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世界初の女性大統領を生んだ「火と氷の国」、アイスランドの実情

9/29(土) 7:55 配信

人口30万強の小国ながら、2018年サッカー・ワールドカップ(W杯)で初の本大会出場を果たしたアイスランド。北大西洋にぽつんと浮かぶ「絶海の孤島」は、130以上あるとされる火山と欧州最大級の氷河を併せ持つ「火と氷の国」として知られる。豊富な地熱と水資源でエネルギーを賄い、低炭素社会の実現に向けて世界に先駆けるほか、世界経済フォーラムの男女平等度ランキングで9年連続1位になるなど男女格差の是正で世界をリード。そんなアイスランドの実情や日本との関係を、今年1月まで駐日大使を務めたハンネス・ヘイミソン氏に聞いた。(時事通信社/Yahoo!ニュース 特集編集部)

【65秒でわかるアイスランド】

火力発電所が存在しない国

――アイスランドと言えば、日本と似た「火山の国」というイメージがあります。2010年の噴火では、火山灰の影響で欧州ほぼ全域で航空便が大混乱に陥りました。

確かにアイスランドでは5年に1度のペースで、火山の噴火が起きています。その一方で、火山の熱エネルギーを約80年にわたって住宅用の暖房に活用してきた歴史があります。地熱を利用して熱水をつくり、それを都市に送る仕組みです。今やアイスランドの暖房設備は90%以上が地熱利用です。それ以外も電力は、地熱と水力発電でカバーしており、石油や石炭といった化石燃料を使った発電所はありません。

アイスランド南東部のバルダルブンガ火山から噴出する溶岩と煙(2014年9月、AFP時事)

電力を得るだけではなく、地熱は生活の質の向上にも役立っています。どんな小さな町にも地熱を利用した温水プールがあり、泳いだ後はジャグジーバスでゆっくりできます。プールは、友人や知人、誰かしらに会える社交の場にもなっています。

――地熱利用で世界をリードしているわけですね。

アイスランドには、地熱ビジネスにつながる掘削技術や地質学など多くのノウハウがあります。インドネシアやフィリピンなど、地熱利用を推進しようとしている国の学生を、国連の地熱訓練プログラムに基づき、1979年から受け入れています。インドネシアではアイスランド企業が地熱発電事業に携わっています。

アイスランド随一の温泉地・レイキャネス半島にある、スバルスエインギ地熱発電所 。この発電所から出る温水は近くの温泉施設「ブルーラグーン」に供給されている。(EPA時事)

なお、地熱ビジネスに関しては、タービンなど地上設備は日本勢が非常に強いんです。アイスランド最初の地熱発電所のタービンは三菱重工業製でした。

日本の温泉資源には改善の余地あり

――アイスランドの温泉には、世界から観光客が集まると聞きます。

日本は、温泉資源をもっと観光に生かせると思います。潜在的な観光需要は大きい。田舎の五つ星温泉宿でもっと時間を過ごしたいと考える、裕福な外国人観光客を増やすことができるはずです。こうした面で、わが国には日本を支援できるノウハウがあります。

アイスランド南西部レイキャネス半島にある温泉施設「ブルーラグーン」で入浴する人々。雄大な景色を眺めながら浸かる青い湯には美肌効果があるといわれており、同国屈指の観光スポットとなっている(AFP時事)

日本の温泉旅館を旅した経験がありますが、施設の老朽化を感じました。裕福な外国人需要を見越して、新たなホテルを供給する必要があるでしょう。日本には新幹線もあり、旅行そのものはしやすい。おいしい食、偉大な伝統、おもてなしの心もあります。田舎にぜひ投資してください!

