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幸田大地

「税逃れ」より「匿名性」こそが問題だ――「パナマ文書」取材記者が語る

2016/05/28(土) 11:18 配信

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史上最大の調査報道──と言われる「パナマ文書」プロジェクト。日本時間4月4日未明、一報が公開されるや、世界各国はこの報道で覆われた。アイスランド、アルゼンチン、中国、ロシア、英国など国家のトップらの疑惑が報じられた国もある。

このパナマ文書の発信源となったのはICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)という非営利のジャーナリスト組織で、日本からは朝日新聞社と共同通信社が参加していた。世界を揺るがしたパナマ文書について、メディアの多くは「租税回避」を問題としてきたが、実際に文書をもとに取材をしてきた調査報道の記者は、日本における問題の本質を「匿名性」と指摘した──。

一報から1カ月あまり、朝日と共同の記者2人に語ってもらった。(構成・文=ジャーナリスト 森健/Yahoo!ニュース編集部)

スロースタートで盛り上がった「パナマ文書」

──パナマ文書は全世界で一斉に報道されました。日本での反響をどう感じましたか。

澤康臣氏(以下、澤):私のいる共同通信社は、新聞社と違って紙の媒体をもちません。地方紙など全国の加盟する新聞社に記事や写真を配信する通信社です。ですので、読者からの直接の反響はあまりわかりません。けれども、ネットでのバズり方を見ると、かなり関心が高まってきているなと思いました。

奥山俊宏氏(以下、奥山):ICIJがタックス・ヘイブン(租税回避地)の問題に取り組み始めたのが2011年頃で、私たちもICIJとともに2013年4月、2014年1月、11月とタックス・ヘイブンに関する記事を出してきました。ロシア副首相の妻や中国の習近平国家主席の義兄がタックス・ヘイブンの法人に関わっていたことを記事にし(オフショア・リークス)、日本国民の負担で破綻処理された日本債券信用銀行の後身、あおぞら銀行に米ファンドのサーベラスが投資した際にルクセンブルクなどの20の法人らを経由して資金が流れた構図が示されている文書を報じました(ルクセンブルク・リークス)。

ですが、これまでの報道は読者の関心はあまり盛り上がらず、毎回「こんなものか」とがっかりしてきました。ところが、今回、パナマ文書については、次第に盛り上がってきた。これはうれしかったです。

左:奥山俊宏・朝日新聞社編集委員、右:澤康臣・共同通信社特別報道室次長(撮影:幸田大地)

澤:潮目が変わったのは、4月5日、アイスランドのグンロイグソン首相がパナマ文書をきっかけに辞任を表明してからでしょう。前後して、中国の習近平主席の義兄もまたパナマ文書に載っていることが香港で報じられた。そのあたりを見て、日本でも関心が高まると思いました。日本では政治家のような公人の動きには強く反応する傾向があるからです。

奥山:今回はインターネット上で大きな関心をもたれているのがはっきりわかりました。そこにはタックス・ヘイブンや租税回避の問題に対する社会の認識の変化があるように思います。

パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した資料の数々。多くは会社設立の証明書や本人確認書類だ(提供:朝日新聞社)

世界には英領バージン諸島やケイマン諸島のように各種税率が著しく低く設定された国がある。租税回避地=タックス・ヘイブンと呼ばれる国や地域だ。国土が狭く、人口も少なく、産業も乏しい。そのため、手軽に設置できる法人の手数料などを収入とすることを産業の柱に据えてきた。そうしたタックス・ヘイブンの一つに中米の国家、パナマもある。今回世界の報道機関が取り上げた「パナマ文書」は、そんなパナマにある法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した大量の文書である。

パナマ文書は、1年余り前、南ドイツ新聞にコンタクトしてきた情報源がきっかけだった。「データに関心はありますか? 喜んでお渡ししますが」。そこからのやりとりで結果的には2.6テラバイトのデータが情報源からもたらされた。データには、電子メール、PDF、画像、Word、Excelなど1150万件、法人の数で21万4488の記録が収められていた。

