機長の権限行使はこの市議が主張するような「憲法違反」にはなりません。たしかに、マスク着用の法的義務はなく、任意です。しかし、そのことは「マスク着用を拒否する自由が無条件に守られる」ことを意味するわけではありません。条件つきサービス提供を利用したいなら、その条件に従うか、嫌ならそのサービスを使わないという選択をするかが法律の原則だからです。 飛行機でのマスク着用は「感染予防ガイドライン」に明記され、今回の航空会社もそれに従って「健康上の理由等、特別な理由がない限り、マスクの着用を拒否される場合は、ご搭乗をお断りすることがございます」と事前告知しています。「特別な理由」があるなら事前に相談して、承諾を得る必要があるでしょう。 機長には「安全阻害行為」があった場合に飛行機から降ろさせられる強い権限があり(航空法第73条の4)、航空機内の秩序を乱したり、規律に違反する行為も対象になります。
コメンテータープロフィール
慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。
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