Inside2018.03.09

20代は野球、30代はサッカー? Yahoo!ニュース トピックスの分析で見えてきた傾向

写真:アフロ

公益性の高いものから、編集部独自の視点でピックアップしたものまで、毎日4000本を超える記事から厳選したものを届けているYahoo!ニュース トピックス。その中には男女で読まれ方に差が出るもの、あるいは世代によって関心度の異なるものなど、アクセスデータをひも解くことで、さまざまな傾向が見えてきます。
Yahoo!ニュース トピックスは、国内・国際・経済・エンタメ・スポーツ・IT・科学・地域の8つのカテゴリに掲出する各8本のトピックスで構成されています。今回は「スポーツ」に絞って、Yahoo!ニュース トピックスのアクセスデータを分析。すると、編集部員たちにとっても予想外の、興味深い世代別の特性が見えてきました。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

連載「Yahoo!ニュースの作り方」第7回
Yahoo!ニュースについて編集プロダクション「ノオト」の皆さんに取材していただきました。今回のテーマは「スポーツ」です。

・連載第1回
 1日4000本の記事と向き合う「Yahoo!ニュース トピックス編集部」のすべて
・連載第2回
 Yahoo!ニュース トピックス「13文字見出し」の極意 難関「コートジボワール」はどう表現?
・連載第3回
 「人×テクノロジー」を日々実践 進化を続けるYahoo!ニュースアプリ
・連載第4回
 衆院選、そのときYahoo!ニュースは――投開票日までの舞台裏
・連載第5回
 500人の専門家の発見と言論が社会を動かす――「Yahoo!ニュース 個人」5年間の軌跡
・連載第6回
 「改善はいつまでも尽きない」  Yahoo!ニュースアプリを育てる人たちの思いとは

PV分析で青春時代に流行したスポーツが見えてくる?

まずご覧いただきたいのは、世代別にまとめた「他の世代に比べ関心の高いスポーツカテゴリのYahoo!ニュース トピックス」の一覧です。これは2017年10月1日~10月31日までのPVを分析してまとめたもの。20代男性と30代男性、それぞれスコア(※後述)が高かった上位10本をピックアップしてみると、興味深い傾向が浮き彫りになりました。

お気づきでしょうか。20代男性のランキングは、すべて野球関連のトピックスであるのに対し、30代男性は10本中9本がサッカーと、競技に偏りがあります。これは世代ごとの流行の違いを如実に表していると言えます。この結果について、Yahoo!ニュース トピックス編集部の山内浩太さんは、次のように話します。

「これは2017年10月に限ったことではなく、どの時期でも似た傾向が出ています。野球でいえば、最高峰の舞台で大谷翔平選手や田中将大選手のように10代のうちから活躍し、さらにはアメリカへ渡り、メディアが連日その動向を伝える。そうした状況から20代の共感を呼んでいるのかもしれません。これが30代になると、小中学生の頃にJリーグ開幕(1993年)を迎えた世代で、テレビの地上波でJリーグを見る環境に囲まれて成長してきた世代。そうしたことが背景にあってか、関連のYahoo!ニュース トピックスがよく読まれるのだと考えられます」

2018年、23歳でメジャー・リーグへ活躍の場を移した大谷選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

かくいう山内さん自身も、現在30代半ば。高校時代にはサッカー日本代表のワールドカップ初出場や中田英寿選手のセリエA入りが世間をにぎわせ、サッカーゲーム「ウイニングイレブン」シリーズが絶大な人気を博した世代だと振り返ります。

「興味深いのは、年齢によって興味の対象が移り変わる傾向はあまり見られず、その世代ならではの流行が見て取れること。たとえば、40代男性のトップ10を見ると、サッカーやK-1のほか、当時のブームをリアルタイムで体験しているプロレスやF1の話題が入ってきます」(山内さん)

1998年、日本代表がW杯初出場を果たした直後、21歳の中田英寿選手はセリエA・ペルージャへ移籍(写真:アフロ)

女性ユーザーならではの傾向とは

なお、ここでまとめているランキングは、単純なアクセス数に基づくものではありません。同じくYahoo!ニュース トピックス編集部で、データ分析を担当する桃井晴康さんは、ランキングの算出法について次のように解説します。

「Yahoo!ニュースではログインユーザーを対象に、年代・性別ごとにどの記事がどれだけ読まれているかというデータを収集しています。ただし、インターネットメディアの特性上、ユーザーの年齢構成のボリュームゾーンには偏りがある。そこで、純粋なアクセス数では集計せず、各世代におけるアクセスの割合を元にデータを補正した、『特徴スコア』という独自の指標で評価を行っています」

