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自転車による交通事故は交通事故全体のどれぐらいの割合で起きているのか(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

自転車の利用者が増えるに連れ、自転車が関与する交通事故への注目も集まっている。自転車による交通事故は交通事故全体のうちどれぐらいの割合なのだろうか。警察庁が2020年2月に発表した報告書「令和元年中の交通事故の発生状況」から確認する。

今報告書によれば、2019年の日本国内における交通事故全体の発生件数は38万1237件(前年比-8.8%)とのこと。

↑ 交通事故発生件数(件)
↑ 交通事故発生件数(件)

この交通事故発生件数と、公開データ内の「自転車交通事故件数(法令違反のあり無しを問わず)」を合わせ、「自転車による事故が交通事故全体においてどのような位置づけ・比率にあるか」を示したのが次のグラフ。事故件数は自転車が第1当事者(最初に交通事故に関与した車両の該当者のうち、過失の重い側。同程度の時には負傷程度が軽い側)・第2当事者(最初に交通事故に関与した車両該当者のうち、第1当事者以外の人)となった件数。さらに自転車同士の場合は1件として数えている。

↑ 交通事故発生件数と自転車交通事故発生件数・比率
↑ 交通事故発生件数と自転車交通事故発生件数・比率

交通事故発生件数全体数同様に、自転車による事故件数も減少を続けている。しかし自動車ほど啓蒙活動や安全対策が徹底していないこと、利用ハードルが低いこと(運転免許は不要で、子供でも技術を取得できれば運転できる)、そして自転車の高リスク利用者(若年層、高齢層)が増加したことなど複数の要因から、減少率はゆるやかなレベルに留まっていた。

結果として交通事故全体に占める、自転車交通事故の件数比率は増加の傾向にあった。しかし2008~2009年の21.2%をピークとし、啓蒙活動などが功を奏しだしたのか、それ以降は減少傾向に転じた。2012年では6年ぶりに交通事故全体に占める比率が2割を切り、以降さらに低下を継続中だった。しかしながら件数比率は2016年を底として、2017年以降は再び前年比で増加してしまっている。件数は減っているので、減少度合いが交通事故全体と比べて少なかったことになる。

この流れは交通事故全体ではなく死者数に限定した場合でも、大体同じような状況を示している。おおよそ横ばいが継続しているのは幸いだが。

↑ 交通事故死者数と自転車乗用中死者数・比率
↑ 交通事故死者数と自転車乗用中死者数・比率
↑ 自転車乗用中の死者数比率(年齢階層別)
↑ 自転車乗用中の死者数比率(年齢階層別)

高齢者の死者数比率が高いのも特徴。直近では65歳以上で2/3近く、60歳以上ならば7割を超えており、さらに増加の兆しがある点にも留意が求められる。

携帯電話関連の自転車事故については、少なくとも今資料では特に統計はとられていない(言及は見られない。「令和元年における交通死亡事故の特徴等について」内で自転車だけでなく自動車なども含めた道交法違反の取り締り状況統計として掲載されているデータの中で、違反種類の「携帯電話使用など」の項目にて71万6820件が該当し、道交法違反による告知・送致総件数の12.6%に達するとの記述があるのみ)。

自動車やバイクと異なり、自転車は運転の際に免許も必要とせず、事故の際の当事者の保護装置(シートベルトやエアバッグ)も無く、利用者の多くが十分な保険に入っていない。自転車に乗る際にヘルメットはともかく、バイクに乗る時のような専用のライダースーツを着たり肘・ひざ当てを付ける人は(ロードバイクのような専用の自転車を駆る人以外は)滅多にいない。

自転車で事故が起きた際のリスクは、自転車の方が自動車よりも高いとする考え方もある。もちろん「運転をするな」と禁じるわけでは無いが、運転の際には「走りながらの携帯電話利用」などもってのほか。くれぐれも安全運転を心がけてほしい。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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