本件は、山岸忍前社長を起訴するために、その部下を検事が罵倒し無理な取り調べを行って検察に都合のよい供述を取った、というもので、郵便不正事件で村木厚子さんが逮捕・起訴された件と同じです。あれだけの批判を受け、取り調べの録音録画が導入されても、検察があまり変わっていない、ということが明らかになってしまいました。 その一因は、検察官の開示証拠の「目的外使用禁止」という条項が刑事訴訟法に入れられ、録音録画を記録したDVDの使途が極めて限定されるため、いかにひどい取り調べが行われているか、国民の前に明らかされない、という点にあります。 また、録音録画を実施するだけでは、違法な取り調べは防げない、ということを、本件は示しています。 弁護人の取り調べへの立ち会い、公益目的であればDVDなどの開示証拠を使用できるようにするなど、さらなる制度改革に向けた議論が急務です。
コメンテータープロフィール
神奈川新聞記者を経てフリーランス。司法、政治、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々です。2020年4月から神奈川大学国際日本学部の特任教授を務め、カルト問題やメディア論を教えています。
