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「献血したことありますか?」――コロナ禍で安定供給が危ぶまれる「献血」について、みんなはどう考えた?

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コロナ禍による外出控えや学校・企業での集団献血の中止などの影響で、献血者数の減少が懸念されている。血液は、いまの医療技術では人工的につくれず、長期保存もできない。献血について、Yahoo!ニュースがユーザーにコメント欄で意見を求めたところ、4700件を超える声が寄せられた。「クラスメイトの病気がきっかけで献血をした」という経験談や「妻が出産時に輸血が必要に。献血してくださった方々のおかげでいま息子と妻は元気でいます」という感謝の声がある一方で、協力はしたいものの「針や血を見るのが怖い」「密になりそう」など、不安の声もあがっていた。安定した血液供給を続けていくにはどうしたらいいのか、課題を探る。(8月21〜23日のコメント、計4739件をもとに構成)(監修:医師・医療ジャーナリスト・森田豊、デザイン&イラスト:広垣友里絵/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

あなたは献血したことありますか?

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学校や企業での集団献血をきっかけとするほか、「妻が出産する際に手術が必要になり、輸血で助かったお礼に献血をするようになった」「友人が交通事故に遭い、献血の大切さを意識するようになった」など、身内や知り合いが輸血で助かった経験から、献血への意識が高まるようだ。課題としては、「子連れでも気軽に寄れるように託児スペースが欲しい」「献血ルームが遠く、なかなかそのためだけには行けない」という問題が。「身近なボランティアだと思ってやっているが、『なんでそこまで(体を張って)やるの』と言われることがある」と、周囲から理解を得られないなどの意見もあった。また、これまで6回の献血経験があるという人は、「最初はなかなか勇気を出せなかったけれど、1回やってみたらスタッフは親切で飲み物やお菓子もあって、Wi-Fiも飛んでいるし快適ですよ」とコメント。他のコメントからも献血は1回目のハードルが高く、リピーターが多いことがうかがえた。

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「注射の針が怖くてどうしてもダメ」「血を見るのが苦手」「貧血になって倒れたりしそう」など、不安や恐怖心からできないといった声が多い。一方で「体重が基準に足らなくてできない。細身だけど小柄なだけだから、体重ではなくてBMI値を基準にしてほしい」「薬を飲んでいるためできない」「海外渡航歴ではじかれる」と、献血はしたいけれどできずに申し訳ないと思ってしまうという声も散見された。一方で、「血液の比重が足らず、献血はできませんが、医療従事者として働き、そういうかたちで役に立てるよう努めています」と、協力のかたちは献血ひとつだけではなく、寄付やボランティアなど多様だという意見も。

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医療従事者からは、「研修医のときに外科と血液内科で輸血のありがたさを経験できました。今は血液製剤を使う立場で、無駄にしないように使わせていただいています」「看護師です。血液内科で働いていた頃、毎日のように業務で輸血をしていました。血液がいかに大切かを感じ、献血にも行くようになりました」と採血された血液は大切に使われていることがわかる。また輸血を受けた人からは「抗がん剤治療中、輸血で大変お世話になりました。コロナ禍でも献血に行ってくださっている方々のおかげで無事に治療ができたので本当に献血をされている方々に感謝しています」など感謝の声があがっている。

「献血の現状」若年層の献血者数が減少

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出典:日本赤十字社

全国の献血者数の推移を見ると、全体では2019年度が約493万人で2020年度が約504万人と102%の微増だが、10〜30代の若年層に絞ると過去10年間で37%減少している。ちなみに1日に輸血用血液が必要な人はおよそ3000人で、14000人の献血者数が必要となる。このまま少子高齢化社会が進んでいくと、2027年には、年間85万人分の血液が足りなくなるといわれている。

献血をするための基準は?

