第3回ノンフィクション本大賞決定!

エンド•オブ•ライフ 佐々涼子
「看取りのプロフェッショナル」である看護師の友人が病を得た。最期の日々を共に過ごす著者に見せた、友人の死への向き合い方は、意外なものだった。難病の母、そして彼女を献身的に看病する父の話を交え、7年間見つめ続けた在宅での終末医療の現場を綴る。

受賞の言葉/佐々涼子さん

7年前、在宅での終末医療の取材をするため私は京都の医療チームに同行しました。そこで見たのは、家で最期の時を過ごす人々の、奇跡のような命の輝きでした。しかし、同時に戸惑います。私にも寝たきりの母を献身的に介護する父がいましたが、私に父のような介護ができるとは思えない。できないものを安易に称賛していいものだろうか。ノンフィクション作家として悩み、筆が止まります。転機が訪れたのは今から2年前のこと。取材に協力してくれた訪問看護師の友人ががんに侵されたのです。彼が迷い、揺れつつも、運命と折り合いをつけ、すべてを受け入れる過程を見せてもらいながら、私は人生の本質に触れたような気がしました。彼が命がけで残してくれた言葉は、きっと誰に対しても大切な命のレッスンとなるでしょう。書店員のみなさん、このたびはすばらしい賞をありがとうございました。読者を誰よりもご存じのみなさんに選ばれたことを誇りに思います。

プロフィール
佐々涼子(ささ りょうこ)ノンフィクション作家。1968年生まれ。神奈川県出身。
早稲田大学法学部卒。日本語教師を経て、フリーライターに。
2012年、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)で第10回開高健ノンフィクション賞を受賞。2014年に上梓した『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』(早川書房)は、紀伊國屋書店キノベス第1位、ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR第1位、新風賞特別賞など数々の栄誉に輝いた。

書店員の声

読者の声

情報提供元:ブクログ

「命の閉じ方のレッスン」終末期の在宅医療のノンフィクション。細かな描写で辛くなるほど泣けてきました。 家族の看取り方は?自分の最期はどうしたい?正解はわからないけど、自分らしく、思い残す事なく今を生きたいと思いました。
yukiさん
この本で一番印象的なセリフ。 『人は生きたようにしか最期は迎えられない』 いきなりあと数ヶ月の命と言われても、人は生き方を変える事は難しい。 自分の意見を尊重できる環境下で生きていた人は、死ぬ時もちゃんと自分の考えを尊重出来るだろうし、逆に人に振り回されて生きて来た人は、最期も家族に振り回されてしまうもの。だからこそ常日頃から悔いがないように生きていきたいけれど。
私は在宅医療が絶対!とは思わないし、この本を読んでやはりそれは強く思った。いくら本人が望んでも、家族の負担は相当に重い訳だし、かと言って在宅医療ができない事を家族の愛情不足などと責めるのもまた違うと思う。本当に難しい。正解がないからこそ。
snoo39さん
病気で少しづつ死に近づくのは痛みもあり、不安もあり、この作品のように在宅介護は家族の負担にもなるので本人は申し訳なかったりするのだろうが、死にゆく準備をできることは幸せなのかもしれないとも思う。この方の父上の献身する愛と強さにも頭が下がる。自分はそんな愛を受ける価値のある人物だろうか…。何度も読み返したいノンフィクション作品。
ラッキーさん
医療者として考えさせれる本だった。
心不全患者を在宅に、と迷うことあるけど…。高齢で、未来予測がしにくく、悪くなっても治療で回復する(少なくとも症状は)可能性がある心不全患者の場合、がん患者の在宅医療とは大きく違った難しさがあるんだろうと思う。
miserybeatleさん
患者の気持ちにはそれぞれ違っているだろうし,その家族の気持ちもそれぞれだ.だがこの本に書かれた家族の気持ちは限りなく自分の気持ちに近く,なぐさめられた.自分の最後を考えることも大切だが,より良く生きることが本当に大事だと気付かされる.この本は在宅医療に光を当てているが,在宅であってもそうでなくても生きる姿勢は同じだと思う.
hosinotukiさん

