解説聴衆には死者がでたとも伝えられる。発砲が誰による、どのような動機のよるものかわかっていないが、昨今のアメリカでは、党派対立の高まりとともに、政治的な暴力を許容する傾向が一貫して高まってきた。その傾向は、右派・左派、共和党支持者・民主党支持者ともにみられるものだ。今回の大統領選と同じ顔合わせとなった2020年大統領選前の調査では、共和党支持者も、民主党支持者も、4割超の人が「政治的暴力が許容されることがありうる」と回答していた。これこそがアメリカ民主主義の危機を端的に示している。 SNSでは共和党・民主党の政治家双方から政治的暴力は許容され得ないという声明が相次いでおり、イーロン・マスク氏のように、バイデン氏とトランプ氏、どちらを支持するかの動向が注目されてきた人物で、トランプ氏への支持を明確に表明する人も出てきている。この事件を経て、こうした動きは加速するかもしれない。
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コメンテータープロフィール
アメリカ政治・外交、国際関係論、平和研究。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得(学術)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米国ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学研究員、関西外国語大学助教、高崎経済大学経済学部国際学科准教授を経て2022年より現職。著書に『戦争違法化運動の時代-「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』(名古屋大学出版会、2014年)共訳・解説に『リベラリズムー失われた歴史と現在』(ヘレナ・ローゼンブラット著、青土社)。