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ノンフィクション大賞2019 大賞作品発表

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ブレイディみかこ/新潮社

優等生の「ぼく」が通い始めたのは、人種も貧富もごちゃまぜのイカした「元・底辺中学校」だった。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。

受賞の言葉/ブレイディみかこさん

この本は、事件の真相を暴いたり、危険な場所に潜入したりするノンフィクションではありません。海外生活エッセイ、育児エッセイとして手に取る方も多いでしょう。しかし、「いま世界に何が起きているか」ということは、地べたの風景にこそ浸み出しています。「ミクロな生活とマクロな政治は直結している。その回路を繋ぎ直せ」というわたしのテーマは、ストレートな政治・社会時評を書いていた頃から少しも変わるものではありません。
本作では間口をオープンにし、中高生から中高年まで読んでいただけるよう執筆上の冒険をしてみました。本のプロである書店員さんたちに認めていただけたのは、何よりの光栄です。ありがとうございました。

プロフィール
保育士・ライター・コラムニスト。1996年から英国ブライトン在住。英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年に新潮ドキュメント賞を受賞し、大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞候補となった『子どもたちの階級闘争----ブロークン・ブリテンの無料託児所から』など著書多数。

書店員の声

  • ジュンク堂書店 新潟店小松薫さん
    現在深刻になっている人種、性別、収入格差などの社会問題を子どもの視点からうまく捉えている。
    そのためか内容が重くなり過ぎず、比較的気軽に手に取って読みやすい。
    著者の家庭のようにこうした問題について徹底的に話し合える環境がもっと必要だ。
  • TSUTAYA 堺南店大野舞さん
    「誰かの靴を履いてみること」この本は、凝縮するときっとそこに行き着くのだと思う。
    つまりは、他人の立場に立って物事を考えてみる、という意味なのであるが、実際やろうとしてもなかなか難しいものだ。
    でも、この本の著者と息子は、自身が差別されようとも、他人を思いやる心を忘れず、強く強く生きる。
    息子である「僕」はいつも、自分で誰かの靴を履くことを厭わない。どんな理不尽な目に遭おうとも。
    なんて、かっこいいんだろう。
  • 宮脇書店 本店藤村結香さん
    恥ずかしくなるぐらいに、学ぶべきことが多い一冊でした!この本をいつでも読める色々な場所に置いて、出来る限り多くの子どもたちに読んでほしいです。
    もちろん大人たちにも、読んだ子どもたちと沢山お話が出来るように読んでもらいたいです。日々成長していく子どもたちに負けちゃあ"クール"じゃないですものね。
    こんなに「読んでほしい!広めたい、この認識を!」と感じる親子の日常はなかなかありません。
  • マルサン書店 本部小川誠一さん
    「ただただオドロキ! 息子さん、私よりも深く深く考え抜いてる。」
    イギリスでの貧富の格差についてはニュースなどで知っているはずだったが、ぜんぜん知らないと同じだった。世界はこれからもどんどん平和になっていくだろう。
    だがこの格差やそして差別はこれからも私たちにつきまとう。多感な少年時代をみずみずしく描いた青春小説でもあり、現代イギリスの抱える問題を炙り出した社会小説。なにより随所にちりばめられたユーモアがいい!
  • 石井書店竹下さおりさん
    重いテーマなのに、なぜだか前向きな気持ちになれて希望が湧いてくる、不思議な本。
    イギリスの貧困などの社会問題や、日本人の差別意識など、世にはびこる深くて暗い問題を、肝っ玉かあちゃんとナイス息子の登場で、軽く明るいタッチで読ませてくれる。人間の本質的な在り方に思いを馳せることができるので、中高生にも是非読んでほしい1冊。
    息子くんのその後も続編で知りたいけど、本人は嫌だろうなあ。
  • 大盛堂書店山本亮さん
    子どもの目線から改めて教えられる生きる上での意識。肌の色が違う、過ごした環境が違う、そして考え方が違う。
    その溝を埋めるため、小さな棘を抜くように違いを確認しながら少しづつ前に進んでいく。
    自然体な気づきを与えてくれる新たにこの世界に必要な一冊ではないだろうか。

読者の声

情報提供元:ブクログ

  • 日本人として日本で暮らす日常と、本書で描かれる日常は随分違うものです。にも関わらず、とても共感する場面が多いのは表面的な部分だけでなく、人間という生き物のもっと根っこの部分に触れているからだと思います。

    1番心を掴まれたのは、著書と息子が息子の友人であるティムにリサイクルされた制服を渡す場面でした。「良かれと思って相手に向けた善意が、逆に相手を傷つけてしまうかも知れない」そんな思いに囚われて掛けるべき言葉を探してしまう事は誰にでもある事でしょう。