(外部サイト)

ノミネート作品

6冊のノミネート作品が全国の書店員さんの投票で出そろいました。あっと驚く事件や人物、土地をめぐる物語、そして生き方。2020年の大賞に輝くのはどの作品でしょうか。読んで予想をするのも楽しみです。

  • 『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子/集英社インターナショナル
  • 『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』梯久美子/KADOKAWA
  • 『女帝 小池百合子』石井妙子/文藝春秋
  • 『聖なるズー』濱野ちひろ/集英社
  • 『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』高橋ユキ(タカハシユキ)/晶文社
  • 『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』ブレイディみかこ/筑摩書房

※作品名の50音順

エンド・オブ・ライフ佐々涼子/集英社インターナショナル

出版社からのコメント
「死ぬ前に家族と潮干狩りに行きたい」。患者の最期の望みを叶えるため、大量の酸素ボンベを積んで、車で180キロを走る医師と看護師たちがいる。その中のひとり、多くの患者を看取ってきた看護師がすい臓癌に罹患した。看取りのプロフェッショナルは、自らの死にどう向き合ったのか? 著者は、友人でもある看護師に寄り添い、在宅で死を迎える人と送る人たちの姿を描きだす。誰もがかならず迎える、自分や家族の終末期のあり方を考えさせてくれるノンフィクション。

サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する梯久美子/KADOKAWA

出版社からのコメント
『散るぞ悲しき』『廃線紀行』に『狂うひと』等。多くの名作を著してきた梯さんが、これまでの作品に通底する「文学」「歴史」「鉄道」「作家の業」、すべてを盛り込んだ新たな紀行作品です。樺太/サハリン、旧名サガレン。何度も国境線が引き直された島。宮沢賢治は妹が死んだ翌年、その魂を求めて訪れています。チェーホフを始め、この地を旅した文豪は多い。何が彼らを惹きつけたのでしょうか? 近現代史の縮図となった島をゆく!!

女帝 小池百合子石井妙子/文藝春秋

出版社からのコメント
コロナに襲われる首都・東京の命運を担う小池百合子。初の女性都知事であり、初の女性総理との呼び声も高い。しかし、われわれは彼女のことをどれだけ知っているのだろうか。「芦屋令嬢の育ち」「カイロ大学主席卒業」、キャスターから政治の世界へ。常に「風」を巻き起こし、男性社会にありながら、権力の頂点を目指す彼女。その数奇な半生を、100名以上の証言と3年半の綿密な取材をもとに描き切る。

聖なるズー濱野ちひろ/集英社

出版社からのコメント
犬や馬をパートナーとする動物性愛者「ズー」。性暴力に苦しんだ経験を持つ著者は、ドイツで22人の当事者と寝食をともにし、人間にとって愛とは、暴力とは何か、考察を重ねる。そして、戸惑いつつ、希望のかけらを見出していく──。相手と対等であること、相互関係の中から生まれる「パーソナリティ」を大切にすること。偏見や常識を一つひとつ解きほぐしながら、他者との向き合い方に新たな光をあてた作品です。第17回開高健ノンフィクション賞受賞作。

つけびの村 噂が5人を殺したのか?高橋ユキ(タカハシユキ)/晶文社

出版社からのコメント
SNSの影響力は麻薬だ。学術書ばかり編んできたのに、ウェブで目にしたその夜に事件ルポの書籍化をもちかけてしまった。山口県で起こった連続殺人放火事件――限界集落で響き、増幅される数々の「噂」と新たな謎。実感と湿度を伴う調査過程の描写により、気がつくと取材者の視点に取り込まれてしまう。焦り、不安、恐怖、喜びを読者と共有する迫真の「調査ノンフィクション」。疲れきった脚でなお歩いた、リアルな取材の塊である。

ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたちブレイディみかこ/筑摩書房

出版社からのコメント
日常をゆるがす大問題を前に、果敢に右往左往する英国ワーキングクラスのおっさん、おばさんたち。人生の苦汁をたっぷり吸ってメンマのようになった登場人物はみな不器用でダメダメ、でもなぜか愛おしい! 失業にもマケズ、失恋にもマケズ、格差や差別といった社会問題を前にしてもしぶとく立ち上がる、パワフルでソウルフルな人びとの気迫に、「絶望している暇はない!」と、愛と勇気があふれてくるノンフィクションです。

【ヒットの裏側】2019年ノンフィクション本大賞作

――ブレイディみかこさん著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、なぜ54万部を売り上げたのか? 版元の新潮社「チーム・ブレイディ」のみなさんに聞きました

(写真提供:新潮社)

昨年の「Yahoo!ニュース|本屋大賞ノンフィクション本大賞」は、英国在住のブレイディみかこさんによる『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が受賞しました。「ぼくイエ」の名前でも親しまれるこの作品は、ブレイディさんの息子さんが通うことになった、現地の「元底辺中学校」を舞台にしています。その累計部数はなんと54万部超! 異例の大ヒットを遂げました。なぜ、ここまで売れたのでしょう。刊行に携わった新潮社のみなさんに聞きました。

書店員さんが教えてくれました『はじめてのノンフィクション本』

ノンフィクション本になじみがない。いまから読むなら何がいいんだろう。そんなときは、本の目利きの人たちに聞いてみよう。街の書店員さんが薦める「はじめての一冊」ってなんでしょう。

推薦者 ブックスキヨスク 奥田勝さん

あふれでたのはやさしさだった 寮美千子/西日本出版社

明治時代の名煉瓦建築として有名な奈良少年刑務所。そこで童話作家の著者が、ひょんなことから受刑者である子どもたちに絵本と詩の授業をすることになります。その授業で、子どもたちの固く閉ざした心の扉は次々と開いていきます。子どもたちを変化させた、あるいは本来の心を取り戻させた「絵本と詩の教室」の記録。

推薦理由
かつて大槻ケンヂさんが、深夜に開いている本屋のような存在でありたいといった話をライブでしていました。眠れない悶々とした孤独な暗闇の中で、本屋の明かりが救いになるように言葉の持つ力は誰かの心に明かりを灯すに違いありません。
ノンフィクション本の醍醐味
どんなノンフィクション本でも、読んだあとで「知らないままでいれば良かった」と思うことはないはずです。

推薦者 有隣堂 藤沢店(外部サイト)
佐伯敦子さん

犬たちをおくる日 この命、灰になるために生まれてきたんじゃない
今西 乃子(著),浜田 一男(写真)/金の星社

捨てられる命を一頭でも減らす社会へ。日本一の動物愛護センターを目指して、日々、奮闘する愛媛県動物愛護センター職員たちの日常を追いながら、命の尊さを考えるノンフィクションです。空前のペットブームの影には、このような現実もある。そして、その現実と闘う人達もいます。命の尊さを考える一冊です。

推薦理由
子供の頃、飼っていた犬を手放さなければいけなかったことが、長いこと後悔として残りました。大人になって犬を飼うことができたら、絶対手放さない、どんなことがあっても最後の最後まで一緒にいると思ったことを忘れないようにしたいです。人間を信じ切った犬達の最後がこんなカタチにならないように、多くの方に読んで考えてほしいと思います。
ノンフィクション本の醍醐味
現実を知ることは時として残酷なことだけれども、現実を知ってこそ、大事にしなければいけないことがきちんと見えてくるような気がします。若い世代に読んでほしいです。

推薦者 有隣堂 藤沢本町トレアージュ白旗店(外部サイト)
小出美都子さん

オオカミは大神 狼像をめぐる旅 青柳健二/天夢人

日本全土に残る「狼像」を追って、筆者が実際に各地を訪ね写真と文章でときにユーモアを交え記した旅の記録です。「オイヌゲエ(お犬替え)」という不思議な単語の意味を探るところから始まり、全国で受け継がれている狼信仰や人と狼との関わり、更には人と自然との関わりについて考えさせられます。