実は、こうしたデータ収集はもともと、世代別のユーザーの嗜好(しこう)を探るために始めたものではなかったと桃井さんは言います。

「データを取り始めたのは、スマホが普及し始めた頃のこと。きっかけは、スマホだとパソコンに比べて女性ユーザーのアクセス数が多いという事実に気づいたことでした。そこで、女性ユーザーをもっと意識するため、興味関心を分析してトピックス編集に生かそうと考えたのです」(桃井さん)

つまり、今回のスポーツのYahoo!ニュース トピックス分析から見えてきたこれらの傾向は、編集部としても思わぬ副産物だったわけです。
「Yahoo!ニュース トピックスの読者全体の男女比は、およそ『男性6.5:女性3.5』。ところが、スポーツのに限って言えば、『男性8:女性2』と、男性ユーザーのアクセスが高くなります。そんなスポーツの分野で、女性が興味を持ちそうなトピックスを考えるのは、他のカテゴリに比べても難しいと言えます」(桃井さん)
なお、先ほどの男性と同じ期間で、女性の世代別に関心が高いスポーツのYahoo!ニュース トピックストップ5は以下の通り。

各世代をチェックしていくと、そこに女性ならではの好みの傾向が浮かんできました。フィギュアスケートに高い関心が寄せられている点もその1つですが、競技の枠を越えて高い支持を得ているのは、結婚や出産、あるいは健康関連といったライフイベントにまつわるニュースだったのです。

同じスポーツカテゴリでありながら、男性版のトップ10にはほとんど入ってこない話題ばかり。このようなYahoo!ニュース トピックスのアクセス解析によって、さまざまな傾向をあぶり出し、編集部は今後の編成に生かしていくのです。

2018年の平昌五輪で連覇を果たした羽生選手は、女性からの関心度が高い(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

スポーツを伝えるさまざまな「演出」

では、そもそもスポーツのYahoo!ニュース トピックスは、どのような方針に基づいて編集されているのでしょうか。

トピックス編集部では、ニュースのセレクトに際して、「公共性」と「社会的関心」を大きな2本柱としていることは過去記事でもお伝えした通り。「公共性」とは政治・経済、防災といった、社会に伝えるべき重要度の高いニュースのこと。そして「社会的関心」は、一般的に人々の関心を集めるニュースのことで、スポーツはこちらに相当します

「中でもスポーツカテゴリに求められるのは、『速報性』や『新奇性』、『認知度』の3点です。ファン人口の多い野球やサッカーの話題が増える傾向はありますが、各競技における『シーズン』は逃さないよう気をつけています」(山内さん)

スポーツには大規模なイベントが付き物。たとえば高校野球では、春のセンバツ出場校が発表された1月26日、スポーツ専門サイト「スポーツナビ」(ヤフーのグループ会社であるワイズ・スポーツ運営)上のページを使い、【速報 センバツ出場校を発表】という見出しでYahoo!ニュース トピックスを掲出しました。

2017年春のセンバツを制した大阪桐蔭。高校野球のコンテンツは、Yahoo!ニュース トピックスでも高い注目を集めている(写真:岡沢克郎/アフロ)

「これは実際の発表に沿って、順番に各地の出場校をリアルタイムで伝えていくコンテンツでした。一方、地方大会から盛り上がる夏は、各地区の出場校が決まった段階でその都道府県へYahoo!ニュースアプリを通して記事をプッシュ配信しています」(山内さん)

単にニュースを伝えるだけでなく、ファンの皆さんの関心をさらに喚起するような工夫を今後も続けていきたいと言う山内さん。

先の平昌冬季五輪の開催期間には、「スポーツナビ」上に競技のテキスト速報や動画コンテンツを織り交ぜた特集ページが開設されました。こうした取り組みとYahoo!ニュース トピックス編集部はタッグを組み、2020年の東京夏季五輪はもちろん、今年ロシアで開催されるサッカーW杯など、さまざまな大会に臨みます。

スポーツナビ内に開設された平昌五輪特集ページ。五輪やサッカーW杯などビッグイベント時にこうした企画も通してスポーツを伝えている

「2020年には東京五輪を控えているので、私たちとしてもスポーツの伝え方について、引き続きさまざまなアイデアを練っていきたいですね。数多くのスポーツの記事を配信してくださる媒体はもちろん、『スポーツナビ』というメディアが仲間にいることは、スポーツカテゴリにおけるYahoo!ニュースの強みです」(山内さん)

こうした施策を支えているものの一つが、アクセスデータから見えてくるユーザー傾向。今後もYahoo!ニュースでは、ユーザーのニーズを敏感に察知し、Yahoo!ニュース トピックスの編成をはじめとする記事の届け方を絶えず試行錯誤していきます。

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