    「友だちだから。君は僕の友だちだからだよ。」

    とんでもなく複雑な状況だからこそ、こんなにシンプルで屈託のない言葉が人の心を動かすんですね。
    threetailsさん
  • 内容としては「イギリスでの中学生子育て日記」なんだろうけど、いま世の中で起きている様々な問題について考えさせてられる本でした。社会の分断はなぜ生まれ、広がり、再生産されるのか、とか。その中で人はどう振る舞うのか、どう振る舞うべきなのかとか。

    ちなみにこの本に書かれていることは、他人事ではありません。工場への出稼ぎや農業実習生などで海外からやってきた人が多く、一方で地域経済全体としては停滞し、所得の低い若者が増えつつり、静かに荒廃が進む北関東あたりでは、この本で描かれているのと近い社会がもう到来しつつあるのではないかと思いました。

    それにしても。聡明で、視野が広くて、自分がした体験を自分なりに考え、何よりも友達に優しい、作者の息子さん(ほぼ聖人)のような子には、どうすれば育つんだろう?
    ぐーたらこさん
  • 差別、いじめ、貧富の差、日本にもある問題。多様性が産む問題はいくらでも挙げられて、移民排斥の流れはその問題への不安からくることは想像に難くない。

    ただ、一方で。この、中立的にしなやかに、他者や自己を受け容れている、この子は、日本ではこのように育ったのだろうかと疑問に思う。

    問題がありながらも、足元一歩一歩課題を解決しよううとしている大人の背中を見ながら、自分自身も日々葛藤したり悩んだり折り合いをつけながら生きているからこそ、こんなチャーミングな子に育ったのだとも思う。

    娘が生きていく日本は、きっと今まで以上に多様な日本になる。それは、しっかり大人がサポートし、大人自身が背中で、問題に対する姿勢を見せさえすれば、ギフトになりうるのだと思う。
    さなえさん

ノミネート作品発表

『安楽死を遂げた日本人』宮下洋一/小学館
『吃音:伝えきれないもどかしさ』近藤雄生/新潮社
『牙:アフリカゾウの「密輸組織」を追って』三浦英之/小学館
『ストーカーとの七〇〇日戦争』内澤旬子/文藝春秋
『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』中村淳彦/東洋経済新報社
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ/新潮社
  • 安楽死を遂げた日本人

    宮下洋一/小学館

    安楽死を遂げた日本人

    出版社からのコメント
    ある日、筆者に一通のメールが届く。〈寝たきりになる前に自分の人生を閉じることを願います〉。送り主は神経の難病を患う50歳女性。筆者が過去取材したスイスの安楽死団体への入会を望む。昨年9月、実際に彼女に面会すると、「安楽死は私の最後の希望の光」と言われた。一方で筆者は思う。あの笑顔と知性があれば絶望から抜け出せるはず――。患者、家族、筆者の葛藤をありのままに描き、日本人の死生観を揺さぶるドキュメント。

  • 吃音 伝えられないもどかしさ

    近藤雄生/新潮社

    吃音 伝えられないもどかしさ

    出版社からのコメント
    <日本に100万人もいるのに、彼らを孤独に追いやる「どもる」ことの軋轢とは。>頭の中に伝えたい言葉ははっきりとあるのに、相手に伝える前に詰まってしまう----それが吃音です。店での注文や電話の着信に怯え、伝達コミュニケーションがうまくいかないことで、離職、家庭の危機、時に自殺にまで追い込まれることさえある......自らも悩んだ著者が、丹念に当事者たちの現実に迫るノンフィクションです。

  • 牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って

    三浦英之/小学館

    牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って

    出版社からのコメント
    アフリカで、年間3万頭以上のゾウが、牙を抉り取られて虐殺されている。密猟者の目的は「象牙」だ。元アフリカ特派員の筆者は、国際密猟組織の中枢への取材を始める。密猟で動いたカネが過激派テロリストの資金源になっている実態に迫り、背後に蠢く中国の巨大な影を見つける。そして問題は、象牙の印鑑を重宝する私たち日本人へと繋がっていく。虐殺の「真犯人」とは誰なのか――。第25回「小学館ノンフィクション大賞」受賞作。

  • ストーカーとの七〇〇日戦争

    内澤旬子/文藝春秋

    ストーカーとの七〇〇日戦争

    出版社からのコメント
    「週刊文春」連載時から大反響を呼んだ、筆者自身のストーカー被害をめぐるリアルドキュメント。ネットで知り合った男性との交際から8ヶ月、別れ話を機に恋人はストーカーに豹変します。執拗なメール、ネットでの誹謗中傷......悪夢の神経消耗戦が始まります。警察対応の現実から、弁護士とのやりとり、示談交渉の落とし穴まで、知られざる被害者側の実態を記し、ストーカーの医学的治療の必要性を問いた迫真のノンフィクションです。