推薦理由
なんでこんなところに? とずっと気になっていた渋谷のビルの合間。ある神社が狼を祀っているということが書かれていて興味を持って手に取りましたが、実は日本には他にもこんなに狼を祀った神社があるなんてと驚かされます。近所の狛犬も、実は犬じゃなくて狼かもしれないですね。そして私がずっと疑問に思っていた渋谷の神社ですが、著者いわく「もともと神社があった所に後からビルが建ったのだ」と。自然と人との関係もあらためて考えさせられました。
ノンフィクション本の醍醐味
はるか遠い国の出来事や、自分には想像もつかなかったような想い(それは決して楽しいものばかりではないけれど)を当事者の言葉で知ることができて、外出も思うように行かない今も、翼となって様々な場所へ誘ってくれます。

推薦者 TSUTAYA 堺南店(外部サイト) 大野舞さん

桶川ストーカー殺人事件 遺言 清水潔/新潮社

1999年、女子大生が、元交際相手を中心としたグループから、嫌がらせを受けたあげく刺殺される、という痛ましい事件が起こりました。刺殺事件が発生する前から、何度も警察に被害を訴えていた女子大生ら家族。警察は、本当に適切に動いていたのだろうか。当時、雑誌「FOCUS」の記者であった著者が真相を暴いていきます。

推薦理由
日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞受賞作である本書は、ジャーナリストのあるべき姿を体現している作品と言えるのではないでしょうか。著者の、真実に向かって突き進む姿勢が素晴らしく、とてもかっこよく映りました。この事件を教訓に、日本の社会は少しでも変わることができたのか、本書を読んで思案を巡らせてほしいと思います。また、同じ著者で『殺人犯はそこにいる』も今回の推薦作品と同じくらいおすすめです。
ノンフィクション本の醍醐味
著者がその作品のテーマ(題材)に対して、とにかく妥協せず、ぶつかって行く様子にいつも私は心を打たれているのだと思います。独自の取材や、著者自らの経験から語られたことは、説得力を持って胸に迫って来ます。ノンフィクション本とは、社会を変えていく力を持つものではないでしょうか。

推薦者 好文堂書店 本店(外部サイト) おのうえさん

悲しみの秘義 若松英輔/ナナロク社・文藝春秋(文春文庫)

悲しみを通じてしか見えてこないものが、この世には存在します。悲しみの中、勇気をふりしぼって生きている人は皆、見えない涙が胸を流れることを知っていて、悲しみを通じてしか開かない扉があるのだと思います。悲しむ者は、新しい生の幕開けに立ち会っているのかもしれない。耳をすます、小さな声で勇気と希望に語りかける、若松英輔さん独特の方法で人の心に寄り添う珠玉の25篇です。

推薦理由
若松英輔さんの作品は、言葉を1つ1つ大切に読んでいくと心の中にスーッと入ってきて「私は悲しかったんだ」と、悲しいことを自分の中に受け入れる手助けをしてくれます。前に進めないとき、どうしようもなくたっていられない時に、この作品と出会いました。誰に話してもしょうがないと思っていた心にそっと寄り添ってくれた。優しさの詰まった作品です。
ノンフィクション本の醍醐味
ノンフィクションも、フィクションも、あまり区別はなく、自分の体験していないことや、考えたことがないことを自分の中に取り入れられることが魅力です。自分の視野を広げられることが、読書の醍醐味だと思います。

推薦者 明林堂書店 フジ西宇部店(外部サイト)
田中由紀さん

記憶喪失になったぼくが見た世界 坪倉優介/朝日新聞出版

美大に入学し、大学生活を送り始めた矢先に、交通事故に遭い、記憶喪失になってしまった著者が元の生活を取り戻すための、苦難の日々が描かれています。過去の自分、家族のことだけでなく、物の名前、使い方すべてを失うことの辛さがリアルに伝わってきます。持って生まれた天性のものに、それまでになかった感性が加わり、素晴らしい草木染作家に成長していく姿が、読者の感動を呼び覚まします。