南ドイツ新聞の記者は世界各国に関わる情報の広がり、複雑性から、もとより連携してきたICIJに相談。データを閲覧しやすいように構築し直すとともに、各国の調査報道に強い記者と連携することにした。日本では、ICIJの副事務局長から朝日の奥山氏のもとに連絡があったのが2016年1月23日だった。

東京、ニューヨーク、ローマを結んだ共同作業

──取材はどのように始まりましたか。

奥山:日本(JAPAN)国内の住所地に関連すると思われる人や法人をリストにしたExcelファイルがあり、まず、それを見ました。国会議員やその家族の名前で検索しました。2月18日にはICIJのデータベースにアクセスできるパスワードが送られてきて、画像やPDFなどのデータにアクセスできるようになりました。

なぜ政治家から始めたのかについてはいくつか理由があります。第一に報道の公益性が高い公人だからです。第二に、現職の議員は「国会議員資産公開法」で自らの資産を公開しなければならないので、調査がしやすい。公開された資産等報告書と一致していればパナマ文書の内容が裏付けられたと言えるし、一致していなければその差異を取材対象にもできる。ところが、始めてみると、政治家の名前は出てこなかった。

澤:共同通信の参加は2月下旬からでしたが、始めてみたときの感想は奥山さんと同じです。意外とないなという感じです。悪く言うと、パナマ文書の生データはゴミ屋敷のようなもので、あらゆるファイルがゴチャゴチャであまり整理されていなかった。OCR(文字読み出し技術)をかけて、画像ファイルもテキストで検索できるようにはなっているのですが、いかんせんとっ散らかっていた。

ただ、ICIJとの関わりは私にとって初めての体験でもあり、非常におもしろかった。

(撮影:幸田大地)

奥山:毎週定例会議がありました。そこで情報共有をしていきました。朝日と共同は会社の場所が近いので、最初は直接会ったりしましたけど......。

澤:基本的にはSkypeでの電話会議が主体でした。毎週月曜朝8時。ニューヨークとローマに日本語がわかるイタリア人の女性記者がそれぞれいて、僕ら2人と計4人で取材状況を報告しあう。通常、新聞業界は「抜きあう」世界なので情報共有はありえませんが、今回のICIJ内での情報はすべてオープンに共有されました。逆に抜け駆けもなしです。ただ、ICIJの全員と共有すると言っても、取材の中身の日本語での詳細なメモをすべて英語にするのも大変なので、彼女たちに(英語化を)お願いするところもありました。

奥山:朝日と共同も取材の「すみ分け」はやりませんでした。こういうところを取材しますとか、おおわくでの情報共有はありますが、そちらがどこを取材して、こちらがここを取材して、というような明確な分業ではなかった。

取材は地道な作業です。ICIJのパナマ文書のデータにアクセスして、各種ファイルをもとにそこに書かれた住所や名前に手紙を送ったり、電話をかけたり、直接出かけていったりする。どういう経緯でタックス・ヘイブンに会社をつくったり、関わったりすることになったのかを取材をする。なんと言うか、手間暇のかかる作業ですが、そういうことをやっていきました。

奥山俊宏・朝日新聞社編集委員(撮影:幸田大地)

奥山俊宏編集委員は1966年生まれ、東京大学工学部卒、1989年朝日新聞社入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部を経て、現在調査報道を行う特別報道部に所属。

澤康臣特別報道室次長は1966年生まれ、東京大学文学部卒、1990年共同通信社入社。水戸支局、浦和(現さいたま)支局ののち、社会部の司法担当、外信部、ニューヨーク支局を経て、現在は特別報道室に所属。

お互い同い年で、似た経歴。実際、東京大学新聞社に同時期にいたこともあり、学生時代から互いを知る関係だったという。ともにパナマ文書に関わるとわかったときにも、以前からの信頼関係が少なからず貢献したという。

澤康臣・共同通信社特別報道室次長(撮影:幸田大地)