  • 東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか

    中村淳彦/東洋経済新報社

    東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか

    出版社からのコメント
    普通を求めて風俗で働く女子大生、理不尽なパワハラに耐える派遣OL、離婚を機に転落した高学歴シングルマザー...、様々な貧困女性の声なき声を、3年間にわたり聞き続けた。今、東京だけでなく、地方でも、貧困に喘ぐ声が広がっている。解決策は簡単には見つからない。でも、彼女たちの声を聞くことはできる。本書を、貧困を自分事として考えるキッカケにしてほしい。著者、編集者、そして話をしてくれた彼女たちも、そう願っている。

  • ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

    ブレイディみかこ/新潮社

    ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

    出版社からのコメント
    <大人の凝り固まった常識を、子どもたちは軽く飛び越えていく>優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学校は、毎日が事件の連続。人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり......。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていきます。落涙必至の等身大ノンフィクションです。

おすすめノンフィクション本

あなたの知らないリアルをもっと。読書好きで知られる著名人のみなさまに、
おすすめのノンフィクション本を教えていただきました。

林雄司
山田ルイ53世
芸人/作家
お笑いコンビ「髭男爵」のツッコミ担当。兵庫県生まれ。地元の名門に進学するもひきこもりになる。のちに芸人の道へ。主な著書に『一発屋芸人列伝』『ヒキコモリ漂流記 完全版』『一発屋芸人の不本意な日常』。TwitterのIDは@higedanshakuY53
全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方
全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方
戸部田誠/文藝春秋
人気ライター、「てれびのスキマ」こと、戸部田誠。極度の"テレビっ子"を自認する筆者は、これまでテレビ番組を徹底的に視聴し、関連資料を読み漁ることで、数々の秀逸なコラムや書籍を世に送り出してきた。そんな彼が、(インタビュー記事を除いて)初めて取材対象の元を自ら訪れ、書き上げたのが本作である。"ノンフィクション"だが、その読後感は池井戸潤作品のよう......ぜひ、日曜劇場(TBS)枠でドラマ化を希望したい。
徳力基彦
徳力基彦
ブロガー
アジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。現在はアンバサダープログラムのアンバサダーとして活動する一方、並行してピースオブケイクnoteプロデューサーとしても活動中。TwitterのIDは@tokuriki
つけびの村 噂が5人を殺したのか?
つけびの村 噂が5人を殺したのか?
高橋ユキ/晶文社
2013年7月、山口県にあるわずか12人が暮らす集落で5人が殺害、放火された事件をテーマにした長編ルポ。連続殺人放火事件をテーマにした長編ルポ。当初はどの媒体でも掲載が難しく、お蔵入りになっていたルポが、note公開をきっかけにクチコミで話題となり、さらなる追加取材を加えられて内容が倍増した形で書籍化されたという出版の経緯も独特な一冊です。「つけび」の意味をたどって地方の空気感、人のさがにも迫った、にわかには実話とは思えない実話です。
林雄司
林雄司
編集者
1971年東京生まれ。「デイリーポータルZ」編集長。ウェブ記事の編集、執筆を行うかたわら「地味ハロウィン」などのイベントを開催。主な編著書は『死ぬかと思った』シリーズ。好きな食べ物はイカの沖漬け。TwitterのIDは@yaginome
「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気
「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気
牧村康正, 山田哲久/講談社
「宇宙戦艦ヤマト」のプロデューサーの人生を描いた本。強引なやり方で大成功を収めるが、とにかく周りの人から疎まれる。それでも事業を展開して成功したり大失敗したり、最後は刑務所に収監される。でも、登場する固有名詞は「ヤマト」「ムーミン」などファンタジックなのがおかしい。一緒に仕事したくはないけど、こういう面白い人は本で読むのにぴったりですね。「全裸監督」や西村賢太の作品が好きな人にはおすすめのダークヒーローです。
嘉島唯
嘉島唯
編集者/ライター
通信会社で営業職の後、ギズモード・ジャパンの編集者へ転職。ハフポスト[日本版]を経てBuzzFeed Japanの立ち上げに参加。cakesでエッセイ「匿名の街、東京」を連載中。TwitterのIDは@yuuuuuiiiii
二十歳の原点
二十歳の原点
高野悦子/新潮社
本作は1969年6月に自ら命を絶った女学生の日記だ。初めてページをめくったとき、ぼんやりとした不安をこんなにも明確に言語化されたことに驚いた。社会の役に立つような人間になりたい、でも目の前の恋愛や些末(さまつ)な欲に溺れてしまう。なぜなのか。なぜうまく生きられないのか。自分が許せない。著者の慟哭(どうこく)は、50年がたった今ですら鮮血のようにヴィヴィッドだ。自己嫌悪で狂いそうなのは、あなただけじゃない。
夏生さえり
夏生さえり
ライター/プランナー
