ニューヨーク市など人種・民族的多様性の高い地域では、犯罪行為をしない限り、わざわざ人々に対して合法移民か不法移民かを確認することなどしません(できません)。不法移民に批判的な人々はそれら地域を聖域都市と呼んで批判しています。テキサスのアボット知事やフロリダのデサンティス知事は、移民・不法移民に批判的な支持者を念頭において移民をニューヨーク市などに移送していますが、それらの都市としてもその受け入れはさすがに想定していません。予期せぬ移民増に対応するには通常予算では不十分なので、移民支援の費用を確保するために緊急事態宣言を出したということです。保守的な州が「移民が治安を悪化させている」として移民を抑圧すべく緊急事態宣言を出すこともありますが、それとは全く異質な措置です。
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コメンテータープロフィール
専門は比較政治・アメリカ政治。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。主要著書に、『〈犯罪大国アメリカ〉のいま:分断する社会と銃・薬物・移民』(弘文堂、2021年)、『格差と分断のアメリカ』(東京堂出版、2020年)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会、2018年)、『アメリカ政治講義』(ちくま新書、2018年)、『移民大国アメリカ』(ちくま新書、2016年)、『アメリカ型福祉国家と都市政治―ニューヨーク市におけるアーバン・リベラリズムの展開』(東京大学出版会、2008年)などがある。
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