刑法の未遂犯は、被害者の法的に保護されるべき利益(法益といいます)に対する危険を生じさせたことを処罰の理由とするものです。窃盗罪の場合、実際に財産を奪ってしまったわけではないが、それが奪われる危険があると認められれれば、未遂犯として処罰の対象となるわけです。 空き巣など典型的な窃盗罪では、犯人が被害者宅に立ち入り、室内を物色するなどした時点で、未遂犯としての危険性が認められることになります。これに対して、本件のような特殊詐欺類似の事例では、既に共犯者の電話によって被害者に対する働きかけが始まっており、その財産が奪われる危険性はかなり高まっていたといえるでしょう。したがって、受け取り役が被害者宅に接近した時点で、窃盗未遂として処罰されるだけの危険性が認められると判断されたわけです。 最高裁として初めての判断だということですが、警察がより早期に逮捕できるなど、影響は大きいと思われます。
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コメンテータープロフィール
旅行会社勤務を経て29歳で立命館大学に入学し、3年生の時に司法試験に合格。卒業後は京都大学大学院法学研究科に進み、刑事法を専攻。2005年に近畿大学法学部専任講師となり、現在は教授。2011年から2012年にかけて、ドイツ・アウクスブルク大学客員教授を務める。専門は刑事法全般(特に刑事訴訟法)。著書は、『刑事訴訟法』、『刑事手続における審判対象』、『刑事弁護の理論』(全て単著)。法学博士。趣味は洋画鑑賞、水泳、見る将(大山・中原時代からの筋金入り)。
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