推薦理由
一番身近な家族のことは、誰にとっても、大切で、幸せになって欲しい存在。その家族が不幸に見舞われた時、自分はどういう風に向き合っていけるでしょうか。それは、その立場にならないとわからないことも沢山あります。途方にくれてしまった時、この本の体験談はとても力になってくれると思います。このやり方だけが正解ではないとしても、この家族の素晴らしさは充分伝わってきます。家族だけでなく、バックアップしてくれる人が現れたということは、この著者にとっても幸運であり、それこそが彼の力だったのだと思います。是非知っていただきたい人生です。
ノンフィクション本の醍醐味
体験したいけどできない、でもどういうことなのかを知りたい、それを変わってリアルに伝えてくれるのが、ノンフィクション本だと思います。ワクワクするもの、辛く心に刺さってくるもの、すべて事実だからこそ、読んだあとに自分の人生と照らし合わせて考え、自分の幸せを実感することが出来ると思います。

推薦者 書泉ブックタワー(外部サイト) 山田麻紀子さん

消された一家 北九州・連続監禁殺人事件 豊田正義/新潮社

2002年に一人の少女が助けを求めたことで発覚した「北九州監禁殺人事件」。その全貌が明らかになるにつれ、その凶行が次々と白日の下にさらされてゆく。明るい人柄と巧みな話術で他人の家に入り込み、恐怖で家族を支配した松永。松永の行った監禁・通電刑・睡眠と排泄の制限。孤立化によって疑心暗鬼を深めた家族が殺し合いを始め7名が命を落とした。その半生と凶行を綴った犯罪ノンフィクション。

推薦理由
読んだ後に手放したくなる本ナンバーワン間違いなし!! “イヤミス”ならず“イヤノン”!? 読みやすい文体で一気に読める!! 何より怖いのはその支配の手口。通電の拷問に加え、寝かせない、トイレに行かせない、孤立化させることでどんどん判断力を奪って行きます。死亡した人の中には元警察官の方もいたのに抗うことができませんでした。裁判官をして「鬼畜の所業」と言わしめた戦慄の事件。読後はしばらく安眠できなくなります。
ノンフィクション本の醍醐味
想像を凌駕する現実をあなたに。小説を軽々と超えてくる事件・事故。肉体の限界を超えたアスリート、不治の病に侵された人のルポ。身近に起こる(かもしれない)良いことも悪いことも、本を通して追体験できるのがノンフィクションの良いところです。

推薦者 未来屋書店 有松店(外部サイト)
前田ゆきさん

少年と罪 事件は何を問いかけるのか 中日新聞社会部/ヘウレーカ

人を殺してみたかった――。社会を震撼させた重大少年事件の加害少年たちが漏らす衝撃的な言葉に戸惑う大人たち。しかし、社会は罪を犯した子どもたちの心の闇に本気で向き合ってきたのだろうか――。20人以上の重大少年事件の当事者を丹念に取材し、加害少年の背景や内面、被害者家族の悲嘆と苦悩、加害者家族の過酷な現実を描く渾身のルポ。

推薦理由
テレビや新聞などで報じられた未成年の若者による凄惨な殺人事件。この本は誰もが知る事件の”その後どうなったのか”を知ることができます。新聞記者だからこそできる、渾身の取材により新聞に連載された記事をまとめたものです。読みすすめるのが辛い内容ですが、悲しい事件から目を背けず、風化させないことが大切だと教えてくれます。
ノンフィクション本の醍醐味
物語とは違うのでスパッと解決しません。ただ起こった事件に対し誠実に検証していきます。その為、読後にスッキリ! とはならないことが多いのですが、社会問題であれば解決の糸口となります。

推薦者 丸善 博多店(外部サイト) 脊戸真由美さん

漂うままに島に着き 内澤旬子/朝日新聞出版

乳がんの治療中、狭い場所や騒音が苦手となり、がんがんモノを捨てはじめる。ついには夫を捨てたあと、三匹のブタを飼育してその後食べたり、何もない静かな場所で暮らしたくなり、生まれ育った関東圏を出ることにする。ついには島単独のガイドブックすら存在しない、香川県の小豆島に移住を決めるという、驚愕の内澤旬子という生き方。人生はどこまで軌道修正できるのか?