出版社・Web制作会社での編集者経験を経て、ライターとして独立。取材、エッセイ、シナリオ、ショートストーリー等、女性向けコンテンツを特に多く手がける。著書に『揺れる心の真ん中で』など。TwitterのIDは@N908Sa
跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること
跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること
東田直樹/イースト・プレス
会話のできない重度自閉症である著者が、文字盤を用いて自身の感覚や彼から見える世界をつづっていく。奇声をあげる、飛び跳ねる、こだわり行動をする...。その理由を、彼はこう言う。「僕は、まるで壊れたロボットの中にいて、操縦に困っている人のようなのです」。
私たちがいかに「自分と同じコミュニケーション方法」を無意識に他人に強いていたのか、もっと言えばそういうものしか信じようとしなかったのかを痛感させられ、これまで見えなかった世界が見えるようになる、胸が苦しくなるほどに美しい文章です。
犬山紙子
犬山紙子
エッセイスト
仙台の出版社を退職後、エッセイ本『負け美女 ルックスが仇になる』でデビュー。現在はコメンテーターとしてメディア出演の傍ら、児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「こどものいのちはこどものもの」の立ち上げなども行う。TwitterのIDは@inuningen
自殺
自殺
末井昭/朝日出版社
とてもしんどいときに読んで、「人間って愛らしいな、生きるのも悪くないね」と思った本。「自殺したいとか言うんじゃない」と上から叱咤(しった)しない。寄り添い、理解してくれる。北風と太陽のような本で、弱っているときこそ生の言葉がしみます。「どうか死なないでくださいね。本当は生きづらさを感じている人こそ社会にとって必要な人なのです」という言葉で、「自分なんかいなくても」という気持ちが優しく流れるのです。
朽木誠一郎
朽木誠一郎
記者/編集者
1986年生まれ。朝日新聞記者・編集者/デジタルスタジオ・ディレクター(責任者)。群馬大学医学部医学科卒。近著に『健康を食い物にするメディアたち』。TwitterのIDは@amanojerk
大学病院の奈落
大学病院の奈落
高梨ゆき子/講談社
「群大病院手術死」事件がまとめられている。未曽有の医療事故が起きた同大医学部は私の母校だ。権力によって本来あってはならない行為が横行し、周囲が異を唱えにくい構造――在学時に言語化できなかった地方医学部特有の雰囲気が、丁寧な取材で解き明かされていく。一方で、再生に取り組むたくさんの先輩、同級生、後輩たちの姿も頭をよぎる。構造をつまびらかにすることで、悲劇を二度と繰り返させない。報道の役割を、双方の関係者として再認識させられた。
青柳美帆子
青柳美帆子
編集者/ライター
1990年生まれ。フリーライターを経てアイティメディア勤務。現在は女性向けチャンネル「ねとらぼGirlSide」担当編集長。オタク女子カルチャーに育てられました。TwitterのIDは@ao8l22
居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書
居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書
東畑開人/医学書院
ネットメディアで仕事をしていると、「わかりやすさ」に流されてしまいそうになる瞬間がある。ビフォーアフター、成長変化、因果関係。本書でいう「セラピー」的なものを受信発信し続けているうちに、知らず軽視するようになる存在がある。マイナスをゼロに戻すような、必要だけど劇的な変化がない、コスパが悪いもの。それが「ケア」的なものだ。本書はデイケア現場での「ケアとセラピー」にまつわる発見を扱ったバチバチの専門書だが、デイケアだけの話ではない。「名もなき家事」のような身の周りの問題を考える、立ち止まるためのツールになる。
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江川紹子
ジャーナリスト
東京都生まれ。神奈川新聞記者を経てフリーランス。司法や災害、政治、メディア、カルト問題など、社会の様々な事柄について取材したり執筆したりしている。近著に『「カルト」はすぐ隣に』。TwitterのIDは@amneris84
ドキュメント 戦争広告代理店
ドキュメント 戦争広告代理店
高木徹/講談社
情報を制する者が戦いを制する―それは、戦争を含む国際政治においても然り。ボスニア紛争の裏で展開された情報戦を描いた本書は、アメリカのPR会社がどう国際世論を形成し、勝者と敗者を作っていったかを、生き生きとダイナミックに再現する。情報操作の手法は今、さらに洗練されているはず。日々、様々な情報に接する私たちは、この現実を知っておきたい。それに、本当は日本政府もこういう情報のプロの助けが必要なのでは?
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笑い飯 哲夫
芸人
1974年、奈良県生まれ。関西学院大学文学部哲学科卒。2000年に漫才コンビ「笑い飯」を西田幸治と結成。2010年に「M-1グランプリ」優勝。著書に仏教本『えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経』、小説『銀色の青』などがある。TwitterのIDは@waraitetsuo
有罪捏造
有罪捏造
海川直毅/勁草書房
俗に言う、オヤジ狩り事件で捕まえられた少年グループの、冤罪を晴らすまでを描く法廷サスペンス。いかにして少年たちの有罪がつくり上げられたか、また、冤罪を晴らすためにはどれほどの労力と時間が必要であるか、実際に弁護士として事件に携わった著者の、生々しい視点から教えてもらうことができる。現場に入り込みやすい臨場感のおかげで、読み終わった後には、おつかれさんのホットコーヒーをいただきたくなる。アイスコーヒーも、よい。
pha
pha
作家