隠すのは「儲け」よりも「損失」、そして「身元」

4月4日午前3時(日本時間)にパナマ文書が各国で報じられると、世界に衝撃が走った。

アイスランドではグンロイグソン首相が辞任。アルゼンチンでは汚職追放を掲げて昨年末に就任したばかりの大統領が捜査の対象として裁判所に認められた。大国も例外ではなく、ロシアではプーチン大統領の親友とされるチェロ奏者が莫大な資産を運用する会社をタックス・ヘイブンに保有していることが発覚、英国ではキャメロン首相の亡き父が匿名の投資ファンドを設立・運営していたと報じられた。中国では前述の通り、習近平主席の義兄ほか、枢要な職にある高官の親族がタックス・ヘイブン法人に関係していることもわかった(中国国内では報道規制が敷かれた)。国民のために尽くすべき国家のトップがタックス・ヘイブンに法人をもつ、すなわち、資産を海外で運用しているかのような振る舞いは多くの国を揺るがせた。

一方、日本では状況が異なっていた。政治家の名前があがってこなかったばかりか、企業に関する情報も、けっして多くなかったからだ。

朝日と共同のほか、NHKや新聞各紙、雑誌など複数のメディアが取材をしたが、結果的に言えば、報道内容はどれも似ていた。セコム、ソフトバンクBB、ライブドア、伊藤忠、丸紅など、有名企業の名もあがったが、悪質な租税回避のようなさらなる指摘は、どのメディアからも報じられなかった。メディアとしては拍子抜けという状況だった。

(撮影:幸田大地)

──各種報道からすると、パナマ文書のデータにあるのは会社設立関係が主で、銀行口座などお金の動きなどの文書まではないという印象ですが、いかがですか。

澤:そうですね。今回のパナマ文書のデータの源となったモサック・フォンセカというのは法律事務所で、お金を動かすような組織ではない。もっと言えば、日本で言うならモサック・フォンセカは司法書士事務所のようなもので、会社登記が主要な業務。だから、私がデータベースで見た資料も大半はその法人設立関連の書類でした。だから、お金をいくら、どう動かしたかといったやりとりに関しては、ほとんどない。それは告発資料がないと動かせないです。

奥山:今回のパナマ文書の暴露で重要なのは、タックス・ヘイブンにある法人にどんな会社や個人が関わっているかということの一端がわかったことでしょう。名前が出ているところには取材をかけることができましたし、4月上旬以降は、取材を受けた側も「パナマ文書に出ている」と言われれば答えざるをえない状況がありました。それは大きな意義があったとは思います。

法律事務所「モサック・フォンセカ」が入るパナマ市内のビル(写真:ロイター/アフロ)

澤:逆に言えば、報道が世界で開始される前の私たちだけの取材はけっして楽ではありませんでした。取材開始直後は「パナマ文書」という呼び名もなかったので、「あの、パナマにモサック・フォンセカという法律事務所がありまして」という説明から始めなければならなかった。

奥山:いま取材をしてきた実感で言うなら、今回のパナマ文書について、「租税回避」というテーマでくくるのには、ちょっと違和感があります。

私は90年代からいろんな経済事件を取材してきて、租税回避地を使っているケースも見てきましたが、その経験を踏まえて言えば、多くの日本企業がタックス・ヘイブンを使ってきたのは「租税回避」ではなく、「損失隠し」なんです。損失を租税回避地に隠して、利益が出ているように見せかける。いわゆる粉飾決算です。その分、払わなくていい税金を納める場合すらあったかもしれません。利益を租税回避地に移して納税を逃れるのとは真逆です。

たとえば2011年に発覚したオリンパス事件。同社はバブル崩壊後に数百億円の損失を出して、それを抱え続けていましたが、その損失をケイマン諸島のファンドに飛ばしていた。これは一例ですが、日本企業に関して言うと、タックス・ヘイブンの利用は租税回避というより損失隠しのほうが私は見慣れていて、それを可能にしていたのがタックス・ヘイブン法人の「匿名性」の高さだったと思います。

(撮影:幸田大地)

