時事通信社

【コソボ】紛争から18年、復興に尽力――「世界遺産」「金メダル」ではずみ

11/8(水) 10:08 配信

コソボ共和国。日本ではいまだに1998~99年の内紛のイメージが根強いが、豊かな自然に恵まれ、紛争終結後には中世建造物群が世界遺産に指定され、インフラ整備も進むなど着実に復興の道を歩んでいるという。2008年に独立を宣言し、平均年齢は29.5歳。どのような国なのだろうか? コソボのレオン・マラゾーグ駐日大使は、茶道や正座、倫理観、価値観で「日本との共通点は多い」と語る。日本との関わりや、同国の今後の展望について聞いた。(時事通信社/Yahoo!ニュース 特集編集部)

平均年齢29歳、「明るい未来」信じる

――コソボの人々の特徴は?

コソボ人は打たれ強く、勤勉です。何百年も他国の支配下にありながら、こうした特徴を失わないでいられたことは奇跡と言っていいでしょう。コソボは欧州でも貧しい国の一つで、人口の平均年齢が最も若い(平均29.5歳)国です。独立によって(2008年に)国ができたばかりで、人々は明るい未来が待っていると信じています。もちろん簡単なことではありませんが…。

インタビューに答えるコソボのレオン・マラゾーグ駐日大使(撮影:時事通信社)

コソボは自然に恵まれており、週末は山へハイキングに行ったり、公園でピクニックを楽しんだりすることを好みます。休日の午後にはみんなでコーヒーを飲み、おしゃべりをします。

お酒に強い人も多いです。ワインの産地でもありますが、紛争前の品質に戻るにはまだ時間がかかるでしょう。しかし、少しずつ改良されており、海外への輸出ルートも得つつあります。ワインの他にも野菜やベリー類、キノコを輸出しています。私たちは、近隣のギリシャやイタリアの人と同じように人生を楽しんで生きています。

経済再建に集中、観光にも力

――日本人はコソボについて紛争のイメージを持っていると思います。

ほとんどの日本人が「紛争」を連想することは理解しています。メディアに積極的に情報発信したり、各国で観光客を誘致したり、こうした印象を変える努力をしていかなければなりません。

紛争終結(1999年)から18年がたち、破壊された村も復興しつつあり、経済的にも以前より余裕が出てきました。これまで経済の立て直しに集中してきましたが、これからは観光開発にも力を入れていきたいです。

ユネスコの世界遺産に指定された中世建造物群の一部(AFP=時事)

コソボには国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に指定された中世建造物群があります。他にもユネスコに申請したい場所がたくさんあります。(小さな)国のサイズの割には、非常に素晴らしい場所がたくさんあってコンパクトにまとまっているので、旅行者には魅力だと思います。

コソボを訪れるよう人々を説得するのは容易ではありませんが、マスコミを活用したり各国に派遣団を送ったりするなど、できるだけ多くの国とつながりたいと考えています。

目標は“国家承認の増加”

――国家承認および欧州連合(EU)加盟にはどのような展望を持っていますか?

コソボを承認している国は現在、日本をはじめ100 カ国以上になりました。今後も承認国を増やすとともに、EUや国連へ加盟できるよう、外交努力を続けていくことがわれわれの使命です。米国、英国、ドイツ、フランスが私たちの主な同盟国です。コソボをまだ国家承認していないスロバキアやギリシャとも非常に良い関係を築いています。

周辺国家との関係について語るマラゾーグ駐日大使(撮影:時事通信社)

一方で、国内に独立運動を抱えるスペインなどはコソボを承認していません。こうした国々の説得が課題です。困難は多いですが、わが国の外交政策は完璧にEUのコソボ和平政策に沿っています。国民の90%以上がEUおよび北大西洋条約機構(NATO)への加盟に賛成しています。

ここ最近では、シンガポールとバングラデシュがコソボを国家承認してくれたことを、とてもうれしく思っています。フィリピンやベトナム、モンゴルもこれに続いてくれることを願っています。

コソボ大使館の看板(撮影:時事通信社)

初出場のオリンピックで金メダル

――2014年には国際オリンピック委員会(IOC)に加盟を認められましたね。

何年も出場し続けて金メダルを取っていない国もある中、コソボは初めてオリンピックに出場した16年にケルメンディ選手が柔道女子で金メダルを獲得しました。長い間、理不尽にもいろいろな国際競技の場への出場を拒否されてきた私たちにとって、この金メダルは戦争からの復活と復興の偉大な象徴となりました。金メダルはコソボの人々に希望を与えたのです。

五輪で自国選手が金メダルを獲得したことを喜ぶマラゾーグ大使(撮影:時事通信社)

日本の国連次席大使は“コソボの英雄”