1978年、大阪府生まれ。自由な生き方がフジテレビ「ザ・ノンフィクション」で取り上げられ話題に。著書に『がんばらない練習』『しないことリスト』『持たない幸福論』などがある。TwitterのIDは@pha
うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間
うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間
先崎学/文藝春秋
あのいつも飄々としている先崎さんがうつ病になるなんて......。エッセイの名手として知られる著者が自身の発症から回復までを冷静に観察したレポート。思考能力の低下が将棋の棋力で測れたという部分が面白かった。例えば普段なら一秒で解ける詰将棋が10分かかっても解けないとか。あと、精神科医である著者の兄が毎日のようにLINEで「必ず回復します」とだけ送ってきたという話が良かった。短いけれど心強い言葉だ。
井出留美
井出留美
食品ロス問題ジャーナリスト
近著『食品ロスをなくしたら、1か月5,000円の得!』、『賞味期限のウソ』。第2回食生活ジャーナリスト大賞、Yahoo!ニュース エキスパート「オーサーアワード2018」受賞。TwitterのIDは@rumiide
日本の食と農 危機の本質
日本の食と農 危機の本質
神門善久/NTT出版
著者が強調する「消費者エゴ」。コンビニやスーパーは「商品がないと客に迷惑をかける」という理由で「欠品したら取引停止」をメーカーに課す。消費者は商品棚の奥に手を伸ばして新しいものを取り、手前が売れ残る。その処理費の一部は税金だ。著者は、食と農の問題の本質は消費者の怠慢と無責任であると指摘する。便利を享受する裏側で、消費者自身が知らずに膨大なコストを課せられている事実にそろそろ気づく必要があるだろう。
スピードワゴン 小沢一敬
スピードワゴン 小沢一敬
芸人
1973年10月10日生まれ、愛知県出身、お笑いコンビ「スピードワゴン」のボケ担当。9月21日〜22日東京、10月5日〜6日大阪にて舞台「a livehouse〜そこから星が見えますか?〜」に出演。TwitterのIDは@ozwspw
証言 イチロー 「孤高の天才」の素顔と生き様
証言 イチロー 「孤高の天才」の素顔と生き様
別冊宝島編集部/宝島社
今年イチローが引退した。愛知県で育ち同い年の僕はずっとイチローに憧れていた。引退会見は全部生で見た。言葉を丁寧に選び誠実に、時にはイチロー流のジョークも交えながら。スタジアムで見るイチローとは違ったけれど、やはり人を引きつけて離さないスーパースターだった。この本はイチローに関わった同僚、先輩、後輩、ライバル、記者、父親などが彼について語っている。スーパースターについて語っているスター選手たちがみんな嬉しそうで誇らしげでもある。僕はきっとこの本を何度も読み返す。僕はずっと1992年のあの日からレーザービームに撃ち抜かれている。
田中隼人
田中隼人
音楽プロデューサー/作曲家
1979年生まれ・東京都出身。agehasprings所属の音楽プロデューサー・作曲家。YUKI、伊藤由奈、JUJU、FUNKY MONKEY BABYS、flumpool、ファンキー加藤、Aimerなど様々なアーティストへの楽曲提供・プロデュースを手掛ける。TwitterのIDは@hayato_tanaka
将棋の子
将棋の子
大崎善生/講談社
将棋のプロ棋士になるために通らなければならない道、奨励会。全国の天才少年たちが集う奨励会の中でもプロ棋士になれるのはほんの一握り、という世界でそこから脱落していった者たちにフォーカスを当てた作品。将来の見えない暗闇の中をまさに指し手一つ手探りで進んでいく者たちの葛藤や逡巡がエグいほどリアルに描かれていて、食べていける保証もないままただひたすらに音楽を作っていた頃の自分をつい重ねてしまう。悪手一つで未来が変わる者たちの生き方には胸を抉るような切なさがある。
上野千鶴子
上野千鶴子
社会学者
社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。最新刊に『女ぎらい ニッポンのミソジニー』がある。(近影:菅野勝男撮影)TwitterのIDは@ueno_wan
からゆきさん 異国に売られた少女たち
からゆきさん 異国に売られた少女たち
森崎和江/朝日新聞出版
石牟礼道子さんの『苦海浄土』が20世紀文学の記念碑的作品として評価されているなら、同時期に書かれたもうひとつの記録文学、森崎和江さんの『からゆきさん』も、同じように評価されてよい。ジェンダーと性に関わる主題は、男からは認められにくい。だが本書が忘れられてよいとは思えない。本書もまた20世紀記録文学の金字塔だと思う。その意味で、2016年に本書の文庫版が朝日文庫から刊行されて、若い読者の手にとりやすくなったことはありがたい。本書には20世紀日本の出稼ぎ、植民地、海外侵略、戦争の歴史が、性を売る「おなごの仕事」を通じて大きなスケールで描かれている。
借金玉
借金玉
ライター
発達障害に困りながら、文章を書いて暮らしている33歳。著書に発達障害ライフハック本『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』。TwitterのIDは@syakkin_dama
死刑のための殺人 土浦連続通り魔事件・死刑囚の記録
死刑のための殺人 土浦連続通り魔事件・死刑囚の記録
読売新聞水戸支局取材班/新潮社
「殺人は悪ではない」と考え、死刑を求めて連続通り魔殺人を犯した犯人に対して新聞記者が人間の情を取り戻させようと奮戦する実録本。犯人の素朴で稚拙な観念の前に記者の道徳観念が一切通用しない様は、社会通念で覆い隠されていた人間の断絶そのものを前景化させる。感動も感慨もなにもなく、ただただ人間が描かれる素晴らしい一冊。
たられば
たられば
編集者
出版社にて雑誌→書籍→Web編集者/Twitterフォロワー数16万3000人/関心領域は本、雑誌、SNS、平安朝文学(清少納言と紫式部)、働き方、犬、FGO。だいたいニコニコしています。TwitterのIDは@tarareba722
