補足児童養護施設に入所していた当事者の「声」は貴重である。幼少期に保護者(親)と離れ施設入所した経緯、施設での生活の様子、そして施設退所時の話は、体験した当事者だからこそ感じたその時々の気持ちや実態である。このことを通して私たちは施設への関心や認識を深めることができる。 なおここで留意しなければならないことは、これは当時の本人の体験であり、すべての施設に当てはまることではなく、当時から現在に至るまで、児童養護施設は子どもの最善の利益を図る環境整備や養育・支援の取り組みをされてきている。しかしながら当事者の「声」にあるように、施設での生活が集団生活と個々の生活、衣食住や居室環境、学習・教育機会、退所後の生活をどう進めていくか等課題がある。当事者の「声」を聴き、施設、市民、行政で進めていく必要がある。
コメンテータープロフィール
新潟医療福祉大学教授・東京都立大学名誉教授。貧困・低所得問題を中心として研究・社会的活動を行う。専門は社会保障論、社会福祉論。日本社会事業大学・社会事業学校教員、東京都立大学教授、明治大学教授を経て2024年4月より現職。著書として『生活困窮者自立支援-支援の考え方・制度解説・支援方法』(編 著、中央法規)、『貧困問題とソ ーシャルワーク』(共編、有斐閣)、『生活保護における社会福祉実践』(単著、全社協)等。社会的活動として社会保障審議会委員(厚労省)、神奈川県子ども・若者施策審議会委員、東京都社会福祉協議会理事等