威力業務妨害罪とは、威力を用いて人の業務を妨害すること(刑法234条)で、法定刑が3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。契約者の個人情報を公開することやその他の職員への言動でNHKの業務を妨害したことになるのかどうかが争点です。今回の東京地裁判決は、懲役2年6ヶ月で執行猶予4年ですので、脅迫罪(刑法222条)は法定刑が2年以下の懲役ですので、法定刑が3年以下の懲役の「威力業務妨害罪」を認めた様です。「契約者の個人情報の公開」と聞くと、個人情報保護法の違反ではないかと一見すると思いますが、個人情報保護法は基本的に個人情報取扱事業者に対する行政取締法規ですのでこのケースでは原則適用されません。もちろん、個人情報を公開された個人は個人情報を公開した人に対して、一定の要件を満たす場合には、民事上の不法行為(709条)で(精神的)損害の賠償を請求することが出来ます。
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コメンテータープロフィール
早稲田大学、琉球大学法科大学院、関西学院大学商学部・法学部、同志社大学商学部の各講師。最先端法務研究会座長。早大法卒、ジョージタウン大ロースクール法学修士、General Motors Institute優等修了、ハーバードロースクール交渉戦略プログラム修了。いすゞ自動車法務部課長、アップルコンピュータ、クレディスイス生命保険各法務部長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、大宮法科大学院大学教授、一橋大学法科大学院講師等を歴任。専門は法律・知的財産・IT・海外法務・M&A・人工知能・自動運転・創薬等。著書は「初めての人のための契約書の実務」等77冊を数える。