国の税収が過去最高になったことへの意外感
国の2018年度の税収が60.5兆円弱に達し、バブル期の1990年度に記録した過去最高の60.1兆円を上回ることが確実になった(26日付日経新聞)。
財務省は昨年12月時点で59.9兆円を見込んでいたが、この時よりもさらに0.5兆円上積みし、過去最高だった1990年度の60.1兆円を上回る見通しになった。これは所得税が、世界経済が堅調に推移したことで株式の配当収入が増え、補正時に見込んだ19.5兆円よりもさらに4千億円ほど上振れする見通しとなったことなどが影響した模様(26日付朝日新聞)
バブル期に比べて、現在はそれほど景気の良さは実感できないかと思われるので、税収が過去最高と聞いて、意外感を持たれた方も多いかもしれない。これについては下記の財務省のサイトの資料をみるとその理由がわかる。
一般会計税収計をみると1990年のバブル終焉の年に60.1兆円をピークに2009年には38.7兆円まで落ち込んでいる。この間、所得税がじりじりと減少した。法人税は一時的にITバブルや中国など新興国経済の拡大で回復する場面もあった。しかし、2008年のリーマン・ショックに代表される世界的な金融経済危機を迎え、法人税も大きく減少した。
しかし、法人税も所得税も2009年あたりが目先の底となり回復基調となっていた。このグラフを見る限り、2010年の欧州の信用不安による国内税収への悪影響は軽微であったように思われる。そこから所得税、法人税ともに回復基調となるが、そのペースはバブル期にまで戻ってきているわけではない。
もうひとつの税収となっている消費増税が2014年に実施されており、その分が嵩上げされていることもあり、過去最高の税収となっていた。
とはいうものの所得税、法人税ともに回復基調となっていることは確かである。これは大きな危機を乗り越えたことによる世界的な景気の回復が大きく寄与している。日銀の異次元緩和がもたらしたものではない(一時的に円高修正と株の反発が寄与したことは確かだが)。国債発行額もここにきて抑制はされていることは確かである。それでも財政再建について現政権は慎重となっていると言わざるを得ない。
これだけ税収があるのならば、さらなる消費増税は必要ないのではとの意見もツイッターなどでみられた。しかし消費税の目的は「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障費並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」とある。年金2000万円問題に社会的な関心が非常に高まったようであるが、やはりその年金問題を含めて、我々の将来を考える上でも、消費増税は避けては通れないものとも言えるのではなかろうかとも思う。