澤:私もまったく同じ意見です。今回のパナマ文書が明らかにしたことは「匿名性」の問題だと考えています。今回の報道で、ある日本の会社を巡って資産のことが取り上げられていました。しかし、取材した実感で言えば、その資産への税もさることながら、どちらかと言うと、その会社の株主の議決権をどうするかという問題だったように思います。

つまり、租税回避や損失隠しだけでもないのです。たとえば、タックス・ヘイブンの地域で法人を立ち上げると、法人登記の詳細は明らかにされません。役員、株主といった身元が隠される。誰が株主で、誰が役員かもわからない会社だけど、その会社は実態ある子会社も持て、不動産も買うことができる。そういう身元が明らかにならない会社だから、ひょっとすると犯罪行為に関わっているかもしれないし、違法に稼いだお金をやはり匿名性の高い手法で運用しているかもしれない。

奥山:そうですね。もちろん、違法な税金逃れをしているだろうと思われる会社もありました。

(撮影:幸田大地)

「サクラばかりの出会い系サイト」や、住所が存在しない会社

奥山:もう少し突っ込んで言うと、今回の取材では、いかがわしそうな会社が複数ありました。

澤:そうですね。ありました。

奥山:出会い系サイト、ちょっとあやしげな商品の通信販売の業者、そして暴力団のフロント企業とみられる会社......。タックス・ヘイブンを隠れ蓑にしているのではないかと思われるケースが目につきました。

そうしたグレーな会社の一つに直接取材に行ったところ、こちらが追及しているわけではないのに、「租税回避目的じゃないんだから、問題ないだろ」と主張されました。

澤:出会い系サイトは、実態で言えば「"サクラ"ばかりで運用し悪質」と評価サイトから指摘されているところだったりしましたね。取材に行っても、偽の住所で辿りつけないというケースも複数ありました。

奥山:株主として出ている人の住所は繁華街のど真ん中のようなのですが、調べてみるとその住所そのものが存在していなかったり、本人確認の書類を見てみると、目つきの鋭い長髪のお兄さんだったり......。だから問題だと言いたいわけではまったくありませんが、あやしげな法人は複数ありました。

もう一つ、日本関係のデータで多かったのは中国関連です。中国での納税や法規制を逃れるためなのか、中国の取引先や中国のビジネスパートナーの要望なのか、中国と関連するところが多かった。

パナマ文書に登場する日本関連の人や法人を大別すると、その二つ──いかがわかったり、あやしかったりする業者、それと、中国関連の企業が多かったとは言えます。

中国にはモサック・フォンセカの事務所は8カ所もありましたが、日本には拠点がありませんでした。実際、日本人あるいは日本企業がタックス・ヘイブンで会社をつくろうと思えば、日本の法律事務所に頼むのがふつうです。そして、日本の法律事務所は提携する北米の法律事務所と連携して、英領ケイマン諸島につくる。だから、パナマ文書で日本人、日本企業が少なかったのは当然とも言えます。

この地図にあげた国・地域に限らず、タックス・ヘイブンは世界各地に点在する。たとえば米国内にも法人税率がゼロまたは著しく低い州がある

「観客民主主義」から「参加民主主義」へ

今回のパナマ文書に登場する法人の株主など関係者の数を地域別に調べると、中国は約2万5000、香港は約1万3000と特に多かった。一方、米国は3600余、日本は約400だった。経済規模から言えば、米国は中国より大きく、日本も数年前まで中国より大きかったのに、パナマ文書においては、中国に比して米国や日本の存在感が極端に小さいと奥山氏も言う(それをもってロシアのように陰謀論を唱える向きも存在する)。

実際、日本はタックス・ヘイブンへの投資は小さいわけではない。国際決済銀行(BIS)の資料によれば、タックス・ヘイブン(オフショア市場)に日本の金融機関が投融資している資金残高は102兆円(8537億ドル。2015年末)で、もっとも投資額が多い英領ケイマン諸島への金融投資の残高は63兆円(5220億ドル。2015年末)とされる。莫大な額だ。