本のタイトル
ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。
幡野広志/ポプラ社
がん(多発性骨髄腫)にかかった写真家が家族について書いた本......ではありますが、それだけでは、まるで『源氏物語』について「男と女の話」と紹介するような雑さ具合です。言葉が足りな過ぎて冒涜している。人は必ず死にます。それは選ぶこと(避けること)が出来ません。では、何なら選ぶことができるのか。「選べない」と思ったものでも選ぶことができるんじゃないか。たとえば家族とか。生き方とか。この痛みの意味の捉え方とか。そういうことが、丁寧に丁寧に書かれています。
牧村朝子
牧村朝子
文筆家
"読まなければ大人に褒めてもらえない"と読書する幼少期を経て、"書かなければなかったことにされるものをとどめたい"と文筆家に。著書『百合のリアル』他、出演「NHKハートネットTV」他。愛称「まきむぅ」。TwitterのIDは@makimuuuuuu
奄美の債務奴隷ヤンチュ
奄美の債務奴隷ヤンチュ
名越護/南方新社
"日本一の貧乏殿様"の借金のため、そこの島のみなさん、奴隷になってもらいます......。タブーとされ、歴史の闇に葬られかけた奴隷たちを、島に生まれた元記者がそのペンと取材力で蘇らせる一冊です。悪人をおっぱいで追い払う詩人に、"俺らは猿だ"と踊り狂う集団。自由を奪われた奴隷同士の許されざる恋、解放を求め無抵抗で殴られ続ける青年。41ページの馬鹿尻の話だけでも読んでほしい。マジでつらい。でも、それでも......!
武田砂鉄
武田砂鉄
ライター
1982年生。2015年、『紋切型社会』で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。他の著作に『芸能人寛容論』『コンプレックス文化論』『日本の気配』などがある。TBSラジオ「ACTION」金曜日パーソナリティーを務める。TwitterのIDは@takedasatetsu
ずばり東京
ずばり東京
開高健/光文社
もうすぐ東京五輪が開催されるが、それにかこつけて、長らく存在していた建物や風景をリセットし、新しい街が享楽的に膨張していく様子を見ると、ワクワクよりイライラする。なぜって、歴史を、生活を、人間を軽視しているように思えるから。1964年の東京五輪開催を前に色めき立つ東京の街を歩き、社会の底で辛うじて息をする人などの声を拾い上げたルポルタージュ。世の中が混乱している時に必要なのは、人間の声を聞くこと。現代への警鐘としても読める。
ネゴシックス
ネゴシックス
芸人
1978年、島根県生まれ。NSC22期生。「R-1ぐらんぷり2003」準優勝。2006年に「第27回ABCお笑い新人グランプリ」審査員特別賞受賞。現在は、イラストレーターとしての活動にも注力。「バキバキ画」と呼ばれる独自のタッチのイラストで、個展・ギャラリーを実施している。TwitterのIDは@negoshix
愛しのインチキガチャガチャ大全ーコスモスのすべてー
愛しのインチキガチャガチャ大全ーコスモスのすべてー
池田浩明, ワッキー貝山/双葉社
今年で41歳になる。10歳の頃は本当にあった事なのか? と思えても来たりする。でも確かにそうだったと思い出せる。たかだか30年前の記憶なのに曖昧だ。コスモスの自販機が全国各地にあった。が、しかし一斉に姿を消した。様々なトレンドがガチャに詰め込まれていた。流行りの物から実体の無い物までもがカプセルに。それは勝手に作り出された品々。おそらく許可なく。パクリという単語があったのか無かったのか。とりあえず似せたものが入っていた。本物が手に入らない僕らは、コレで欲しい思いをやり過ごせたという現象が本当にあったのだという証拠の本である。
SKY-HI
深爪
コラムニスト/主婦
独特な視点から繰り出すツイートが共感を呼び、ツイッターのフォロワー数は17万人超(2019年7月現在)。著書『深爪式 声に出して読めない53の話』他。「立て板に泥水」(女性セブン)連載中。芸能、人生、エロ等、執筆ジャンルは多様。TwitterのIDは@fukazume_taro
サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う(鈴木智彦/小学館)
サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う
鈴木智彦/小学館
「密漁品」は裏ルートで取引されているもの、と思い込んではいないだろうか。本書によればその多くは堂々と表ルートで売られており、消費者は知らぬまに共犯者になっているという。「へー、ヤクザは意外なところで金儲けしているんだなあ」と完全に他人事として読み始めたら、思いっきり自分が当事者だったという衝撃のオチ。著者の築地市場への潜入ルポは生々しく、あたかもこの目で裏社会を覗き見ているような感覚に陥る一冊だ。
いとうせいこう
いとうせいこう
作家/クリエーター
1961年生まれ、東京都出身。1988年に小説『ノーライフ・キング』でデビュー。1999年、『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞受賞、『想像ラジオ』で第35回野間文芸新人賞受賞。近著に『鼻に挟み撃ち』『我々の恋愛』『どんぶらこ』『「国境なき医師団」を見に行く』『小説禁止令に賛同する』『今夜、笑いの数を数えましょう』などがある。TwitterのIDは@seikoito
国境の医療者(メータオ・クリニック支援の会(編集) 渋谷敦志(写真)/新泉社)
国境の医療者
メータオ・クリニック支援の会(編集) 渋谷敦志(写真)/新泉社
タイとミャンマーの国境の町メーテオ。そのタイ側に開かれた医院での十年にわたる国際ボランティアの詳細を、実際に日本から出かけて勤めた看護師、医師たちが各々手分けして書くというスタイル。これが実に多彩で、しかも当然リアリティに満ちていて単純に読み物としても優れていると思う。また、私も『国境なき医師団を見に行く』の著者として、こうした国際ボランティアの行動を深く尊敬し、応援する。