推薦理由
こういうひとに、わたしはなりたい。なったら死んじゃいそうだけど。内澤さんのインスタすごいことになってます。小豆島生活。いまや、飼ってるヤギの頭数はどんどん増え、イノシシまで。めちゃくちゃゴツくてのけぞる。最近はヤギ愛が強すぎて、自分ちのヤギの頭部の人形作るのに何日も熱中し、唐突に巨大なパン焼いてひとかけだけ食べてお腹いっぱい放置。なんて、このひと毎日自由。生きるエネルギーが溢れすぎ、次はどこへゆくのか。内澤旬子という生き方から目が離せません。
ノンフィクション本の醍醐味
こんな生き方、考え方をしてる人がいる。事の真相はこうだった。脳内の白地図を塗りつぶすためにノンフィクション本を読むのです。

推薦者 宮脇書店 本店(外部サイト) 藤村結香さん

ほぼ命がけサメ図鑑 沼口麻子/講談社

人類よりも早く地球に4億年前からすみつづけ、世界中に500種類以上存在し、百人、いえ、百鮫百様。分布や生息域、繁殖方法も多様性に富み、その生態についてはまだまだわかっていないことが多い生物…それがサメです。「シャークジャーナリスト」という肩書きを持ち世界中を飛び回り、サメの魅力を伝えようと日々奮闘している著者が書きました、とにかく「サメ」を語った大図鑑。

推薦理由
沼口さんは語ります、人食いサメはいません信じてくださいと……。読んだだけでは恐怖心は中々消えませんが、それでも「そうなんだ~」と興味が出てくる本なのです。そこから始まる、私たちの知らないサメの世界は大変に深く、幅広く、面白いものでした。沼口さんのサメに対する愛情が尋常ではありません。ぶっちゃけ、サメより沼口さんが面白いのでは? と思うぐらい体当たりで、さまざまなサメのあれやそれを紹介してくれています。
ノンフィクション本の醍醐味
小説は面白い。ですが、面白い小説を生み出すのは現実世界を生きる人たちです。ノンフィクション本を読むことで、もっと小説を味わう自分自身の内面が深まると思っているのですが、いかがでしょうか?

開催概要

新刊として発売されたさまざまなノンフィクション本の中から、 全国の書店で働く書店員の投票で決まります。 この機会に、ノンフィクション本を手にとってみませんか。

スケジュール

2020年5月20日
一次選考(書店員による投票)スタート
2020年6月30日
一次選考締め切り
2020年7月20日
ノミネート作品発表。
二次選考(書店員による投票)スタート
2020年9月20日
二次選考締め切り
2020年11月10日
大賞作品発表

対象作品

2019年7月1日から2020年6月30日の間に、日本語で出版されているノンフィクション作品全般
(※海外作品の翻訳本は除く)

副賞

賞金(取材支援費):100万円

ノンフィクション本大賞とは?

なぜYahoo!ニュースは、いまノンフィクション「本」を応援するのか

ノンフィクション本を読むことで、わたしたちの視野はひろがります。
世の中で起きたことを伝えるため、実際に足を運び、見聞きして、
調べているからこそのおもしろさがそこにはあります。

しかし、その取材・執筆の過程では時間やお金がかかることが珍しくありません。
著者は知力をふりしぼり、時には体を張るケースもあります。

Yahoo!ニュースに配信される1本1本の記事にも同様に労力がかけられています。
毎日の配信記事と同様、ノンフィクション本の書き手の思いも伝えたい。
また、読者のみなさまにより深く「知る」ことのおもしろさを感じていただきたい。

だからYahoo!ニュースは、日本全国の書店員さんが選ぶ
「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」を設けました。
すばらしいノンフィクション本を応援することで、読者のみなさまと出会う機会を
増やすお手伝いができればと考えています。