――コソボの人々は日本に対してどのようなイメージを持っていますか。

コソボの国民は日本が大好きです。お手本にすべき先進国であり、私たちを最初に国家承認してくれた国の一つでもあります。日本は1999年の紛争終結からわずか数カ月後に支援に駆け付け、冬の到来に備えて住居の断熱工事を行ってくれました。さらに国際協力機構(JICA)を通じ、国営放送やオペラハウスの設備工事のほか、環境保全とゴミ収集設備に関する多くの事業でも支援を展開しました。

大使館内に飾られた「絆」のポスター(撮影:時事通信社)

2016年、日本の岡村善文国連次席大使(当時)が国連安保理の場で、コソボのワインを卓上に出して「コソボは高品質のワインを生産できるまでに復興した。コソボへ行こう」と世界に向かって呼び掛けました。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では写真も広まり、コソボの人々は皆、大使に感謝しています。彼はコソボにとって英雄です。

コソボ産のワイン(撮影:時事通信社)

意外と多い日本との共通点

実は日本とコソボは、違いよりも共通点の方が多いです。コソボでは、昔は日本のように床に座って、ちゃぶ台のような低いテーブルで食事する生活でした。家族が集まってお茶を飲む、茶道のような文化があります。もちろん正座もできます。コソボ人も親孝行を大切にしており、倫理的な価値観は日本の武士道のそれと近いように感じます。年長者を敬う点でも日本人と共通していると思います。

また、紀元前4000年頃に作られたと思われる「ヒネーシャ・ネ・フロン」という名の土偶は、日本の「はにわ」に形がよく似ています。歴史を書き記した資料などは紛争で燃えてしまい、これが何のために作られたのかはよく分かっていませんが…。

大使館内に置かれたヒネーシャ・ネ・フロンのレプリカ(撮影:時事通信社)

日本の交通インフラに関心

――日本に来て驚いたことはありますか?

日本の技術力の高さは着任前から承知していたので 、それほど驚くことはありませんでした。しかし、効率の良い交通インフラや新幹線にはいまだに感心させられます。これら交通機関が日々、なんと正確に動いていることでしょう。コソボでは紛争の間にすべてが盗まれ、または壊され、私たちはゼロの状態からスタートしました。

日本について語るマラゾーグ大使(撮影:時事通信社)

その後、(日本を含む)各国の支援のおかげで最先端の機械を導入できました。それにしても、日本ではあらゆることがハイテクだろうと思っていたので、ファクスが使われていることにびっくりしました。日本の技術は最先端なのに、古い機械を大事に使っている事実が興味深いです。コソボの人々は支払いにクレジットカードよりも現金を好みますが、技術の進んだ日本でも同様に現金が主な決済手段になっています。

コソボとは:

バルカン半島中部に位置し、セルビア、モンテネグロ、アルバニア、マケドニアと国境を接する。人口約181万人6000人。14年のコソボ統計局の調査によると、平均年齢は29.5歳。

1389年、「コソボの戦い」でセルビアが敗れ、オスマン帝国の支配を受ける。1913年、セルビアが奪回し、第二次大戦後は旧ユーゴスラビア連邦セルビア共和国の自治州に。98年、アルバニア系住民の武装組織とユーゴのセルビア系治安部隊との戦闘が勃発。99年、NATO軍の空爆後にセルビア軍が撤退、国連の暫定統治下に置かれる。2008年2月、独立を宣言。日本を含む100カ国以上が承認している。

レオン・マラゾーグ氏 略歴:

1977年、プリシュティナ生まれ。ブルガリアのアメリカン大学、米インディアナ州のノートルダム大学で国際関係、ガバナンス、紛争解決を学ぶ。シンクタンク「開発のための民主主義」設立メンバーの一人。プリシュティナ大学をはじめ、コソボ、マケドニアの複数の大学で教壇に立った。日本食が好き。休日には古城や日本庭園を訪れる。2016年9月、駐日コソボ大使に就任。

コソボの料理:

ナスの中にひき肉などを詰めた「イマムバユルドゥ」(右下)などコソボ料理(時事通信社)

コソボの料理は、地理的に近いアルバニアやトルコの影響を大きく受けている。

写真右下は「イマムバユルドゥ」。トルコ語で「お坊さんの気絶」を意味し、お坊さんが気絶するくらいおいしいことから名付けられたトルコ系料理で、くり抜いたナスの中にひき肉やトマトなどの野菜を詰めてオーブンで焼いた。

写真左下は、塩味の付いた白いカッテージチーズで、サワークリームのようなさわやかな酸味がある「ディヤフ」と、パプリカやトマト、赤唐辛子などから作るオレンジ色のペーストである「アイバル」。パンに付けて食べるが、スティック野菜に付けて食べても美味。

写真上の「コフテ」は牛肉にタマネギやスパイスを加えて焼いた肉団子。

〔取材〕
時事通信社
記者:櫻田玲子
カメラマン:河野綾香

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