解説この公聴会は、倫理的行為や汚職を追求するブルーリボン委員会で実施されたもので、ドゥテルテ前大統領が出席するのはこの日が初めてでした。「法的責任はすべて私が取る」などの発言は、一見、勇敢で英雄的に見えるかもしれませんが、彼が大統領になる前から繰り返してきたフレーズです。そもそも「法的責任」が何かすらわかりませんし、彼に限らずフィリピンの政治家らは、抒情的で英雄的な言葉を巧みに使いますから、フィリピンの人々にとっては、さほど心を動かされるわけでもないでしょう。国民の関心は、過去の大統領の責任を問うことよりも、物価高や失業対策、来年5月に迫った選挙に向いています。日本の方には、こうした発言のみを切り取ってドゥテルテを称賛するのではなく、フィリピン社会の全体的な文脈を考えていただければと思います。
コメンテータープロフィール
神戸大学大学院国際協力研究科修了(政治学博士)。フィリピン大学研究員、在フィリピン日本国大使館専門調査員、在タイ日本国大使館専門調査員、衆議院議員秘書などを経て現職。専門は東南アジア政治、国際協力論。防衛大学校グローバルセキュリティセンター共同研究員。技能公募予備自衛官(英語)。近著に、Pathways for Irregular Forces in Southeast Asia: Mitigating Violence with Non-State Armed Groups (Routledge, 2022年)、『アジアの安全保障2021-2022』(朝雲新聞社2021年、共著)など。
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