今回のパナマ文書には21万余のタックス・ヘイブン法人があったが、ケイマン諸島の法人はなかった。

21万件余の半数以上を英領バージン諸島が占め、パナマを合わせると約7割

そう考えると、日本関連の法人や個人が少なかったのは、単に、モサック・フォンセカがそういう事務所だったからに過ぎないと言える。もしケイマン諸島など、日本とつながりの深いタックス・ヘイブンの内部文書が出てきたときには、もっと多くのことがわかるだろう。

澤:取材を進め、ICIJの人たちと情報共有をする中で、日本と各国の違いを感じることもありました。たとえば、米国だと、司法省の公開情報で過去の犯罪者の情報がわかることもあり、裁判記録も基本は完全公開でアクセスしやすいのですが、日本はそうした情報はほとんどネットではアクセスできない。裁判の公開はなされていますが、記録はごくわずかしか公開されない。民主主義的な運用かどうかで見ると、日本は改善すべきところがまだ多いと感じました。

(撮影:幸田大地)

奥山:今回は「パナマ文書」というキーワードが立って注目されたことで、日本でも世界でもタックス・ヘイブンに関して理解が広がったように思います。ただし、欧州では格差拡大という社会問題と結びついて理解されているのに対して、日本ではまだそこまでいってないように思います。

澤:私は「観客民主主義」と呼ぶのですが、社会を見るときに自分を外に置いて「善玉/悪玉」のような分け方をして観客として見る人が多いのではないかと思います。本当は、社会は見るだけではなく、自分たちで議論し、参加し、変えていく「参加民主主義」であるべきです。この租税回避地の問題も、その自覚をもって見られるかどうかだと思うんです。身近で切実な問題で言えば、保育園問題や大学生の奨学金問題。これらだって十分に税金が足りていれば解決される問題かもしれない。パナマ文書はそうした地続きの問題なんですけどね。

(撮影:幸田大地)

奥山:あえて申し上げますと、私は、この租税回避をしようとする企業や人について、「けしからん」と言うつもりはないんです。企業の役員なら、株主に還元できる利益を最大化するために一つの合理的な方法として租税回避を考えるかもしれないし、それは株主の期待に応える正当な行動と言えるかもしれない。けれども、社会の総体として考えると、そうした行動が横行することで国家の財政は確実にやせ細ってしまう。

所得税などの直接税が累進的に適切に課されれば、消費税などの間接税を増やさなくて済むかもしれない。ところが、直接税が大規模に回避されれば、その回避された分を間接税でまかなわざるを得ない。間接税は相対的には所得の低い人により大きな負担を強いる。だから、租税回避を放っておくと、格差はそのぶん余計に拡大してしまう。

オバマ大統領がこの問題に触れて「金持ちと大企業だけが利用できる税の抜け穴がある。中流家庭はそれを使えず、そのぶんの負担を強いられている」「その多くは適法だが、しかし、それこそが問題だ」と言いましたが、まさにその通りだと思います。

澤:同感です。私たち調査報道という職務の記者から言えば、それを意見として発言するより、一つ一つのファクトとして取材していくのが仕事だと思うんですね。だから、今後も地道にやるしかないのかなと。

奥山:今後期待したいのは、こうした内部告発や情報提供がもっと多くなされることです。ICIJはこれまで、タックス・ヘイブンに関して記事を何度も出してきた、そうすると、それらに呼応するように、また新たな情報提供がありました。そうした連鎖が今後も続くと期待したいです。


森健(もり・けん)

1968年東京都生まれ。ジャーナリスト。2012年、『「つなみ」の子どもたち』で大宅壮一ノンフィクション賞、2015年『小倉昌男 祈りと経営』で小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『反動世代』、『ビッグデータ社会の希望と憂鬱』、『勤めないという生き方』、『グーグル・アマゾン化する社会』、『人体改造の世紀』など。
公式サイト

[写真]
撮影:幸田大地
写真監修:リマインダーズ・プロジェクト
後藤勝