世界初の女性大統領が誕生

――世界経済フォーラムの男女平等度ランキングで、アイスランドは2009年から9年連続1位です。

一夜にしてそうなったわけではありません。時間がかかりました。わたしが15歳だった1975年、不平等な扱いをアピールするため、女性たちがストを行ったことを今でも覚えています。

私の母を含め、女性たちはみな仕事に行かず、家事もしませんでした。男たちは今晩の夕飯はどうしようとか、洗濯物はどこだとか、うろうろしたものです。

そんな時期を経て、80年には世界で初めて国民の選挙で選ばれた女性大統領(ヴィグディス・フィンボガドゥティル)が誕生しました。

96年に来日したフィンボガドティル・アイスランド大統領(左)と会談する橋本龍太郎首相(時事)

――日本の男女平等度ランキングは114位。安倍政権が女性の社会進出を促してはいるのですが。

こうしたことは、上から変えるのではなく、草の根から変えていくものです。なぜ若い女性は大学で学位を取りにくいのか、どうして女性は企業でより高く、重要な地位に就くのが難しいのか。社会で議論を増やしていくことが非常に重要でしょう。

また、アイスランドでは人口が少ないため、女性の労働力への需要が伝統的に職場などで大きい面もあります。また、経済的には発展したかもしれませんが、アイスランドは依然、農村・漁村社会のメンタリティを残しています。農村などでは、家の切り盛りで女性の役割は非常に重要でした。かくしてアイスランドの女性は強いのです。

今年7月にブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席したアイスランドのカトリン・ヤコブスドッティル首相。女性首相の就任は2009~13年のヨハンナ・シグルザルドッティル首相以来、同国史上2人目(EPA時事)

日本のシシャモ、大半はアイスランド産

――日本の食卓を飾るシシャモの多くはアイスランド産のカラフトシシャモだと知って驚きました。

第2次世界大戦後、アイスランドは日本から漁網や釣針など、漁業関係の用具を輸入し始めました。70年代ごろからは、日本車が輸入されるようになりました。こうした製品の品質で、日本は高い評価を得ています。

日本のスーパーの生鮮食品売り場に置かれるアイスランド産のシシャモ(時事)

アイスランドからは、日本にカラフトシシャモやサケなど水産物を輸出しています。日本へのシシャモ輸出は、われわれにとっては非常に重要です。日本人だけがシシャモをたくさん食べるので、われわれにとっては大変重要な顧客なのです。

私も実は、東京に赴任するまではシシャモを食べたことがありませんでした。

――そんなシシャモのお味は?

大好きです!

アイスランド国旗とインタビューに答えるハンネス・ヘイミソン前駐日大使(時事)

ハンネス・ヘイミソン氏 略歴:
1960年、レイキャビク生まれ。アイスランドの新聞社で3年間記者として働いた後、86年に外務省入省。駐ニューヨーク総領事、駐フィンランド大使、外務省貿易・経済局付大使などを歴任。2013年9月、駐日大使に就任し、18年1月まで務めた。現在はアイスランド外務省儀典長。趣味はハイキングや切手収集、写真撮影。カメラは10代の頃から一貫してニコンを愛用している。

アイスランドとは:
北極圏に近い大西洋上に浮かぶ島国で、面積は北海道よりやや大きい。人口は約34万人。北米とユーラシア大陸のプレートの境目に位置し、火山活動が活発。9世紀より、当時北欧に勢力を広げていたバイキングが主にノルウェーから移住した。長くノルウェーやデンマークの支配下にあったが、1944年に完全に独立した。主な産業は漁業や観光業、豊富な水資源と電力を活用したアルミ産業など。首都レイキャビクは、米ロ首脳が86年に核兵器削減で一致し「冷戦の終わりの始まり」となった「レイキャビク合意」が生まれた場所でもある。今年ロシアで開催されたサッカーワールドカップでは、初の本大会出場を果たした。

レイキャビクで会談するレーガン米大統領(右)とゴルバチョフ・ソ連書記長(AFP時事)

サッカーW杯ロシア大会のグループリーグ、アルゼンチン戦を前に盛り上がるアイスランドサポーター(AFP時事)

アイスランドの料理

漁業と農業が長らく主要産業だったアイスランドでは、新鮮な素材を生かした料理が多い。ヨーグルトに似たソフトチーズの「スキール」は健康食品として知られ、ラム肉も柔らかで繊細と評価が高い。特色ある食材の中でも一度は試したいのが、アークティックチャー(ホッキョクイワナ)だ。身はサケに似たピンク色で、くせがなく上品な味わい。薫製にしたものを、ライ麦で作られたフラットブレッド(無発酵パン)に乗せて食べるのが、「伝統的な農家の食事」(ヘイミソン氏)という。

フラットブレッドに降海型のイワナ、「アークティックチャー」の燻製をのせたアイスランドの特産品(時事)


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