石戸諭
石戸諭
記者/ノンフィクションライター
1984年東京都生まれ。2006年から毎日新聞、BuzzFeed Japan記者を経て2018年4月に独立。現在は雑誌、ウェブなどで執筆する。ニューズウィーク日本版特集「百田尚樹現象」が話題になった。単著に『リスクと生きる、死者と生きる』。TwitterのIDは@satoruishido
沢木耕太郎ノンフィクションIII 時の廃墟(沢木耕太郎/文藝春秋)
沢木耕太郎ノンフィクションIII 時の廃墟
沢木耕太郎/文藝春秋
社会を語るために「意見」が重視されるようになった。「意見」はわかりやすく、力強いほうが良しとされる。だが、社会はそんな単純に語れるものだろうか。先達たちは、そうは考えなかった。対象と向き合い、事実を丹念に積み上げ、自身と格闘して言葉を探す。同書に収録された短編の特徴は古びていないことにある。どの作品を読んでも、時代を超えた描写の力がある。ここにノンフィクションの基本がすべて詰まっている。
清田いちる
清田いちる
サービス企画屋&さすらいの編集長
サービスやメディアの立ち上げやブランディングが得意。企画したサービスは「ココログ」「ShortNote」「Zenback」など。編集長を務めたメディアは「ギズモード」「bouncy」など(いずれも初代)。個人ブログは「小鳥ピヨピヨ」。TwitterのIDは@kotoripiyopiyo
ドキュメント 戦争広告代理店(高木徹/講談社)
ドキュメント 戦争広告代理店
高木徹/講談社
1990年代半ばの「セルビア人による民族浄化」が、実は米国のPR代理店が仕組んだキャンペーンだったと知ったら、どう思われますか?『戦争広告代理店』は、ボスニアに雇われたPR会社が、誰の注目も浴びていなかった同紛争を話題にし、マスコミや国際政治を動かし、世論を誘導し、ついには戦争を勝利に導いた顛末がまとめられた、迫真のドキュメンタリーです。彼らのノウハウには、驚かされ、また、深く頷かされました。
ヨッピー
ヨッピー
フリーライター
「シムシティで市長と対決する」「京大吉田寮を掃除する」など様々なバズ企画を手掛けるフリーライター。 「オモコロ」「Yahoo!ニュース エキスパート」「SPOT」など様々な媒体で活躍中。TwitterのIDは@yoppymodel
アヘン王国潜入記(高野秀行/集英社)
アヘン王国潜入記
高野秀行/集英社
「世界最大の麻薬生産地『ゴールデントライアングル』に潜入し、現地の村人と一緒にアヘンを生産しつつ、自分も立派なアヘン中毒になる」というぶっ飛んだ内容なのですが、一般的なノンフィクション本のような「観察者」の視点ではなく、地域のコミュニティに入り込んで「当事者」としての視点から、コミカルに、そして愛を持って書かれる珍道中は本当に中毒性が高いのでこれを読んだ人は全員、確実に、間違いなく読んでください!
古谷経衡
古谷経衡
文筆家
1982年北海道生まれ。日本ペンクラブ正会員。主著『愛国奴』『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『若者は本当に右傾化しているのか』など多数。TV・ラジオコメンテーターとしても活躍。TwitterのIDは@aniotahosyu
沖縄決戦 高級参謀の手記(八原博通/中央公論新社)
沖縄決戦 高級参謀の手記
八原博通/中央公論新社
沖縄の基地問題が巷間、大きな話題になっている。基地に対して賛成の者も、反対の者も、絶対に読まなければならない本。本書は、先の戦争中、沖縄守備隊(第32軍)の陸軍高級参謀として、沖縄戦を最初から最後まで体験してきた八原博道氏が、戦後に回顧録として残したものだ。沖縄守備隊は玉砕し、司令部で生き残ったのは八原氏しか居ない。日本軍から見た貴重な歴史の記録であると共に、沖縄戦とは何だったのか、という根本的理解になくてはならない本。
柿内芳文
柿内芳文
編集者
1978年生まれ。「知の入り口」の編集力を武器に、これまで『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』『嫌われる勇気』『漫画君たちはどう生きるか』等を編集。株式会社STOKE代表。TwitterのIDは@kakkyoshifumi
垂直の記憶(山野井 泰史/山と渓谷社)
垂直の記憶
山野井泰史/山と渓谷社
こんな本、反則だろう。登山家という狂気最上位な生き様の、日本最高峰の人間が、ありえないくらいスルスルと読める平易な文章で、絶対に港区なんかに住んでいては見ることも触ることも感じることすらできない登攀という異次元世界(無意味に皆死ぬ!)に、たった数百円で、一瞬で、連れ去ってくれるなんて。上質な自伝は最高の物語体験に匹敵するし、そのリアリティはVRなんて軽々と超えてくるから、自分のちっぽけな世界観をぶっ壊す意味でも年に一回は体験しろと、後輩に必ず渡す本だ。
SKY-HI
SKY-HI
ラッパー/アーティスト
日本のラッパー、アーティスト。AAAのメンバーとしても活動し、SKY-HIソロとして国内外で活躍中。9月4日にはラッパーSALUとのコラボアルバム、SKY-HI×SALU 「Say Hello to My Minions 2」をリリース。TwitterのIDは@SkyHidaka
春になったら莓を摘みに(梨木香歩/新潮社)
春になったら莓を摘みに
梨木香歩/新潮社
イギリス郊外の下宿先で出会ったウェスト夫人が、様々な人種、宗教、思想の人たちを、時に頭を悩ませながら、「理解はできないが、受け入れる」という様を書かれたものです。 "多様性"は現代社会においてとても大事なテーマだと思うんですが、その大切さをただ説くのではなく、この本の向こうで確かにそういう人間が生きている、そして作られたドラマによって理解を深めていくのではなく、ただ彼等全てが生きている事を、その息吹を文字の向こうから感じられる、今だからこそ全ての人間に読んでほしい本です。
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特集記事

