Inside2017.12.25

「改善はいつまでも尽きない」  Yahoo!ニュースアプリを育てる人たちの思いとは

強豪ひしめくニュースアプリにおいて、日々進化を続ける「Yahoo!ニュースアプリ」。ユーザーにとって有用で使いやすいアプリであるために、舞台裏ではどのようなことが行われているのでしょうか。連載「Yahoo!ニュースの作り方」第6回ではYahoo!ニュースアプリの配信システムの面から、知られざる運営の工夫に迫りました。Yahoo!ニュースアプリの運営を支える飛田智史さん、中村愛さん、関口叔子さんの3人にスポットを当て、鼎談形式でその実情を探ります。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

連載「Yahoo!ニュースの作り方」第6回
Yahoo!ニュースについて編集プロダクション「ノオト」の皆さんに取材していただきました。今回のテーマは第3回に続いて「Yahoo!ニュースアプリ」です。

・連載第1回
 1日4000本の記事と向き合う「Yahoo!ニュース トピックス編集部」のすべて
・連載第2回
 Yahoo!ニュース トピックス「13文字見出し」の極意 難関「コートジボワール」はどう表現?
・連載第3回
 「人×テクノロジー」を日々実践 進化を続けるYahoo!ニュースアプリ
・連載第4回
 衆院選、そのときYahoo!ニュースは――投開票日までの舞台裏
・連載第5回
 500人の専門家の発見と言論が社会を動かす――「Yahoo!ニュース 個人」5年間の軌跡

公共性を守りながら、より役立つニュースアプリを目指して

――まずは、それぞれの担当領域を簡単に紹介してください。

中村
私はディレクターとして進行管理などを担当していますが、2017年度から新たにYahoo!ニュースアプリの企画担当として、新しいコンテンツや機能の立ち上げにも携わるようになりました。タブの改良といった仕様面なども含めて、Yahoo!ニュースアプリに関わるさまざまな案件の管理を手掛けています。
飛田
僕はもともとエンジニアで、現在はプロジェクトマネージャーとテクニカルリーダーという、2つの役割を持っています。要はチーム全体を管理する立場。Yahoo!ニュースアプリにおける「取りまとめ役」のようなものですね。
関口
私はデザイナーです。アプリ上で目に見えるデザインはもちろん、インターフェースや機能性といった、ユーザーが触れるすべてを担当しています。さらに付け加えるなら、アプリを通してユーザーにどのような体験をフィードバックするかを考え、設計する立場です。

Yahoo!ニュースアプリは2013年に誕生して以降、改善を繰り返しながら、ユーザーのみなさんにニュースを届けている

飛田
チームとしてそれぞれがどういうフローでつながるかは、案件によって毎回異なります。たとえば、主要トピックス一覧の見せ方を改善しようというアイデアが出た場合、まずは僕から中村さんに「担当よろしく」と指示を出すのがスタートだよね。その後、関口さんと2人で、デザインの打ち合わせが始まる。
中村
そうですね。具体的にどのようなことができるか、私がざっとイメージを膨らませる。それを簡単なラフやレジュメにして、「これをできるだけ使いやすい仕様で実現するにはどうすればいいですか?」と、関口さんに相談しに行きます。
関口
そして、ある程度アイデアを煮詰めたら、私たちデザイナーが改めて絵や映像を使って具体化します。
中村
実際には、そうやってすんなり作業が流れていくわけではなく、細かな相談で何度も何度も互いを行ったり来たりしていますけどね(笑)。
飛田
うん、この3人に限らず、何かとディスカッションする機会は多いよね。
関口
デザイナーとしては、顔を見ながら話せるのはありがたいです。社内のチャットシステムはありますが、細かなニュアンスなど、文字だけでは伝わりにくいこともあるので。

技術面からもアプリ全体の改善策を模索するプロジェクトマネージャーの飛田さん

――現在、Yahoo!ニュースアプリについて、ブラッシュアップしたい点は何でしょうか。

飛田
パーソナライズをもっと強化したいと考えています。Yahoo!ニュース トピックスの編成は編集部が選んだものを提供していくとしても、その下にあるタイムラインの部分などは、ユーザー一人ひとりに合わせてもっとアレンジができるのではないかな、と。

Yahoo!ニュース トピックス下に並ぶニュースのタイムライン(イメージ)

中村
私も同感です。Yahoo!ニュース トピックスは、みんながなるべく知っておかなければならないニュースとしてあるべきだと思いますが、一方で、押さえておくべき話題は場面や人によって変わるはず。たとえば会社の人と話す時と家族と話す時では、話題は異なりますよね。アプリの現状の価値を維持しながら、バランスよくユーザーのニーズに対応する手法を考えていきたいです。
関口
つまり、ニュースサービスとしての公共性を守りながら、私たちに何ができるかを考えなければいけないということですよね。もっとも、その点ではヤフーにはニュースアプリの他に、Yahoo! JAPAN 公式のポータルアプリもあるので、割り切ってニュースだけに特化できるのは、私たちの強みの1つだと思います。
飛田
確かに。あれこれといろんな機能に手を出さず、ニュース領域だけに狙いを絞れるのはありがたいかも。その分、読みやすさや使いやすさの改善に注力できるし。

ユーザビリティーの向上に向けてさまざまな面から企画を練る中村愛さん

社内の風通しの良さが新たなアイデアを育む

――みなさんの取り組みは、必ずしもユーザーにわかりやすいものばかりではないと思います。アプリには、人知れずアップデートしている点も多いのでは?

