちなテーマの記事作りをあらかじめお願いしておいたりするのもいいかもしれません。まだまだやれることはたくさんあると思います」(竹野さん)

怒とうの一昼夜を終えて、新たな経験と課題を得たYahoo!ニュース トピックス編集部。こうした知見を次の国政選挙に生かしながら、ユーザーにとってより有意義なニュースサービスのあり方を模索していくのです。

お問い合わせ先

このブログに関するお問い合わせについてはこちらへお願いいたします。