ノンフィクション本にまつわるインタビューや対談を掲載。
書店員さんや出版社などの熱い思いをお届けします。

開催概要

新刊として発売されたさまざまなノンフィクション本の中から、
全国の書店で働く書店員の投票で決まります。
この機会に、ノンフィクション本を手にとってみませんか。

スケジュール

2019年6月
一次選考スタート
2019年7月
一次選考締め切り
2019年8月1日
ノミネート作品発表、最終選考(二次選考)スタート
2019年11月上旬
大賞作品発表

対象作品

2018年7月1日から2019年6月30日の間に、日本語で出版されているノンフィクション作品全般
(※海外作品の翻訳本は除く)

副賞

賞金(取材支援費):100万円

なぜYahoo!ニュースは、いまノンフィクション「本」を応援するのか

ノンフィクション本を読むことで、わたしたちの視野はひろがります。
世の中で起きたことを伝えるため、実際に足を運び、見聞きして、
調べているからこそのおもしろさがそこにはあります。

しかし、その取材・執筆の過程では時間やお金がかかることが珍しくありません。
著者は知力をふりしぼり、時には体を張るケースもあります。

Yahoo!ニュースに配信される1本1本の記事にも同様に労力がかけられています。
毎日の配信記事と同様、ノンフィクション本の書き手の思いも伝えたい。
また、読者のみなさまにより深く「知る」ことのおもしろさを感じていただきたい。

だからYahoo!ニュースは、日本全国の書店員さんが選ぶ
「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」を設けました。
すばらしいノンフィクション本を応援することで、読者のみなさまと出会う機会を
増やすお手伝いができればと考えています。

2020年本屋大賞 「流浪の月」Yahoo!ニュース特集著者インタビュー

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