飛田
そうですね。気がつけば、Yahoo!ニュースアプリもリリースから4年がたちますが、この間、直接目に見える部分だけでなく、システム面でもさまざまな改善を加えてきました。たとえば、アプリの起動スピードや画像の表示スピードアップのために、4年前には実現できなかった技術を取り入れるなど、少しでもユーザー体験を向上させる工夫を随所に凝らしています。
中村
ユーザーからのお問い合わせやご意見・ご要望は、できるだけ敏感にキャッチアップするように努力しているつもりです。対ユーザーの窓口であるカスタマーサービス部門と密に連携して、「不具合が生じている」とか「ここの操作性が悪い」など、寄せられたコメントは必ず目を通すようにしています。
関口
デザインの分野ではよく、「1ピクセルにこだわる」という表現が用いられますが、まさにその姿勢で、妥協なく少しでも使いやすいインターフェースを実現できるよう心掛けています。最近は映像コンテンツが増えてきたこともあり、エンジニアとの技術面のすり合わせがより重要になってきましたね。
飛田
ユーザーが気づくような大きな変更は少ないかもしれませんが、小さなアップデートはかなり頻繁に行っています。ちょっとしたデザインの改善にしても、デザイナーの案に合わせてエンジニアが試作し、それを実機で流してみてまた微調整する、そういう地道な作業の繰り返しですね。

――いま気づいたのですが、選んだタブによって画面上部のカラーが変化するんですね。細かい!

関口
このデザインは、今どのジャンルを見ているのか、直感的にわかりやすくしたいという狙いからです。Yahoo!ニュースのサービスカラーは青なので、その範囲のカラーバリエーションでアレンジしています。ただ、デザインは突然大幅に変えるとユーザーを混乱させてしまうので、少しずつ適度なペース で変えていく必要があるのですが。

青を基調に、タブごとの色を微妙に変えているYahoo!ニュース アプリ

飛田
ユーザーが当たり前のように使ってくれるようなアプリを目指さなくてはいけませんね。
中村
そう思います。ヤフー社内では、そのための勉強会も活発に開かれているし、まだまだいろんなことがやれるはず。その意味では、社内になんでも提案しやすい環境があるのはありがたいことで、学んだトレンドを素早くアプリに反映させることができます。
飛田
定期的に行っている振り返り会議でも、反省点や改善点が、どれだけ会議を重ねても減らないのはすごいと思います。普通は解決していくほど課題は減っていくはずなのに、アプリをもっと良くしようと、次々にいろんなアイデアが出てくる。
関口
デザイナーはたいてい新しもの好きなので、これまでにない技術や手法が登場すると、すぐそれを使ってみたくなるんです(笑)。でも、表示速度を落としてはいけないので、常にその制約との戦いですね……。

「1ピクセルのアレンジで、ユーザーの使用感は微妙に変わる」と、デザイン担当の関口さん

目指すのは、ユーザーにとっての「日常の一部」

――みなさんにとって、Yahoo!ニュースアプリの理想形とはどのようなものでしょうか。

中村
世の中で今何が起きているのか、時事ニュースをきちんと押さえられていると、1人の大人として自分に自信が持てると思うんです。そうしたお手伝いができるのは、ニュースアプリの醍醐味(だいごみ)ではないかでしょうか。パーソナライズを進める一方で、その最適なバランスを見つけたいですね。
飛田
ユーザーにもいろいろなタイプの方がいて、時事的な話題に精通している人もいれば、日頃あまり関心を持たない人もいる。あるいは、記事をじっくり読みたい人もいれば、動画でパッと知りたい人もいる。今後はそういったニーズに合わせて、情報を出し分けていけるといいかもしれませんね。
中村
ニュースは受け手の理解度によって、求める情報が変わってきますよね。
飛田
そう。かといって、理解度をユーザーにヒアリングするのは現実的ではない。この点についてはもっともっとアイデアを練らなければ……。
関口
人間は誰しも、世間のニュースと無縁ではいられませんからね。そういった意見をどんどん出し合ってアップデートを重ね、最終的にYahoo!ニュースアプリがより多くの人にとって日常の一部になれば理想的です。そのために、あらゆるユーザーが使いやすいよう、より良くニュースを摂取できる体験を追求していきます。
中村
また、ニュースを届ける手前には、コンテンツを提供してくださっている配信各社の記者の方たちもいるわけですから、そういう人たちの思いも大切にしたいです。
飛田
ニュースは社会や生活を変えられるものだと僕は思っているので、Yahoo!ニュースアプリがユーザーの生活を豊かな方向に加速させられるツールになれば最高ですね。
関口
そうですよね、災害情報などは人の命に直接関わることもあるわけですし。
飛田
責任重大だけど、だからこそやりがいがあります。

――使命感とモチベーションを存分に感じさせてくれるお言葉ですね。今後のYahoo!ニュースアプリの発展を楽しみにしています。

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