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教えて!「献血」みんなのギモン

コメント欄で多かった疑問について、医師・医療ジャーナリストの森田豊さんが解説します。

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Q. 献血しようと思ったのに断られた。どうして?
A. 健康な方であれば、献血による体への影響はほとんどありませんが、体調を崩しているときに献血をすると、健康を損ねることもあります。輸血を受ける患者さんの安全性はもちろん、献血者の健康を守るために、さまざまな基準が設けられています。服用している薬がある方や歯科治療をしている場合、ピアス、入れ墨を入れた場合、海外渡航歴など、それぞれ条件があります。詳細は、日本赤十字社のホームページで確認しましょう。

Q. 献血で貧血にはならない?
A. 献血の基準は、献血者の健康と安全を第一に考えて決められたもので、貧血にはなりません。しかし、緊張の強い場合やその日の体調によっては、まれに気分不良やめまいなど副作用が起きることもあります。その際は、通常であれば頭を低くして30分程度安静にすることで回復しますが、もしそのような症状を感じた場合は、がまんや遠慮をせずに、すぐスタッフに知らせましょう。ちなみに、循環血液量は、3~4時間以内に元に戻ります。構成する血液成分の中では、赤血球の回復がもっとも遅く、約3~4週間かかります。また献血前に、十分な睡眠、適度な食事、水分補給を心がけることも大切です。

Q. 針が太くて痛そう......
A. インフルエンザなどの注射に比べて確かに針は太いです。痛点が少ないとされるひじの内側の血管を使い、痛みを感じるのは皮膚の中に刺さるときです。ただ、薬液を皮下や筋肉に注射するわけではなく、血液を抜くだけですので、その際の痛みはありません。

Q. 採血した血液は何に使われるの?
A. 「輸血」というと不慮の事故などで大きなケガをしたときに使うものと思われがちですが、実は輸血用血液製剤(赤血球・血漿・血小板)として80%が「がん」や「白血病」など病気の治療に使われます。そのほか、「iPS細胞を用いた血小板製剤の開発」や「ドローンで血液を運ぶ研究」など、医療の発展にも役立てられています。

Q. 新型コロナウイルスのワクチン接種をしても献血はできる?
A. ワクチン(RNA、mRNAワクチンを含む)を接種された方は、1回目・2回目いずれの場合も接種後48時間を経過していれば献血できます。なお、現在、承認されているRNAワクチンは、ファイザー社と武田/モデルナ社です。
また、厚労省の部会は、新型コロナウイルスに感染した人も、症状がなくなってから4週間たてば、献血できる方針を決めました(2021年7月27日)。

献血のメリットと注意点

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健康な人が、自ら無償で血液を提供することで成り立っている献血。社会貢献になることはもちろん、医療技術の発展にも役立ち、善意は回り回って自分や大切にしている人の元にも返ってくる。血液検査のサービス通知で健康管理ができ、献血会場では、リラックスして臨んでもらうために雑誌・DVDの貸し出し、軽食や飲料の無料サービス、ハンドマッサージやネイルカラー、占いなど各種イベントもあり、献血リピーターの中にはそれを楽しみにしているという声も多くあった。第一に献血前後の自身の体調管理には、くれぐれも注意をしたい。また、日本赤十字社では、輸血を受ける患者さんのため、エイズなどの"検査目的での献血は絶対にしない"など「責任ある献血」を求めている。

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コロナ禍においてこれからも安定した血液供給を続けるためには(森田豊)

新型コロナウイルスの感染急拡大で、首都圏を中心に献血協力者数の減少が懸念されていますが、献血は「不要不急」ではありません。献血会場では、感染対策を徹底して行っていますので、安心してほしいと思います(参照:献血会場における新型コロナウイルス対策について/PDFが開きます)。

課題としては、まず「正しく知る」ことだと思います。献血というと、どうしても「針が太くて痛そう」「採血で貧血になるのでは?」といった不安があるのが事実。国や日本赤十字社、自治体などは、医療・献血に関する正しい情報をもっと広めるように取り組むべきでしょう。「献血は初めて」という第一関門をクリアすれば、ハードルが下がることは、リピーターが多いという調査結果からも明らかです(2018年度から2019年度に献血回数において年1回の献血者が減少し、複数回の比率が男女とも増加しています。日本赤十字社では、複数回献血を推進しています)。献血はあくまで自発的な善意であり、強要やしない人を批判するなどのハラスメントがあってはいけませんが、献血された方はSNSなどで体験をシェアし、多くの人々にとってより身近なものになっていくことを願っています。

記事作成の元となった記事はこちら。【みんなで考えよう】きょうは「献血の日」。あなたは献血をしたことがありますか?

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