週刊エコノミスト編集部

「調理ロボ」は飲食店の人手不足を救うか 効率的でおいしい実力

2017/10/13(金) 10:10 配信

外食業界で「調理ロボット」が存在感を増している。高齢化や人手不足が深刻化する中で、作業の効率化は喫緊の課題。さらに2020年の東京五輪を控え、業界関係者からは「ボランティアに人手をとられてしまうのでは」と不安の声もあがる。古くて新しい日本の「調理ロボ」はこの危機を救うのか。活用の現場をたずねた。(週刊エコノミスト編集部/Yahoo!ニュース 特集編集部)

【100秒】動画でみる「調理ロボ」の実力

妻の腕を支えた炒飯ロボ

「炒飯ください」と告げると、店員が中華鍋に卵と白米を入れ、お玉で軽くかき混ぜはじめた。見慣れた風景だが、次に店員が手を伸ばしたのが「3本のツメ」がついたアーム(腕)だった。鍋が置かれた調理台のボタンが押されると、ツメが、鍋の動きに合わせて具をかき混ぜ始めた。

途中、塩こしょうなどを店員が入れていく。できたての炒飯は、火が良く通ってあつあつ、パラパラだ。

ツメを3本にすればコメが飛び散らずもっとも美味しくなると分かるまで試行錯誤が続いた(撮影:週刊エコノミスト編集部)

千葉県松戸市の「ラーメンショップ八柱店」が、三栄コーポレーションリミテッド(横浜市港北区)の炒飯ロボット「鉄腕炒レンジャー」を導入したのは2006年。店主の高栖寿一さん(72)、妻の裕子さん(73)、長男の一博さん(41)の家族で経営する。

客の多くが「半チャン・ラーメン」を頼む。「私が麺をゆで、炒飯は妻が作っています。中華鍋をあおり続けるのは大変で、11年前に機械の導入を決めました」(寿一さん)

炒レンジャーの動きはカウンターごしに良く見える(ラーメンショップ八柱店)(撮影:週刊エコノミスト編集部)

中華のプロの動きを分析

炒レンジャーを開発した同社は、外食店の厨房の設計・施工を得意とする板金工場として63年前に創業した。

25年前に販売開始した自動ゆで麺機「マルチ・ボイル」が人気商品となり、麺脱水機「ヌードルセッター」と合わせ、すでに5000台以上の納入実績があった。「個人経営の中華料理店には、高齢となり中華鍋を振るのが大変だからお店をたたむ、と悩んでいる経営者が多かった。そこで炒飯を作る機械を考えました」と同社の深澤及社長はいう。実際、中華鍋の重さは1.5キロ、具材が入ると2キロ近くなる。

「高齢で鍋を振るのが大変という方に使ってもらいたい」と三栄コーポレーションの深澤及社長(左)と岡山英一係長(撮影:週刊エコノミスト編集部)

炒飯ロボットの開発には、横浜中華街の有名店からプロの調理師も呼び寄せた。調理作業の様子を動画で撮影し、念入りに分析したところ「1秒に2.5回、楕円(だえん)運動で鍋をあおるのが最もおいしくできる」と気づいた。

しかし、鍋をあおるだけではダメだった。プロは、お玉を使ってチャーハンをかき混ぜていた。そこでお玉代わりに3本のツメの付いたアームを考案した。3本のツメを鍋の上に載せるように配置すると、「お米が飛び散らずパラパラにできあがる」と分かったという。

炒レンジャーは03年に完成した。1回の調理時間は3分。2~3人前の炒飯を作ることができる。1時間で最大60人前だ。「機械は炒めるところだけで、味付けはお店独自のものにできます。火力も調整できるので、野菜炒めに使っているお店もあります」と厨房事業部係長の岡山英一さん。

価格は123万円と安くないが、「いまは月2万4000円のリースを始めました。自動ゆで麺機とセットでも3万7800円。人手不足と高齢化に悩んでいるお店に販売していきたいですね」(同)という。

炒レンジャーでつくったあつあつパラパラの炒飯(ラーメンショップ八柱店で)(撮影:週刊エコノミスト編集部)」

これまでに250台を納入しており、海外向けでもシンガポール、米国、豪州など10カ国以上に納入している。香港ではミシュランの星を取った店が導入し、「炒飯にとどまらず、炒め物など、さまざまな中華料理を作っています」という。

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