Inside2021.09.03

視聴者に語りかける動画メディアを−−Yahoo!ニュース「Voice」が届ける当事者の声

「今、これを伝えたい」という意志を持つ発信者が、自ら視聴者に語りかける動画記事メディアYahoo!ニュース オリジナル Voice。YouTubeをはじめ、個人が発信するツールに事欠かない時代の中で、Yahoo!ニュースがこうしたサービスを始めた狙いは何か? そこには、プラットフォームならではの目的がありました。

Voice担当プロジェクトマネージャーの清水耕一郎さんと、コンテンツ制作を手掛けるプロデューサーの水本慎太郎さんに話を聞きました。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

当事者と世間をつなぐ「客観性」を重視

「『Voice』がスタートしたのは、20204月のことです。一つのきっかけになったのは、船内クラスターが発生したダイヤモンド・プリンセス号に乗船した、岩田健太郎教授の取り組みでした。岩田教授はまだ世間の目が今ほどコロナ対策に向いていない時期から、対策の甘さとその後の危機についてSNSや動画などを駆使して発信し続けていましたが、あの時点では非常に勇気のいる行動だったのではないかと思います。まさにそうした、いま聞くべき当事者の声や主張を発信する場を作れないかと考えたのが始まりです」(清水さん)

Voice担当プロジェクトマネージャーの清水耕一郎さん

そんな思いが形になり、Yahoo!ニュースの中で産声を上げた「Voice」はその後、今日までに100人以上の専門家や著名人が登場。その時々の話題のテーマについて、それぞれが自らの考えを肉声で発信してきました。

しかし、当事者が発信したいことと、ユーザーの興味が必ずしも同じものだとは限りません。そこで、当事者が発信したいことと、世間が知りたいことの重なる部分を見つけ出し、企画化して本人に場を提供するのが「Voice」チームの役割だと清水さんは語ります。

「当事者と世間をつなぐうえで大切なのは客観性です。そこで、Yahoo!ニュースのコメント欄や検索ワードなど、ヤフーが持っている情報をフル活用して、『Voice』としてオリジナルのコンテンツを作るよう心掛けています」(同)

なお、Yahoo!ニュースでは以前から、「Yahoo!ニュース 個人」という個人の書き手(オーサー)の発信の場を提供してきました。オーサーを「Voice」で識者として迎えるケースもありますが、最大の違いは動画であること。ではなぜ、動画という形式にこだわったのでしょうか。

「やはりテキストでは伝えられない発信者の熱量や言葉のニュアンスというものを大切にしたかったというのが一番の理由です。例えば、当人の思いが強すぎて、ぐっと言葉に詰まるようなシーンなどは、動画でなければ伝わらないですからね。もちろん、岩田教授が動画でメッセージを発信する姿にインスパイアされたという背景もあります」(同)

「正しいワクチン情報を伝えたい」 医師たちとの連動企画もスタート

Voice」で公開されている動画は、どれも510分以内。これまでの公開リストを見てみると、新型コロナウイルスから政治、災害関係まで、幅広い動画コンテンツが並んでいます。なかにはタレントが死生観やストレス社会について語るものもあり、当事者が“伝えたいこと”の奥行きの深さを感じさせます。

そうした取り組みの中で、さまざまな派生企画も生まれはじめています。その一つが、コロナワクチンに対する正しい情報を伝える医師たちのプロジェクト、「こびナビ」との連携企画です。

この連携はどのように生まれたのでしょうか? 取材と編集に携わる水本さんは次のように語ります。

「きっかけになったのは、2021年5月に公開した峰宗太郎医師の取材でした。デマや誤解の多いワクチンについて正しい知識を伝えることが目的で、取材の中で、『ワクチンの正しい情報をもっと広く多くの人に伝えたい』という峰先生の強い意志に触れました。これはYahoo!ニュースとしてもっと貢献できることがあるはずだと感じたのが、連携企画の実現につながっています」

プロデューサーの水本慎太郎さん

そこで、「Voice」内で「こびナビ」メンバーの医師たちによる新型コロナワクチンに関する解説記事を公開、全体のワクチンまとめページや検索結果に記事へのリンクを掲載し、正しい知識の拡散をサポート。こうした取り組みの成果は大きく、関連コンテンツはどれも高いPV数を記録している、と水本さんは言います。それは世間の関心の高さの表れとも言えるでしょう。

「取材を通して感じるのは、登場されている医師の誰もが、『皆さんに正しい情報を知ってほしい』と心から思っているということです。その活動を後押しすることは、メディアとして非常に有意義な取り組みだと考えます」(水本さん)

また、今夏からはラジオ番組との連携も。TBSラジオとのコンテンツの共同制作が始まります。

「荻上チキさんの帯番組『Session』と連動し、1人の専門家の話を半分はラジオで、もう半分は『Voice』で視聴できる企画です。われわれからすれば荻上さんの知見とTBSラジオさんの制作力をお借りできる機会でもありますし、TBSラジオさんにとってもYahoo!ニュースの拡散力を活用できるということで、互いにメリットの大きい取り組みだと思います」(清水さん)

こうした広がりからは、スタートから1年を経た「Voice」が次のステップへ向かい始めていることを感じさせます。

Voice」の最大の強みは第三者視点であること

YouTubeなど個人が発信するツールには事欠かない時代ですが、「Voice」の最大の強みは、第三者視点が介在するメディアであることだと清水さんは語ります。

「内面にある思いをただ一人語りするのでは、多くの人々を共感させることはできないでしょう。例えば、この4月には、お笑いコンビ・さらば青春の光の森田さんが個人事務所経営の苦労を語る動画を配信しました。こういったテーマはとくに、自ら発信すると単なる愚痴として受け止められてしまう可能性もあります。第三者である取材者が、世間の代わりにその思いを聞きに行くスタイルだからこそ、より効果的に伝えられるんです。それこそがまさに『Voice』の強みだと思っています」(同)

また、スピード感を重視することで、動画であることの価値をさらに上げられると語るのは水本さんです。

「動画だからこそ、むしろ公開までのスピードを早められるということを、これまでの取材で実感しています。映像の編集点を最小限に抑えるなど、撮影時のノウハウも着実に蓄積されていますし、やり方次第でテキストコンテンツよりもスピーディーに、そして臨場感のある情報を届けられるのが動画の利点。この特性を生かしながら、世間が知りたいこと、当事者が伝えたいことを、よりタイムリーに発信するスタイルを確立したいですね」(水本さん)

9月は、自殺予防週間に向けた企画を実施。その企画には「もう一日生きてみようと思えるきっかけや、気持ちを切り替えるヒントになるような体験談を、著名人・専門家から預かり、今それを必要としている誰かへ、そして誰もがいつか必要となるかもしれない時のために届けたい」という思いが込められています。

専門家や当事者の生の声が、社会をどのように変えていくのか。「Voice」はこれからも、挑戦を続けています。

お問い合わせ先

このブログに関するお問い合わせについてはこちらへお願いいたします。